バネの風

千葉県野田市の「学習教室BANETバネ」の授業内容や、川上犬、ギャラリー輝の事、おもしろい日常を綴ります。

砂丘を登る

2016-03-20 13:49:15 | 旅行
先日バネの床を張り替えた。
鳥取から夕刻帰宅し、病院に預けていたバンを引き取りに行き、荷物を広げ、家にたまったゴミを片付け、など慌ただしくこなした翌朝、卒業生のTさん率いる職人さんと大工さんがドーッとやってきた。
まず今の絨毯をはがず。この作業が大変。布部分のラバー下敷きがボンドで床板にベッタリついている。それを皆でコシコシと削り、新しいコンパネを乗せ、絨毯を張る。荷物どかしながら教室半分ずつやるので、同じ作業を2セット繰り返した。繰り返したって、最初は自分もコシコシ手伝ったけど、途中からは完全にお任せ。

これまで明るいグレーだった絨毯を、せっかく張り替えるのだから色を変えようということで、サンドベージュにした。すると。なんだかコルク床に見える。そして先日登ってきた鳥取砂丘に見える。

砂丘を登る。
市街地から砂丘を目指した。
最初の小さな駐車場に車を置き、はやる気持ちを抑えながらフェンスの向こう側まで砂に足をとられながら歩いて行くと。確かにそこは砂浜だけど、これと言って何もない。誰もいない。遙か遠くにドライブインやら、ごまのように点々と黒い粒が付いた砂の丘面が見える。前を歩いていた山陰なまりの2人組は、なにやら「残念な景色だ」とか言いながら引き返すから、自分も残念に思いながら車に戻り駐車場の案内板を見ると、この先に見えたドライブインのあたりが観光ポイントであるということがわかった。

砂丘観光地帯に踏み込むと、そこにはラクダがいた。観光撮影用と乗車(ラクダ)用。勝手にラクダの写真を撮ると怒られると聞いていたし、なにより先ほど遙か彼方に見えた砂丘面の黒い点々は黙々と登る観光客達だったことがリアルに確認でき、気がそぞろになりラクダ撮影はスルー。点々と人が這いつくばる砂丘面とラクダをバックに自撮りして、ラクダの一件はよしということで。
さて、ここまで来たら登るでしょう。靴がそれ用じゃなかろうが、寒風吹きすさぼうが、登るでしょう。砂に足を取られながら、前の人が踏み固めた部分を探しながらザクザク進む。こうやって登る人の中に紛れると、自分も点々になっているのだなと思い、それはそれで楽しい気分になってきた。点々で驚いたのは、杖を付く高齢者も家族に引っ張ってもらいながら登っていたこと。みなあちらこちらで口々に「がんばれ」などと家族や仲間と励まし合いながら登るけど、こちらは一人なのでとにかく黙々、グイグイ登るからどんどん他の人を追い越し砂丘頂点に、登りはじめの印象より楽に到達。
こうして到着したてっぺん、そこに何があるのか。そこから向こうに何が見えるのか。
頂上から見下ろすのは普通の砂浜で、冷たそうな日本海の白波が浜に打ち付けている光景が続いているだけ。
「ありがたや」なんて手を合わせる人がいるわけじゃないし、一人だし何もやることも、しゃべることもないから、もう一度今登ってきた砂面をバックに自撮りして、登った労をあっさり捨てるように砂丘を降りた。どうやらグループで来ている人もほぼ同じ行動をとっているようで、頂上まで行って砂丘の向こう側を確認して、多少おしゃべりはするものの、まるできびすを返すように降りてくる。老いも若きも黙々と砂丘を登り降りてくる。ただそれだけのことなのに何とも言えぬ満足感に満たされるのでした。

教室の床張り替えで本棚を動かしたので本を整理していると、娘が幼児の頃何度も読み聞かせした絵本「こんとあき」が出てきた。ぱらぱらめくると。
そこに広がるのは、あの砂丘の景色。登った斜面の形、頂上から見える海岸、まさにあの景色。なにかじゅわーっとした思いがこみ上げる。