「斎藤氏をまた知事に選んだ兵庫県民は明らかにバカである。どうしようもないバカである。」
これは、私が言ったのではない。
漫画家の小林よしのり氏の言葉なんである。
小林氏は、
「テレビは日本人を『一億総白痴化』し、
ネット‐SNSは『一億総狂人化』をもたらした」と言う。
悲しいけれども、半分は当たっていると思う。
西宮のPR会社(Merche)の代表折田楓さんの選挙直後の発表は、
SNSでの「種まき」「育成」「収穫」操作によって
「斎藤元彦氏はマスコミによって生贄にされた被害者で、
彼こそが知事として最も相応しい人物だ」という認識を
視聴者に植え付けたことを高らかに宣言したものである。
折田氏は、自社が選挙でSNS広報を仕切ったことが公選法に触れるかも知れないとは
思ってもいなかったのだろう。
だから、堂々と自社PRとして詳しく紹介したに違いない。
確かに彼女と彼女の会社が為したのは大変大きなことだった。
10月初頭には圧倒的に斎藤批判派の多かった世論を
1カ月半という短期間に地殻変動的にひっくり返したのだから。
こうしたSNS操作が民意をある方向に向かわせるのに非常に有効であることが
この知事選で明らかになった。
前明石市長の泉房穂氏は「これからの選挙はSNS中心に展開されるだろう」
と言っているが、この泉房穂氏という人物も、ウルトラ現実主義者なのか、
斎藤氏が勝ったとたんに「こうした民意に無頓着で、一面的、攻撃的物言いだった」と
斎藤氏に謝罪した。なにをソワソワしているんだ。ヘンな人。
泉氏の「これからはSNS中心の選挙になる」の文言からは、
民意形成の過程で、SNSで飛び交った嘘・扇動の数々に対する批判がない。
そもそも、短期間で促成栽培される民意とはどうなんだ?
この前の衆院選でもSNSを駆使した国民民主・れいわ・参政党などが得票を伸ばしたという。
「だから、みんなこれからはSNSにフォーカスしよう」と雪崩を打つのは違うと思う。
れいわ新選組は確かに、YouTube等で動画配信もしていたが、それ以上に代表の山本太郎が
何年も前からほぼ毎週、北海道から沖縄まで全国津々浦々大小の町を何度も駆け巡り、
その地域の人たちと双方向の対話を積み重ねてきたことが得票数が増えた最大の理由だ。
1か月やそこいらの付け焼刃「民意」ではない。
斎藤元彦をまた知事に押し上げた「民意」。
140名に及ぶ県庁職員のパワハラ経験・目撃をなかったことと信ずる「民意」。
既得権益グループに嵌められた可哀想な斎藤さん、というストーリーを信じる「民意」。
斎藤氏当選で沸き返った人々の姿が、
戦時中、南京攻略の報に浮かれて難波の街に繰り出した人々の姿と、
そして、阪神タイガースが勝ったと風船飛ばして沸き立つ阪神ファンの姿と、
ぴったり重なるのである。
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