“憂患に生きてこそ、安楽に死ねる”
と、孟子の「告子章句下」という文献にある。
ただ、そのレベルや範疇を問わなければ、のほほんのんべんだらり安楽安逸安易な人の一生など誰にもあろうはずはないから、孟子の遺言は相対的なココロにそれぞれ相対的に響いてくれるのだ。
“憂患に生きてこそ、安楽に死ねる”
と、孟子の「告子章句下」という文献にある。
ただ、そのレベルや範疇を問わなければ、のほほんのんべんだらり安楽安逸安易な人の一生など誰にもあろうはずはないから、孟子の遺言は相対的なココロにそれぞれ相対的に響いてくれるのだ。
山寺の鐘つく僧は見えねども四方(よも)の里人時を知るなり ‐二宮尊徳翁
どこのだれかは知らないけれど、誰もがみんなが知っている時間。
一人暮らしの爺さんが限界集落で一人ひっそりと亡くなりました。あるじを失ってもおじいさんの古い時計だけは、時を刻んでいます。
爺さんがいなくなって、残飯にあり付けなくなった鼠が時計に言いました。
「馬鹿だなあ、誰も見る者はいないのに、何だって動いているんだえ」
「人の見ていない時でも動いているから、いつ見られても役に立つのさ」と時計は答えました。
「人の見ていない時だけか、又は人が見ているときだけに働いているものはどちらも泥棒だよ」
鼠は恥ずかしくなってコソコソと逃げていきました。
hommage/夢野久作
世の中に混じらぬとはあらねども一人遊びぞ我は勝れる。
と詠んだのは確か良寛さんだと思うが、
人の浮世もままええものじゃが、離れておることが、わしゃ面白い。ということでは一茶も似ている。
小林一茶、幼名、弥太郎、六歳の折の発句である。
我ときて遊べや親のない雀
(gif/source)
相対性理論を簡単にわかりやすく教えてほしいと乞うマダムに、アインシュタイン博士はこんな例え話をしたそうです。
『私がある暑い日に盲目の友達と一緒に歩いていて、「のどが渇いたので冷たい牛乳を一杯飲みたいな」と言いました。
ところがその友達が言うのには、「冷たいということも、一杯飲むということも解るが、牛乳とは何だ」
彼がこう尋ねたので私は、「牛乳というのは白い液体である」と答えました。
そうするとその盲目の友達は、「液体は解るが、その白いというのは何だ」と言います。
そこで「白とは白鳥の色だ」というと、「白鳥とは何だ」という。「白鳥とは長い曲がった首の鳥だ」というと、「首は解るが、曲がった首ということがわからん」というのです。
いくら説明しても解らないので、私はその盲目の友人の手を取って、それを伸ばしてみせて「これがまっすぐだ」と云って聞かせ、今度はその腕を曲げて「これが曲がったんだ」と言ったら、その友達は手を打って喜んでいう「あーわかった、わかった」と。
何がわかったかといえば、先に問題になった白い牛乳の「白い」とは何だということが、「曲がった腕」だというふうにわかったのです。』
金持ちとはなんだ、幸せとはなんだなども、これと似たようなものである。
常に自身の主体を失わず、それぞれの場所でできることをやりなさい。
なにぶん、「思惑」がいけない。思惑があるとついつい「画策」をしてしまう。そしてついには自身の主体を見失って、手段と目的を取り違えてしまうのである。
が、しかしそこが人生の醍醐味でもある。
随所において自分の素質を主人公に、つまり自分らしく在りつつ生きる事ほど難しいものはない。
(picture/Nachi Falls © Muda Tomohiro)
清岩禅師の法語にはこうある。
心というものは元来、有るものか無いものか?
答えて言う、無きものなり。
問うて言う、無いものならどうして寒熱、飢飽、喜怒、煩悩などがおこる。
答えて言う、それはみな当座当座のデキモノであって、元来は無いものである。
問うて言う、それはいつから出来ていつから無くなる?
