犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

トランプ候補のデマ拡散

2024-09-15 00:00:07 | 日々の暮らし(2021.2~)

写真:テレビ討論会のトランプ氏とハリス氏(時事通信社)

 アメリカ大統領選挙の二人の候補者が10日、テレビ討論を行ったそうです。

 私は、妻と一緒にテレビの報道を見ていました。

 トランプ氏は、米国に不法移民が流入しており、民主党政権の取り締まりが手ぬるいことを批判するなかで、

「(オハイオ州)スプリングフィールドでは、移民が犬を食べている。猫も食べている。住民のペットを食べている。これが我が国で起きていることだ」

と発言。

 主催したABCニュースの司会者は、すかさず「同局が市に確認したが、それについて信頼に足る情報はないとのことだった」とコメントしましたが、トランプ氏は、

「テレビに出ていた人々が、犬を食べられたと言っている」

などと反論。

 民主党のハリス氏は、あきれ顔で

「そんな極端な話を…」

といって取り合いませんでした。

私「移民がペットの犬や猫を食べたって…」

妻「韓国人なの?」

私「まさか。韓国人は猫は食べないし、オハイオ州に韓国人が多いって話も聞いたことがない」


 韓国では今年の初め、「犬食禁止特別法」が可決されたばかり。韓国で犬を食べることができなくなった「犬鍋好き」の人々が、アメリカに渡った?

犬鍋、万事休す

 かつて「性売買特別法」(売買春禁止法)が制定されて、国内で働きにくくなった職業女性たちが、日本やアメリカなどに進出したということがありましたが、犬を食べたいなら、近場の中国やベトナムに行けばいいわけで、そのためにアメリカに行く人はいないでしょう。

 ニュースが終わってから調べてみると、トランプ氏が槍玉にあげたのは、ハイチ人移民でした。

 オハイオ州のスプリングフィールドには、ここ数年で約1万5000人のハイチ人が合法的に移住したそうです。その結果、人口5万8000人の同市では、医療や公共サービスが逼迫しているそう。

 討論会に先だって、共和党の副大統領候補のヴァンス氏(オハイオ州上院議員)が、SNSに、

「この国にいるべきではない人々にペットがさらわれ、食べられたという。国境警備官はどこにいる?」

と投稿。その後、共和党支持者の間で、「ハイチからの移民がペットを食べている」という根拠のない投稿がネット上に拡散。

 共和党支持者のイーロン・マスク氏(電気自動車のテスラ共同設立者、X(旧ツイッター)を買収)も、こうした主張を肯定する投稿にコメントして、情報を拡散させたんだそうです。

 オハイオ州のデワイン知事(共和党)は、連邦政府に財政支援の強化を求めたましたが、一方で、「ハイチ移民を非難するべきではない」とも主張。

 討論会の直前には記者会見を行い、「市にやってきたハイチの人たちは勤勉だ」と述べたそうです。

 討論会の翌日、ハイチ政府は、

「発言は同胞の尊厳を踏みにじり、命を脅かしかねないもので、断固として拒絶する」

と、トランプ氏のデマに対し激しく抗議する声明を発表。当然のことでしょう。

 実際、12日、スプリングフィールドでは、市庁舎や小学校などに爆破を予告する脅迫電話があったそうで、ハイチ系住民は不安を募らせているということです。

 日本では、昨年、関東大震災から100年を迎え、韓国から「朝鮮人虐殺事件」の再調査を求める声が上がりました。

 朝鮮人虐殺事件は、大震災後の混乱の中で、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」など、根拠のない流言飛語から生まれた悲劇です。

 当時、ラジオの開局前で、情報が極度に不足する中、流言飛語が拡散してしまったのです。

 100年後の現在、それも先進国アメリカで、このような根拠のない言説が流され、広がってしまうというのは、信じがたいことです。

 幸い、悪意ある情報拡散に対し、すぐにそれを検証・否定する情報も流れますから、「朝鮮人虐殺」のような悲劇は起こらないでしょう。

 こんな情報を真に受けて、討論会で主張するトランプ氏の知性を疑います。そんなことをすれば、選挙戦でかえって自分が不利になることに思い至らないということにも、あきれてしまいます。

 私は必ずしも民主党が好きではありませんが、トランプ氏を大統領にさせないためにも、ハリス氏に頑張ってほしいものです。


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