よろしいか。酒っちゅうもんはな・・・・・。
この・・・・の部分の違いをどれくらい聞いてきただろう。
酒飲みは、その数ほどの・・・・を持っている。
嗜好品の好みぐらい多様なものはない。なにせ嗜好品ですから。
・・・。
わしはな、日本酒なら土佐酒、あてはかつお。
麦酒なら以前は麒麟やけどな、今じゃあ朝日よ。豆腐か胡瓜か、ちくわか、みょうがでもあったらそんでええわ。
洋酒なら角やなぁ。間違いない。炭酸入れまんねや。しょわしょわっときてうまいねんで。ほんでもってな、つまみは豆かチーズか干し葡萄か、あ、昆布やサヨリの干物やなんや日本の乾物をくちゃくちゃやるのもよろしい。洋酒ゆうても、角は和製洋酒やからな。
だいたいそんなもんやね。定期的に交代で腹ん中はいりますんや。これが。
華やかな大きい通りよりも、裏道小道。
綺麗なべべきたねぇちゃんとよりも顔も態度もねれたおっちゃんと。
繁華街よりも門前町。そんなとこに惹かれます。
けどな。時と場合によりますわ。こればっかりは。
ま。ええやおまへんか。好みで。
ははは。
しかしな。蛾のように看板のあかりに引寄せられるわし。どうにかならんのかいな。とおもうこともあります。
どうにもなりませんのやこれが。好みですから。
どっか具合が悪うならん限りあきませんわ。頭はちょくちょく悪うなりますけど。
しかしよろしいか。「酒好き」とはちゃいまっせ。「酒が好み」なんですわ。
・・・。
・・・。
好んでも好まれないことも、好んで好めることと、好まずとも好まれることもままございます。
嗜好品でもある酒のよさは、そのようなうっとおしいことを範疇におかず楽しめる処が、やはり好みなのでございます。
我が好み。願わくばそうであらんことを、祈りつつ今日も呑むのであります。
甘口の酒よりは辛口の酒を。
感傷よりは思慮分別を。
批判よりは機知を。
馴れ合いよりは孤独を。