水の門

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歌集『カインの祈り』

澤本佳歩歌集『カインの祈り』
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“ジープ・ウェイ・レター”~武相荘を訪れて

2006年11月30日 18時48分20秒 | 旅に寄せて
昨日、髪を切りに上京した帰り道、町田市は鶴川にある白洲次郎・正子夫妻の旧邸宅【武相荘】に足を伸ばしてきた。
今、日本橋の高島屋で白洲次郎展をやっていたり、また次郎氏がここのところテレビ等でちょくちょく取り上げられたりで、にわかにブーム到来とあってか、平日なのに訪問者が後を絶たないほどだった。
行き帰りの電車では、以前5ページ程で読み止しになっていた『風の男 白洲次郎』(青柳恵介著)を開いた。八王子で特急のかいじに乗り込んで程なく、ある箇所に来てページを繰る手が止まった。
GHQ作成の憲法草案に対する日本側の所感をまとめた白洲の手紙だった。
白洲は、GHQ側の提案してきた立憲国家に到達する道筋を、目的地に一ッ飛びする直線的なエアウェイ(航空路)と呼んだのに対し、日本の憲法委員会のそれを、曲がりくねったでこぼこ道、「ジープ・ウェイ」と例えていたのだ。

「はっきり言っておく」。イエス・キリストは、偽善者に向かってよく歯に衣着せず苦言を呈した。そのためか、キリスト教には罪に対してまた義に対して直裁的な態度を取る構えが根強いように思う。私が20代を過ごした教会もまた多分に漏れず、私自身もそのように物を見、物を言ってきた。
しかし今になると、イエスの違う面を見て心動かされることが多い。
ルカによる福音書17章に、重い皮膚病を患った10人の人がイエスに遠くから「わたしたちを憐れんでください」と呼びかけるシーンがある。イエスは「祭司たちのところに行って、体を見せなさい」と答え、10人は道の途中で病気が癒された。この内の一人はイエスのもとに戻ってきて足元にひれ伏して感謝した。
私はこの病人のことをよく考える。病人は心底治りたかったろうけれど、自分は穢れているのだという気持ちにいつも苛まれていたに違いない。その気持ちがイエスに近寄りたくてもとても傍には行けなかった姿に見てとれる。イエスもその心うちを分かっていたためだろう、無理に自分の元に呼び寄せることはなさらない。それだけでなく、いかめしい祭司の前に立つ恐怖感からもこっそり解放してあげた。治る前、離れた所から声を張り上げるしかできなかった病人が、癒されたと気付いて身を翻し、イエスの足元に猫がじゃれるようにうずくまることができた幸せはどれほどだっただろか。心から慕い敬う人に、何の障壁もなく近付ける幸せ…。

人には様々な過去がある。そして様々な背景がある。神に真っ直ぐ近付ける人もいれば、遠回りをする人も当然いる。その人なりの歩みを、イエスは決して急かしたり咎めたりせず、温かく長い目で見守っていてくださるのだと思う。


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コメント (5)
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