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——分光法のなかでも岩田先生は「時間分解分光」という方法に取り組んでおられます。ピコ秒(10-12=1兆分の1秒)、フェムト秒(10-15=1000兆分の1秒)といった時間スケールの現象に着目されているそうですね。
特に私たちは、溶液中の化学反応に注目しています。たとえばコップの中に入っている水は、分子同士が1ピコ秒に10回くらいぶつかっています。
化学反応は分子と分子がぶつかった拍子に起こることが多いので、化学反応を見るためには、10分の1ピコ秒(=100フェムト秒)程度の時間スケールで分光測定を行わなければならないということになります。
——生体膜の物理化学的なおもしろさはどこにあるのでしょうか。
物理化学の視点からからみると、生体膜ってものすごく変な場所なんです。生体膜を構成する脂質二重膜は、リン脂質が2層になってできている膜です。リン脂質分子は親水性の頭部と疎水性の尾部からなっており、水っぽい部分と油っぽい部分を同じ分子のなかに持っています。そして、水の中では頭部を外側、尾部を内側にしてリポソームという脂質二重膜のカプセル状の集合体を作ります。膜の厚さは5nmほど。そのすごく薄い厚さの空間やそのすぐ近くで生化学反応が起きているのです。
水は反応性に富み、有機化学反応の中間体と反応して本来の化学反応を妨害することがあるため、一般的な有機合成反応では反応溶媒の脱水を念入りに行うなど、水は徹底的に嫌われています。だけど身体のなかでは、たくさんの水がすぐそばにいるところに油の集合体である脂質二重膜が浮かんでいて、そこで生化学反応が起きています。生きものはなぜ、どうやって、そんな「変な場所」を使って化学反応をしているんだろうということには、素朴に興味がありますね。
(引用/10兆分の1秒の世界で起きる誰も見たことのない現象を追う – 「時間分解分光法」で挑む、学習院大学・岩田耕一教授)
《「三島由紀夫は高度の知性に恵まれていた。その三島ともあろう人が、大衆の心を変えようと試みても無駄だということを認識していなかったのだろうか」
「かつて大衆の意識変革に成功した人はひとりもいない。アレクサンドロス大王も、ナポレオンも、仏陀も、イエスも、ソクラテスも、マルキオンも、その他ぼくの知るかぎりだれひとりとして、それには成功しなかった。人類の大多数は惰眠を貪っている。あらゆる歴史を通じて眠ってきたし、おそらく原子爆弾が人類を全滅させるときにもまだ眠ったままだろう」
「彼らを目ざめさせることはできない。大衆にむかって、知的に、平和的に、美しく生きよと命じても、無駄に終るだけだ」》 -ヘンリー・ミラー
Bryan Ferry - More Than This ( Rework Retro Remix)