10月の土曜日に練馬区にある武蔵大のキャンパス見学に出かけた。我家から西武池袋線の江古田駅までの乗車時間は50分程度だ。地図で調べると駅周辺には南口の武蔵大の他に、北口には武蔵野音大と日大芸術学部がある。そもそも江古田駅は武蔵の設立に合わせて武蔵に通う生徒用の駅として開業したという。武蔵の創立者である根津嘉一郎はこの鉄道の株主だった。
まず北口の武蔵野音大を訪ねると何だか様子がおかしい。建設業者が出入りしているだけで学生の姿はない。尋ねると5年がかりで建設中の江古田新キャンパスはまもなく完成する。来年の入学式はここで行われるが、現在は埼玉の入間キャンパスに移転しているのだという。駅周辺の商店街に戻り、吉田類の酒場放浪記でも取り上げられたという「お志ど里」で定食の量の多さに悪戦苦闘する。
千川通りに面した武蔵大の正門を初めて訪れた。まず緑に囲まれた外壁に沿って反時計回りに一周することにした。大学と男子校の武蔵中高は同じ敷地にある。かなり歩いて今度は中高の正門から入り大学の建物の方に向った。中高と大学の境界に「すすぎ川」という小川が流れていた。小川はイロハモミジなどの木々に覆われている。川沿いにはベンチも置かれている。小川をどんどん遡ると水がこんこんと湧き出る場所に出た。
武蔵大の正門近くにある武蔵野稲荷神社に気付いて立ち寄ることにした。大黒様が臼造りをしているという意匠の手水鉢など民間信仰の歴史を感じさせて存在感のある神社だった。都心から武蔵へ通う学生が利用する都営大江戸線の新江古田駅まで往復して、再び江古田駅に戻り北口にある日大芸術学部を訪ねた。2010年に建て替えが完了したという校舎はすべてが新しい。そこに「日芸賞」の第1回の受賞者の三谷幸喜と佐藤隆太、第7回のよしもとばななと森田公一など全10回の受賞者の顔写真が並んでいた。