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嘘は河豚汁ふぐじるである。
その場限りで祟たたりがなければこれほど旨うまいものはない。しかし中毒あたったが最後苦しい血も吐かねばならぬ。
その上嘘は実まことを手繰寄たぐりよせる。黙っていれば悟られずに、行き抜ける便たよりもあるに、隠そうとする身繕みづくろい、名繕、さては素性すじょう繕に、疑うたがいの眸ひとみの征矢そやはてっきり的まとと集りやすい。
繕は綻ほころびるを持前とする。綻びた下から醜い正体が、それ見た事かと、現われた時こそ、身のさびは生涯しょうがい洗われない。
ー夏目漱石「虞美人草」より
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