夕暮れのフクロウ

―――すべての理論は灰色で、生命は緑なす樹。ヘーゲル概念論の研究のために―――(赤尾秀一の研究ブログ)

12歳ボウイの民主主義

2008年05月01日 | 国家論

先の衆議院山口第二区補欠選挙で民主党推薦の候補が二万票の大差で勝利を収めた。この勝利は日本政治の改革の端緒となりうるものとして評価し得るものであることは先に述べた。それを実行できるかどうかは国民の力量次第である。この選挙の勝利の要因は、一つはガソリン税の暫定税率の問題と一つは選挙の直近でにわかに焦点として浮上した後期高齢者医療制度の問題が民主党候補に有利に働いたからである。とくに、後者の問題で、ほんらいは保守党の支持基盤である老年者が民主党支持に回ったことが大きいと思われる。

予想された通り4月末のガソリン税の暫定税率復活を含む改正租税特別措置法は衆議院で自民・公明の多数によって再可決されたけれども、それにしても、その際に民主党は本会議に欠席し、そればかりか、衆議院河野議長を議長応接室に閉じこめようとした。いかにも大人げないことをやる。なぜ小沢民主党は出席して反対の意思表明を議場で行わないのか。

いくら自分たちの意見に反するから反対だといって、それを議長の入場阻止という実力行使で阻もうというのは、いくら何でも子供っぽい。国会議員という「選良」ですらそんなことだから、子供から右翼左翼の暴力集団に至る大人まで、自分たちの異なる意見を暴力で阻止しようという傾向が日本国民からなくならないのだ。

これでは占領後の日本で、「日本の民主主義は12歳の少年のそれだ」とマッカーサーに言われた時代から、ほとんど進歩がみられないのである。こんなことをやっている政治家は国民に民主主義を指導し教育する資格もない。いくら科学や経済で一流と言われようが、政治文化や精神文化がこんなに三流四流の子供の文化では、前者の没落も眼に見えている。

道路特定財源の問題にしても後期高齢者医療保険の問題にせよいずれも、それらはかっての高度経済成長期においてはまだ潜在的であった矛盾が、経済の成熟化、日本の政治経済制度の老朽化によって矛盾が顕在化し深刻化してきたものである。国民の階級各階層間での矛盾が深刻化しているためである。

この矛盾を正しく解決しうることは、そうした国内矛盾を弁証法的に解決できる能力をもった政治家にしかできない。小手先で解決できる段階ではないのである。明治維新に匹敵する国家の改造が行われなければ解決しない。そのためには、現在の官僚政治を根本から改造し、地方の人材育成を図って地方行政の質を高め、道州制を制定して税金の合理的な配分のシステムを構築してゆかなければならない。

それによって、これまで長年の間地方でガソリン税を飯の種にして道路を造ってきた土木建築業者たちに時代の変化を理解させ、それの代わる産業として、とくに海外との競争に応じられる新規農業やバイオ関連産業などを開発し、また半導体・環境その他の最先端技術工場を地方に導入して行くことなどによって産業と雇用の機会をつくって、それらの業者たちを新しい産業分野に移行させてゆく措置を政治家は執らなければならないのである。いつまで愚行を繰り返すつもりか。そのうちに小松左京ではないけれども、日本は沈没することになるだろう。

 

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