「あたしゃね。頭を下げるのが大嫌ぇなんですよ。」
稀代の噺家。故古今亭志ん生師匠。
やぶれかぶれの豪放磊落、大酒呑みで極貧なその生活ぶりにも、妻のおりんさんが、語った言葉がすばらしい。
「この人はね。こんなんですけど、噺のことだけは熱心なんですよ。噺家が噺に熱心なら、何とかなるだろうと思ってね。ついてきました。」
なんともよろしいじゃあありませんか。
夫が夫なら妻も妻。
熱心になれもしないことにうつつをぬかし、お茶を濁して自分を慰めるような未練は一切無し。
生きざまで、スカッ!っとさせてくれる人はそうざらにはおりゃしません。
あばら家に掛かっていた額には、「老虎健在」
はい。小生の心にもしっかりと掛かったのでありました。