ぶれてぼける二人連れ。
・・・。
酔ったなぁ。
ああ。酔った。
おい!狸公!
へえ。なんでしゃろ。
おめえ。人を騙すってほんとかい。
へぇ。たまにですがね。やりまっせ。
おお。じゃあ。騙してもらおうじゃないか。
へぇ。よろしおま。
・・・。
なんでぇ。なんでぇ。なんにも騙されちゃいねえじゃないか。
へ。わかりませんの?もう騙しましたがな。
いってぇ。おまえなにをどう騙したといいやがる。
へぇ。騙したことを騙してましてん。
おお。そうか。おめえ。なかなかやるなぁ。
いやぁ。あんさんかて。わたしゃ一杯食わされてます。
食わした覚えはねえなぁ。そりゃきっと、狸に化かされてるんじゃねえか?
それでんがな。騙したと思ったら、化かされて。
おめえ。狸のくせに、ムジナみてぇな野郎だな。
へぇ。あんさんと、同じ穴ですわ。
はは。ちげぇねえや。じゃ。もう一杯いくか?
へぇ。いかしてもらいますけどな。食わされるのはいやでっせ。
おめぇ。俺を誰だと思ってやがる。狸様はな、人様に一泡ふかせてこそよ。
それで安心しましたわ。泡吹くくらい呑めるんでんな。
そうともよ。こちとら江戸っ子狸。宵越しの金はもたねぇ。
ほい。よろしおま。今日はとことん付きあいまっせ。
・・・。
・・どうでぇ。酔った気になったかい?
・・それがさっぱりあきまへん。
だめか。狸同士だけに、金払わなくて酔えるいい方法だと思ったんだがねぇ。
さいですな。化けの皮は、所詮化けの皮ですわ。
騙しも化かしも効かねぇか・・。
わしら、なんやかんやいっても狸同士ですわ。やっぱり。
・・しかし。なんだなぁ。人様は騙せても自分は騙せねぇな。
狸の旦那。仕方おまへん。わしらには、狸の良心がありますから。
ちげぇねぇ。ちゃんと飲みにいくか。
へぇ。待ってました。
・・・・・。
騙しも化かしも嘘も八百も、効かない間柄。
ぽんぽこ二人連れ。
酔いますなぁ。