世界文化遺産と韓国の反応

　日本の明治産業革命遺産２８か所について、ユネスコ世界遺産委員会傘下の諮問機関が、ユネスコに対し、登録を勧告したというニュースが流れました。これに対して韓国がさっそく異議を唱えました。なんでも、日帝強占期（日本が韓国を支配していた時代を韓国ではこう呼びます。日本帝国主義強制占領期の略）に韓国人が強制連行された場所が含まれてるんだそうです。

　韓国によれば、太平洋戦争期に韓国人５万７９００人がこれらの施設に強制連行され、９４人が死亡、５人が行方不明になったとのこと。この数字をどう評価してよいのか、よくわかりません。

　「強制連行」と呼ばれているものは、国家総動員法に基づく国民徴用令が韓国にも適用されたもので、日本人の徴用数は終戦時に６１６万人だったそうです。朝鮮出身者への適用は期間的に短く、戦争末期の１～２年。朝鮮からの徴用がどのぐらいだったかは諸説あり、日本を糾弾する立場の人たちは１５０万人とか２００万人とか主張していますが、実際には徴用が３０数万人、官斡旋という募集形式を合わせても計７０万人ぐらいのようです。

　ただ、徴用先の中で過酷だったといわれるのが炭鉱で、炭鉱での朝鮮出身者の比率は高かったという証言があります。

　今回、指摘されているのは三菱重工業長崎造船所、端島炭鉱（軍艦島）などで、炭鉱も含まれています。韓国が指摘する死者は、炭鉱の爆発事故などの犠牲者でしょう。

　「強制連行」というのは戦後の呼び方で、給料は払われていたわけで、いわゆる「強制労働」とは違います。また、日本国民に等しく適用されていたのだから、民族差別にもあたらないと思うのですが。

　韓国の抗議に対し、日本側は「日本の近代産業遺産は１９１０年以前の話だ。時代が違う」と反論していますが、たぶん韓国は聞く耳を持たないでしょう。

　韓国が日本の文化遺産登録に反対するのには、「強制連行」云々とは別の理由もありそうです。これまでにユネスコに登録された世界遺産は、韓国が自然遺産１、文化遺産１０で計１１。日本は自然遺産が４、文化遺産が１４で計１８。
何かにつけて数字を競う意識の強い韓国。これ以上日本に差をつけられるのは腹立たしいということなんでしょう。２０２０年の東京オリンピック招致が決まる直前の、韓国の国を挙げての妨害活動が思い出されます（リンク）。

　慰安婦問題に加えて、新たな外交の火種になりそうで、気が重いです。