犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

ヒト、この不思議なる動物⑦~ひもが結べる

2010-05-03 23:48:28 | 文化人類学
 一週間ほど前,義父の具合が悪く,検査のために入院するという連絡が入りました。

 そこで4人の娘たちはゴールデンウィークにお見舞いに行くことに。そして,買ってきたのが折り紙です。千羽鶴を折るんですね。一人250羽ずつ。

 私も久しぶりに折りましたが,スピードではやはり娘たちに劣ります。せっせと鶴を折る娘たちの姿を見ながらつくづく思ったのが,

「こいつら本当にヒトだなあ」

ということ。あらゆる動物の中で,鶴を折れるのは間違いなくヒトのみでしょう。

 少し前の記事で,ヒトの特徴として「ひもが結べる」というのを挙げました(→リンク)。

 しかし,ネットで検索してみると,ひもが結べるチンパンジーがいることが判明。中国南京市の動物園にいる小玉という名のチンパンジーは,靴ひもをほどいたり結んだりできるらしい(→リン)。

 ですから,「ひもが結べること」をヒトの特徴とした内容は撤回しなければなりません。しかし,この小玉にしても,鶴を折るのはできないにちがいない。

 靴ひもを結ぶことと鶴を折ることの違いは…。

 まず,

①作業が細かい。

 鶴を折るのは,ひもを結ぶのに比べてずっと細かい作業が必要です。必要とされる「指先の器用さ」が違います。そして,

②工程が複雑である。

 正方形の折り紙を鶴に仕上げるまでには,ざっと数えて15回折らないといけない。それぞれの順番を正しく守らなければ,鶴はできあがりません。そして,この順番を守るためには,

③計画性が必要である。

 そして最も本質的なのが,たんなる紙切れを鶴に見立てるという

④抽象化能力。

 写真を理解することすらむずかしい動物に,紙を鶴だと言い聞かせても,何を言っているかさっぱりわからないでしょう。

 さらに言えば,千羽鶴を折るには,病人を思いやる気持ち,鶴が長寿であるという認識,その鶴を折ることで病気からの快復を祈るという高度な思考力が必要ですが,これはもう動物には想像もできないことでしょう。


 さて,ヒトがいつから折り紙を折るようになったのか。まあ,折り紙には,材料の紙が必要だから,中国で紙が発明された約2000年前以降のこと。人類の歴史からすれば,ついこの間のことです。

 では,ヒトがひもを結ぶようになったのはいつか。

 手先の器用さという観点から見れば,チンパンジーでも靴ひもが結べることから類推するに,ヒトが直立二足歩行を始め,手が自由に使えるようになったかなり早い時期,すなわち猿人(アウストラロピテクス)段階でもできたかもしれません。

 しかし,わざわざひもを結ぶという面倒くさいことをするには,それなりの目的がなければならない。

 もし,服の機密性を高めるためということであれば,原人またはホモの時代に入ってからでしょう。

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2 コメント

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槍,斧 (犬鍋)
2010-05-09 01:29:41
コメントありがとうございます。

槍や矢尻に「ひも」が使われていたのかどうか,よくわかりません。

たぶん,アルフレッド・クロスビー『飛び道具の人類史』という本を読めばわかるんじゃないかとおもいますが…(購入予定)

ハンドアックスはハビリス(原人とみる学者と猿人とみる学者がいるらしい)が最初ですけれども,たぶんそのまま手に握っていたんじゃないかと思います。

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Unknown (Cru)
2010-05-06 23:24:59
槍の穂先になる石器を槍の柄に結びつけるってのはどうですか? やじりとか。
衣服より古いかどうかはわかんないですけど。

猿人・原人の「ハンドアックス」とかは手で握ってたのかしらん?
斧みたいに堅い木の棒に括りつけて使ってたかも??
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