AN現代針灸治療

ANとは「にただあつし(似田敦)」のイニシャルです。現代医学的知見に基づいた私流の針灸治療の方法を解説しています。

特効穴の効き具合の印象(2)-下上半身

2011-05-09 | 経穴の意味

01 △梁丘:胃痙攣、腹痛→動物実験で、大腿神経を刺激すると、胃腸の蠕動運動に影響を与えることができた。なお胃は痙攣痛を起こすことはなく、現代では胆石痛のことだとされる。 
02 △足三里:自然治癒力を高める、食欲不振→動物実験で、深腓骨神経を刺激すると、胃腸の蠕動運動に影響を与えることができた。自然治癒力を高めるとの印象はない。 
03 △裏内庭の施灸:食あたり→私は牡蠣による食中毒となったことがある。裏内庭に灸するも、二壮目から熱く感じた。三壮やったが腹痛変わらず。しかし雑誌(鍼灸OSAKA)の自験例では、確かに効果あったことが報告されている。 


04 ◯三陰交:生殖器疾患→①三陰交がS2デルマトーム上にあることで八髎穴と同様の用途があるが、患者自身で灸できる部位である。
②子宮頸部平滑筋の緊張を緩める。ただし最近の研究では、針による月経痛鎮静 作用は、子宮収縮程度を弱めるのではなく、関連痛の鎮痛によるものだとしている。すなわち脊髄神経の興奮緩和が針の治効理由である。
③三陰交の皮神経支配は伏在神経(知覚性)である。伏在神経は大腿神経の枝で、大腿神経は腰神経叢(L1~L3)からの枝である。腰神経叢からは腸骨下腹神 経や腸骨鼡径神経が出て、鼡径部や下腹部を知覚支配しているので、これらの痛みにも有効なことが予想できる。
④妊娠初期に三陰交刺激は禁忌となっている。これは、子宮頸部を緩めることで、堕胎につながるのではないだろうか。 
05 △至陰:逆子→施灸すると数時間、子宮体部の緊張が緩む。この間に自然に逆子矯正できる余地が生まれる。このチャンスを生かせないと効かない。 

 

06 △裏内庭:食あたり→直腸~下部大腸あたりの平滑筋の緊張を緩める効果。八髎穴と同様の効果だが、患者自身でできる部位である。
07 ×照海・復溜:足冷→足冷者の、冷えている足部へ刺針施灸しても効果がない。健常 者であれば軸索反射が起こり血流改善にもなるが、その機構が働かないのが、そもそも の足冷の原因である。 
08 ×築賓:下毒→下毒穴として、沢田流では肩髃や築賓が知られているも実効は乏しい。
09 ×地機:糖尿病→地機に針灸するだけで糖尿病が改善できれば、誰も苦労しない。 
10 △血海:不妊症、生理痛、子宮内膜炎→大腿神経刺激なので、結局は腰神経叢刺激になる。治療効果としては仙骨神経叢刺激である三陰交の方が勝る。


11 ◯委中刺絡:腰痛→膝窩静脈の血流改善により、二次的に腰椎周囲の血流を改善する。
12 ×光明:眼精疲労→下肢にある光明穴が、なぜ目に効くのかは、名前からの連想であろう。
13 ◯足臨泣・太衝:頭痛→上衝タイプ(のぼせて赤ら顔)の非拍動性の強い頭痛には、太衝や足臨泣などの足指間穴への置針(実際には足指間の最大圧痛部を刺激)は効果がある。弱い頭痛では効果がない。 
14 △条口:五十肩→条口から承山方向への深刺。肩甲骨内旋筋の筋緊張を緩めることで、肩甲骨上方回旋の可動性を改善するのであって、肩甲上腕関節の可動域制限には、あまり効果ない。