答えて言う、当座に出来て当座に無しになる。例えば、心に金があるよと思う、風が吹くよと思う、その心は当座に出来て直ちに無くなるものだ。つまり水に映る月、鏡に映る姿のようなものだ。水に映る月は水がなくなれば直ちに無くなるように、鏡の姿も自分が去れば直ちに無くなるように。心は胸に有るとおもって胸を割ってみたとてそんなものは無い。
年ごとに咲くや吉野の山桜 木を割りてみよ花のありかを 一休
とやかくとたくみし桶の底抜けて 水たまらねば月も宿らじ 千代尼
(photo/source)
置き所の拙い「こそ」
(夫)貴様みたいなお多福婆を、わしでありゃ「こそ」置いてやる。
(妻)私なりゃ「こそ」辛抱もするが、誰が見るぞぇ痩所帯。
(地主)あれがああして暮らしてゆくも、こちらが田畑を貸せば「こそ」。
(小作)地主の田畑の荒れずにいるも、わたしが小作をすれば「こそ」。
(親)誰のおかげでそうまでなった、俺が学校行かしゃ「こそ」。
(子)学校させてもみんなは出来ぬ、私が勉強したりゃ「こそ」。
置き所の巧い「こそ」
(夫)外で私が働けるのも、内をそなたが守りゃ「こそ」。
(妻)私みたいな不束者を、あなたなりゃ「こそ」親切に。
(地主)田畑作らず暮らしが立つも、小作する人あれば「こそ」。
(小作)我が田なくても暮らしていける、これも地主があれば「こそ」。
(親)あの子なりゃ「こそ」出世もしたよ、苦労したのも甲斐がある。
(子)今日の私の出世もみんな、親の苦労があれば「こそ」。
「こそ」と威張ってこちらにつけりゃ、何を小癪と喧嘩腰。
「こそ」とあがめて向こうにつけりゃ、にっこり笑ってあなた「こそ」。
(参照/八波則吉「道和清談」より)
(図/一休禅師道歌集)
骨かくす皮にはだれも迷いけん
美人というも皮のわざなり
皮にこそ男女(おとこおんな)のへだてあれ
骨にはかわる人かたもなし
金銀は慈悲となさけと義理と恥
身の一代につかうためなり
世の中は貧者有徳者苦者楽者
なん者か者とて末はむしゃくしゃ
(photo/source)
ドッチカ コッチカ ドッチガ コッチダ
どうにか こうにか どうか こうか
兎に角、えらいお坊さんの話では、人間を助ける神様には三神ある。というのです。
それは運命の三神といって、いつでもどんな人間でも見捨てずに、一人の神様は「どうにか」してやろうと心配してくださる。第二の神様は「こうにか」してやろうと手を引いてくださる。第三の神様は「どうかこうか」してやろうと助けてくださる。
だからその証拠にどんな人間でもなんとかしてどうにかこうにか生きている世の中に心配はいらないものだ。
ということのようです。
(gif/source)
雲のかかるは月のため
風の散らすは花のため
雲と風との有りてこそ 月と花とは貴けれ
憂きことのなおこの上にもつもれかし 限りあるみの心試さむ
ー蕃山熊沢了介
さくらさく吉野の山の花守と なりてこそ知れ花の心を
これもこの人の詠である。
桜は人が褒めた方と言って喜びもしなければ、人が惜しんだからといって悲しみもしない。与えて萬人の見るに任せて栄辱もとより関知せず。花を外に見るのではなくこれを心に見る、仏教ではこれを心華開発と云うそうだが、花は植物のもっとも精なるもの、これを心のもっとも精なるものに喩えてこの心の花を咲かせることで天道夢想苦行涅槃の世に綽々たることを担保する。の心持である。
自己の真価、自己知る、他の評価もとより与らず。
(gif/source)
利発な小僧さんが庭掃除をしていて、主人が大事に育てている蘭(らん)の鉢を五つも落として割ってしまいました。
それを見た主人は腹立ちまぎれに小僧を睨みつけて叱り飛ばしました、が小僧さんは一向平気に、
一らんでニらんで見れば三らんす 四らん顔して五らん遊ばせ
と歌うように洒落ましたとさ。
Nausicaä theme (lalala) | Requiem
(photo/original unknown)
その昔、亀と呼ばれた大泥棒がついに捕まり打ち首となった。
なかなかの洒落者で首を刎ねられる前に一句所望しこんな辞世を残している。
萬年も生きよとおもうたこの亀が こころの泥で首がスッポン
同じ泥棒にこんな者もいた。是非にもと辞世を所望し、
浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ
すると、立会人がそれは大泥棒石川五右衛門じゃないかといったところ、「はい、これが盗み納めでございます」
ある乞食は寺の門前にこう書いてこと切れていたという。
知り知らぬ憂さ嬉しさの果ては今 もとの裸のもとの身にして
他にも乙なところでは、
一期栄華一杯酒 四十九年一酔間 生不生死亦不死 歳月只是如夢中 -上杉謙信
善もせず悪も作らず死ぬる身は 地蔵も褒めず閻魔叱らず -式亭三馬
今までは人のことだと思うたに 俺が死ぬとはこいつはたまらん -太田南畝
詩も歌も達者なうちによんで置け とても辞世はできぬ死に際 -多田八千次郎
来山は生まれたとがで死ぬるなり そこでうらみもなにもかもなし -小西来山
(picture/source)
何ごとも云うべきことはなかりけり 問わで答うる松かぜの音 ー澤水禅師
チャウチャウとよく吠えるのは弱いからだ。土佐闘犬が格下をよくわきまえるのは強い身体を自覚しているからだ。からからだからだと言っている人のオツムはその辺の人よりずっと詰まっているからだ。
白隠禅師の逸話にこんなのがある。檀家の町娘が身籠った時苦し紛れに相手は禅師だと嘘の言い訳をした。禅師の名声は地に落ちたが、「そうですか」と巷の非難に取り合わずその子を引き取り養育した。しばしのちその娘はわが子愛しさと嘘のやるせなさに実はと真相を告白する。誤解を懺悔する世間に対して禅師はまたも一言「そうですか」といったきりで知らん顔であったという。
美名も忘れ汚名も灌がず在るが儘、できることならの憬れの境地である。
Max Richter-Sorrow Atoms