夜、人間の世界に迷い込んだしまった蛾は尋ねた。
「私は今どこにいるのでしょう」
男は答えた。
「私の机の上だよ。元の世界に帰りたいのかい」
蛾は答えた。
「もちろん。ここには希望もないし、それに蜘蛛もいた」
男は窓を大きく開けながら言った。
「オーケー、でも今は昼だし夜になってからでもいいんじゃないか」
蛾はこういい残した。
「いや少しでも早く、私は元の世界に帰りたいんだ」
そして蛾は、窓から外へ、今までの世界から離れた瞬間、
見たこともない、風のようにやってきたツバメに前途を絶たれた。
蛾にとってそこは、未知の世界だった。