「まんじゅ買うたら皮やるわ」
十代のころよく耳にした級友のことばを、「皮」という字を見ていて思い出した。
餡の甘味のほうが、皮の旨みより上に見られていた、もののない時代のことだった。
いまなら、どちらを取るかと聞かれれば皮と答える。
餡は、中身のように見えても、やはり添えものだから。
食べものは、およそ皮に近い部分に旨みが集まっている。
そうでないのは、瓜の類ぐらいしか思い浮かばない。
人間が、とかく体裁を繕いたがるのも、皮の部分をよく見せようという心根がそうさせるのだろう。
ただ、皮が旨いと言っても、実の旨さと釣り合いが取れていてこそ、そのものが旨いのである。
ギョーザのCMで「モッチモチ」などと叫ばせているのもあるが、皮のモチモチしたギョーザなど、食えたものではないと思うのだが、どうだろうか。
老舗饅頭―創業百年以上 (Shotor Library) | |
本多 由紀子 | |
小学館 |
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