ヘーゲル『哲学入門』中級 第一篇 序論 第六節[精神の働きと意識の対象]
§6
Das Bewusstsein ist überhaupt das Wissen von einem Gegenstande, es sei ein äußerer oder innerer, ohne Rücksicht darauf, ob er sich ohne Zutun des Geistes ihm darbiete,(※1) oder ob er durch diesen hervorgebracht sei. (※2)Nach seinen Tätigkeiten wird der Geist betrachtet, (※3)insofern die Bestimmungen seines Bewusstseins ihm selbst zugeschrieben werden.(※4)
第六節[精神の働きと意識の対象]
意識とは一般に、それが外的であれ内的であれ、対象についての知識である。その対象が精神のはたらきなくして意識に与えられたものであるのか、あるいは、精神のはたらきによって意識にもたらされたものであるか、どうかにはかかわらない。精神は精神の活動を通して考察される。精神は、その意識の諸規定が精神自体に起因するかぎり、その活動性の面から考察される。
※1
「意識の対象が精神のはたらきなくして意識に与えられたもの」
── 「精神の現象学」における「A 観察する理性」の対象となるもの。原子から生命体などに至る自然科学の対象。
※2
「精神のはたらきによって意識にもたらされたもの」
── 真、善、美など人文科学の対象となるもの。宗教や芸術、哲学そのものなど、精神の働きによって意識にもたらされる対象。
※3
精神とは意識であり、かつ思考そのものである。精神自体も精神の活動によって、つまり思考によって考察される。
※4
「精神の現象学」は「感覚」から「知覚」、さらに「悟性」へと意識の働きを動的に考察している。