夕暮れのフクロウ

―――すべての理論は灰色で、生命は緑なす樹。ヘーゲル概念論の研究のために―――(赤尾秀一の研究ブログ)

§286d〔公共の自由と君主権の世襲、理性的な国家体制(憲法)〕

2018年11月04日 | 法の哲学

 

§286d〔公共の自由と君主権の世襲、理性的な国家体制(憲法)〕

Im organischen Verhältnisse, in welchem Glieder, nicht Teile, sich zueinander verhalten, erhält jedes die anderen, indem es seine eigene Sphäre erfüllt; jedem ist für die eigene Selbsterhaltung ebenso die Erhaltung der anderen Glieder substantieller Zweck und Produkt.

有機的な関係においては、部材ではなくて肢体としてお互いを保持し合うが、それぞれの肢体は自らの固有の役割を充足させるかぎりにおいて、それぞれ他の肢体を保持する。各肢体にとって、固有の自己を保全することと同様に他の肢体を保持することは、重要な目的でありまた結果である。

Die Garantien, nach denen gefragt wird, es sei für die Festigkeit der Thronfolge, der fürstlichen Gewalt überhaupt, für Gerechtigkeit, öffentliche Freiheit usf., sind Sicherungen durch Institutionen.

ここで求められている保証は、それが王位継承の確かなものとするためや、君主権一般の確立のためにであれ、正義や公共の自由その他のためであれ、諸制度を通して確固としたものとなる。

Als subjektive Garantien können Liebe des Volks, Charakter, Eide, Gewalt usf. angesehen werden, aber sowie von Verfassung gesprochen wird, ist die Rede nur von objektiven Garantien, den Institutionen, d. i. den organisch verschränkten und sich bedingenden Momenten.

主観的な保証としては国民の愛や、気質、誓い、権力などが考えられる。しかし、国家体制(憲法)について語られるときには、ただ客観的な保証のみが、諸制度についてが問題になる。すなわち、有機的に規制しあい、そして自ら依存しあう諸要素が問題になる。

So sind sich öffentliche Freiheit überhaupt und Erblichkeit des Thrones gegenseitige Garantien und stehen im absoluten Zusammenhang, weil die öffentliche Freiheit die vernünftige Verfassung ist und die Erblichkeit der fürstlichen Gewalt das, wie gezeigt, in ihrem Begriffe liegende Moment.

そうして、公共的な自由一般と王位の世襲とは、自ら相互に保証しあうものであり、また絶対的な関連の中において成り立つものである。というのも、公共の自由とは理性的な国家体制(憲法)であり、また君主権の世襲だからである。この君主権の世襲は、すでに明らかにしたように、君主権の概念のなかに存在している要素である。

有機体においては、胃や心臓などの臓器が壊れると、腕や足や目などの各部位もその機能を果たすことができない。公共的な自由一般と君主の世襲も、相互に保証しあう関係にある。君主権の世襲される国家体制(憲法)は理性的であり、また君主権の世襲は、君主権という概念自体にふくまれる契機である。そして君主の認可による法の公布とその国家目的は、さらに具体的な法律、制度をもって遂行されなければならないが、その施行は君主の使命ではない。それは統治権として、君主とは別個に、司法権や行政権としてその特殊な使命は遂行されなければならない。その必然的な展開はさらに「b統治権 §287 」以下に明らかにされてゆく。

 
 
 
 
 
 
 

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