§11
Allein der Mensch kann als denkender auf seine Triebe, die an sich für ihn Notwendigkeit haben, reflektieren(※1). Reflexion heißt überhaupt Abkürzung vom Unmittelbaren. Die Reflexion des Lichts besteht darin, dass seine Strahlen, die für sich in gerader Linie sich fortpflanzen würden, von dieser Richtung abgelenkt werden. — Der Geist hat Reflexion. Er ist nicht an das Unmittelbare gebunden, sondern vermag darüber zu etwas Anderem hinauszugehen; z. B. von einer Begebenheit zur Vorstellung ihrer Folge oder einer ähnlichen Begebenheit oder auch ihrer Ursache. Indem der Geist auf etwas Unmittelbares hinausgeht, hat er dasselbe von sich entfernt.
§11〔反省について1(相対的な反省)〕
思考する者として人間のみが、人間にとって本来的に必然的なものとしてもっているところの衝動を/反省する/ことができる。反省とは一般的に直接的なものを省略することをいう。光の反射とは、 自ずから直線で伝えられる光線が、その方向を屈折することである。⎯ 精神は反省(Die Reflexion)をもつ。精神は直接的なものに縛られない。むしろ、直接的なものを超えて何か他の或るものに向かってゆくことができる。例えば、ある出来事からその結果を思い浮かべたり、あるいはそれと似たような出来事を考えたり、あるいはまたその原因を考えたりするなど。精神が直接的な或るものを超えてゆくかぎり、精神はその直接的なものを自己から切り離してもつ。
Er hat sich in sich reflektiert. Er *ist in sich gegangen.*(※2) Er hat das Unmittelbare, insofern er ihm ein Anderes entgegensetzt, als ein Beschränktes erkannt. Es ist daher ein sehr großer Unterschied, ob man etwas bloß *ist* oder *hat,* oder ob man auch *weiß,* dass man dies ist oder hat; z. B. Unwissenheit oder Rohheit der Gesinnungen oder des Betragens, sind Beschränkungen, die man haben kann, ohne zu wissen, dass man sie hat. Insofern man darauf reflektiert oder von ihnen weiß, muss man von ihrem Gegenteil wissen. Die Reflexion auf sie ist schon ein erster Schritt über sie hinaus.
精神は自己の中に自己を反映する。精神は/自己の内を進んでゆく/。精神は、直接的なものに一つの他者を対立させるかぎりにおいて、その直接的なものを一つの限界のあるものとして知る。したがって、人がただ或るもので/ある/にすぎないのか、あるいは或るものを/もっている/のか、ということと、あるいはまた、人が或るものであり、あるいは、或るものをもっていることを/知っている/ということの間には非常に大きな違いがある。たとえば、感受性や行為における無知や粗野は、もし人がそれらをもっていることを知らないのであれば、それはその人のもつ限界である。人がそのことを反省するか、あるいはそのことを知っているかぎりは、人はそれらの反対についても知っているに違いない。限界について反省することは、すでに、その限界を乗り越える第一歩である。
Die Triebe als natürliche Bestimmungen sind Beschränkungen(※3). Durch die Reflexion auf sie fängt der Mensch überhaupt an, über sie hinauszugehen. Die erste Reflexion betrifft hier die *Mittel,* ob sie dem Triebe angemessen sind, ob der Trieb dadurch befriedigt wird; ferner ob auch die Mittel nicht zu wichtig sind, um sie für diesen Trieb aufzuopfern.
自然的な性癖としての衝動は限界である。衝動について反省することを通して、人間は一般にその衝動を乗り越え始める。初めの反省は、ここではその/手段/が衝動に適したものかどうか、その手段によって衝動が満足させられるかどうかに係わってくる。さらにはまた、その手段はこの衝動のために使うには、あまりにもったいなくはないか、など考えはじめる。
Die Reflexion vergleicht die verschiedenen Triebe und ihre Zwecke mit dem *Grundzweck* des Wesens(※4). Die Zwecke der besonderen Triebe sind beschränkt, tragen aber, jeder in seiner Art, dazu bei, dass der Grundzweck erreicht wird. Diesem ist jedoch der eine näher verwandt als der andere. Die Reflexion hat also die Triebe zu vergleichen, ob sie mit dem Grundzweck verwandt sind und derselbe durch ihre Befriedigung mehr befördert wird. In der Reflexion fängt der Übergang an von dem niedrigen Begehrungsvermögen zum höheren. Der Mensch ist darin nicht mehr bloßes Naturwesen oder steht nicht mehr in der Sphäre der Notwendigkeit. Notwendig ist etwas, insofern nur dies und nicht etwas Anderes geschehen kann. Vor der Reflexion steht nicht nur der eine unmittelbare Gegenstand, sondern auch ein anderer oder sein Gegenteil.
反省は、あれやこれやの衝動やその目的を、存在の/根本目的/と比較してみる。特殊な衝動の目的は制限されてはいるが、しかし、それぞれはそのことで、さまざまな仕方で根本目的を達成してゆくことを担っている。もっとも、この根本目的には、ある衝動は他のものよりも深く関係している。反省はそれゆえに、衝動が根本目的にかかわりがあるかどうか、そしてその衝動の充足を通して、さらにもっと根本目的が促進されるかどうか、を比較しなければならない。反省の中において、低い欲求能力からより高い欲求能力への移行が始まる。人間はこの点において、もはや単なる自然的な存在ではなく、あるいは、もはや必然性の領域にはとどまらない。ただ、あることだけが起きて、他のことが起きえないかぎり、そのことは必然的である。反省の前には、ただ直接的な対象のみが存在するのではなく、むしろ、また別の対象が、あるいは、それとは反対のものが存在しているのである。
(※1)
Die Reflexion
反射、反映、反省
reflektieren
反射する、 映す、 省みる、写す
Der Geist hat Reflexion. 精神は反省(Die Reflexion)をもつ。
精神が反省するのは、意識が自己内分裂を遂げているからである。人間の意識が自己内分裂を遂げ、二つに別れることによって、相互に映し合うようになり、自己を自己に関係させ、自己を意識し自我をもつようになる。
「意識の自己内分裂」の意義については、以下の個所などにおいても繰り返し述べられている。
第一教程、第二章 義務と道徳 第四十一節[自己に対する義務]
第二章 義務と道徳 第六十一節[他者への誠実]
第二教程 第一篇 精神の現象学、あるいは、意識の学
(※2)
Er hat sich in sich reflektiert. Er ist in sich gegangen.
精神は自己の中に自己を反映する。精神は自己の内へ進んでゆく。
(※3)
Die Triebe als natürliche Bestimmungen sind Beschränkungen.
自然的な性向としての衝動は制限である。
意志を衝動に従属させることは、自由ではなくて、制限されることであり不自由である。
(※4)
Die Reflexion vergleicht die verschiedenen Triebe und ihre Zwecke mit dem Grundzweck des Wesens
反省は、あれやこれやの衝動とその目的を、存在の根本目的と比較してみる。
「存在の根本目的」とは要するに理念のことである。真、善、美など、国家、芸術、法などの理性的な性格をもつもので、自然的な欲望、衝動よりも「高い」とされるものである。
参照
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