G.W.F. Hegel
Philosophische Propädeutik
Zweiter Kursus. Mittelklasse. Phänomenologie des Geistes und Logik.
第二課程 中級 精神の現象論と論理学
Zweite Abteilung. Logik.
第二篇 論理学
Einleitung.
序論
ヘーゲル『哲学入門』第二篇 論理学 第一節 [論理学と自然論理]
§1
Die Wissenschaft der Logik hat das Denken und den Umfang seiner Bestimmungen(※1) zum Gegenstande. Natürliche Logik (※2)heißt man den natürlichen Verstand, den der Mensch überhaupt von Natur hat und den unmittelbaren Gebrauch, den er davon macht. Die Wissenschaft der Logik aber ist das Wissen von dem Denken in seiner Wahrheit(※3)
第一節[論理学と自然論理]
論理学は、思考とその規定の範囲を対象とする。それに対し、自然論理とは人間が本来的にもっている自然な判断力であって、その判断力を直接に使用することである。しかし、科学としての論理学とは、思考そのものの真理についての知識である。
Erläuterung.
説明。
Die Logik betrachtet das Gebiet des Gedankens überhaupt. Das Denken ist seine eigene Sphäre. Es ist ein Ganzes für sich.(※4) Der Inhalt der Logik sind die eigentümlichen Bestimmungen des Denkens selbst, die gar keinen anderen Grund als das Denken haben. Das ihm Heteronomische (※5)ist ein durch die Vorstellung überhaupt Gegebenes.
論理学は、思考の領域全体を考察する。思考は論理学に固有の領域である。論理学はそれ自体において一つの全体である。論理学の内容とは思考そのものに固有の諸規定であり、それは思考の他にまったく根拠をもたない。思考にとって「異質なものもの」とは、表象一般を通して 与えられるもの である。
Die Logik ist also eine große Wissenschaft. Es muss allerdings zwischen dem reinen Gedanken(※6) und der Realität unterschieden werden; aber Realität, insofern darunter die wahrhafte Wirklichkeit verstanden wird, hat auch der Gedanke. Insofern aber damit nur das sinnliche, äußerliche Dasein gemeint ist, hat er sogar eine viel höhere Realität.(※7)
論理学はそれゆえに偉大な科学である。 しかし、純粋な思考と現実性とは区別されなければならない。ただ、現実ということで真の現実性を意味するのであれば、思考もまた現実性をもっている。しかし、現実性ということで、たんに感覚的な外的な存在のことのみが考えられているなら、思考はさらにより高い現実性をもつ。
Das Denken hat also einen Inhalt und zwar sich selbst auf autonomische Weise. (※8)Durch das Studium der Logik lernt man auch richtiger denken, denn indem wir das Denken des Denkens denken, verschafft sich der Geist damit seine Kraft. Man lernt die Natur des Denkens kennen, wodurch man ausspüren kann, wenn das Denken sich will zum Irrtum verführen lassen. Man muss sich Rechenschaft von seinem Tun zu geben wissen. Dadurch erlangt man Festigkeit, sich nicht von Andern irre machen zu lassen.
したがって、思考には内容があり、それ自体が 自律的な 存在である。論理学の研究を通して、人はより正しく思考することを学ぶ。というのも、私たちは「思考の思考」を考えることによって、精神はその力を得るからである。思考の本質を知ることで、思考が間違いに陥りそうになるとき察知できるようになる。人は自分の行動をどう説明するかを知らなければならない。そうすることで、他人に惑わされない力を得ることができる。
※1
「Bestimmung」とは、ある対象がその対象そのものとして存在するための性質や特性を定義する要素をさす。思考の「規定(Bestimmung)」とは、具体的には、「有」「無」「成」から「本質」「現象」「現実性」などから「精神」に至る概念のことで、それらの範囲は、すでに論理学の体系として示されている。
※2
「自然論理」とは、特に学問的、科学的な訓練を受けていない状態での、人間が生まれついてもっている論理的思考の能力、直感的な思考のことである。
※3
真理(Wahrheit)とは単なる事実の集合ではなく、弁証法的な過程の中で生成され認識されるものであり、対立する要素の統合を通じて成立する全体性と体系を意味している。
たとえば「成」 (Werden)は「有」(Sein) と「無」(Nichts) の真理であるとされる。
(ヘーゲルの「真理」概念)
※4
思考はそれ自体が一つの「領域」であり、「全体」である。思考は他の何かに依存するものではなく、それ自体で存在し、自己完結的なものである。
※5
表象によって与えられるものは「異質なもの(Heteronomische)」である。
表象とは、私たちが何かを頭の中で思い描いたり、心に浮かぶイメージのようなもので、これは経験や感覚に由来するものである。そうした外的な要因や表象(イメージや想像)によって思考に与えられる要素は、哲学的な思考の自律的で純粋な活動とはちがったものだから、他律的で「異質なもの」(Heteronomische)である。
※6
「Gedanke」は「思考」という意味で、個人の論理的な推論や思索のプロセスであるが、「reinen Gedanken」は、そうした個別の具体的な現象や外界の影響を受けない、純粋に論理的な思考のことである。
※7
「より高次な現実性」
ふつうに現実性という場合、眼に見える形や物体など、たんに感覚的で外的な物質的な性質をさす場合が多い
が、そうした物質や外的な存在よりも、それらの背後に存在する法則性や概念を「より高次な現実性」として捉える。
※8
「哲学における自律的な思考」とは、表象(イメージや想像)など、外部から与えられたものではなく、思考それ自体の論理によって自らを生成するものだから「自律的な」ものである。
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