ネットをうろうろしていたら、面白い論文を見つけました。
膵臓学会には相手にされず、学会誌にも不掲載になったとのことなので
異端の論文と思われます。
斎藤清司
、「いわゆる慢性膵炎疑診例」における構造仮説継承型事例研究。
※エラーになるため、リンクを貼りかえました。
CiNii 論文PDF - オープンアクセスというのをクリックしてください。
pdfファイルです。
慢性膵炎疑診で、投薬によっても症状が緩和しない患者に対し
痛みの訴えを否定せずによく症状を聞いて信頼関係を構築し、
痛みが出るメカニズムを説明して少量の抗鬱剤を投与すると
症状のみならず膵酵素の異常までなくなったそうなのです。
斎藤Drによると、いわゆる慢性膵炎疑診の定義は
1)膵炎に類似した腹部症状が長期間続く
2)血清膵酵素異常を伴う
3)他の精密検査で慢性膵炎の確定所見が得られない
となっています。
痛みが出るメカニズムとしては
身体の調子が悪いと不快な気分になる
→不快な気分は神経系・内分泌系・免疫系に影響を及ぼし、身体が過敏状態になる
→過敏状態になると痛みの症状が増強する
→身体症状の増強はさらに不快な気分を強くする
→痛みがさらに強くなる・・・([1])
という風に悪循環に陥るとのこと。
膵機能についてはこのような悪循環が
膵液の過剰分泌や十二指腸乳頭括約筋の収縮を引き起こし
膵管内圧の上昇を引き起こし、腹痛を増強させると考えられるそうです。
また、こういった患者は
「自分は慢性膵炎であり、それは一生治らない」
という(誤った)思い込みがあり、
この考え方が症状をさらに増強させているとのこと。
そこで患者に対して
1)訴えの徹底的な傾聴と丁寧な内科的診察
(病院で痛みを相手にされないことが不安を強くさせている)
2)悪性疾患の見落としがないことの保証
3)悪循環仮説に基づく病態説明
((上記の([1])の悪循環)
4)原因探しの放棄と治療目標の再設定
(なぜ痛いのか考えるのをやめ、症状が楽になる方法を考える)
5)厳しすぎる生活指導の緩和
(厳しい節制をしているが、それで痛みは楽になっていない)
6)少量の抗鬱剤の投与
という治療を施すことで、症状が緩和され、膵酵素も下がり
慢性膵炎疑診患者そのものがいなくなった。
慢性膵炎疑診など存在しない、というのがこのDrの結論です。
結論は少々乱暴かなあと思わないでもないですが
痛みが出るメカニズムや
「いわゆる慢性膵炎患者」が将来について悲観的に考えすぎる
というのはあたっていると感じます。
私も主治医に「治らない」といわれたわけでもないのに
一生薬を飲み続けるのだろうとか
具合が悪くなると入院しなくちゃいけないのだろう
という思い込みがあるし。。。
また、痛みが発生する悪循環にも納得です。
このDrにカウンセラー的な能力があるから
患者さんの症状が治まったような気もします。
今のDrは数値や画像の結果で判断して
異常がなければ痛みを相手にしてくれない傾向がありますから。
患者としては痛みの訴えを否定せずに
病名はどうであれ、症状を軽快させてもらえばいいはずなのですが。
今の医療制度ではなかなか難しいことなのでしょうかね。