韓国語でセクハラのことを、性戯弄(ソンヒロン)ということを、前に記事に書いたことがあります(リンク)。
最近では、Me tooとも呼ぶようですね。
昨年から韓国では、政治家、財界人など、著名人のMee too暴露が熱風(ヨルプン、ブームの韓国式表現)になっています。
最近では、高名な詩人のコ・ウン(高銀)が槍玉にあがっている。
高銀といえば、その作品が国民にほとんど読まれていないのにもかかわらず、毎年、国民からノーベル賞を待望されているという悲劇の詩人(リンク)。
告発したのは、やはり詩人のチェ・ヨンミさん。詩人らしく、自作の詩の中でコ・ウン氏の昔の醜行(わいせつ行為)を暴露しました。その詩がこちら(リンク、韓国日報)。
チェ・ヨンミ『怪物』
En先生の隣には座るなと
文壇に入りたての私に、詩人のKが忠告した
若い女性を見れば触るからね
Kの忠告をうっかり忘れ、En先生の隣に座ったら
Me too
妹に借りたシルクのスーツの上着がしわくちゃになった
数年後、ある出版社の忘年会で
隣に座った人妻の編集者を弄ぶEnを見て、
私は声を上げた
「このすけべじじい!」
三十年もの先輩をひどく叩いて、私は逃げた
Enが私にビールのグラスを投げつけると、
買ったばかりの黒のベストが汚れるかと思い
コートの裾を翻して麻浦の店を出たが、
百冊の詩集を出したというEnは
「水道の蛇口さ。ひねりさえすれば出るんだ
でもその水は汚水だからな、まったく」
(内輪の席で)彼の悪口を言う小説家の朴先生も
Enの図体が大きくなって怪物になると口をつぐんだ
自分が飲んでいる水が汚水だとも知らない
あわれな大衆たち
ロートル賞候補としてEnの名前が挙がるたびに
Enがロートル賞をとるなんてことが本当に起こったら
この国を出て行かなくちゃ
こんな汚れた世界に住みたくはない
怪物を育てたあと、どうやって
怪物を倒すべきか
『黄海文化』、2017年冬号、p.128
当の高銀氏は、外国メディアに向かって弁明をしていますが、チェ氏はそれにも反論。
ニューシスの3月4日の記事です(リンク)。
チェ・ヨンミ、「恥ずべき行為はなかった? 私の言葉と文は事実」
「恥ずべき行為はなかった」。詩人高銀(コ・ウン)が外国の報道機関に発表した声明に対し、詩人チェ・ヨンミが「私の言葉と文は事実」と反論した。
4日午後、チェ・ヨンミ氏は自らのフェイスブックに「私が怪物についてマスコミを通して言ったことと文は事実です」、「今後文化芸術界の性暴力を調査する公式の機関が発足すれば、そこに出向いて詳細を明らかにします」と表明した。
チェ・ヨンミ氏は、昨年12月、季刊誌「黄海文化」に「怪物」という詩を発表し、その中で性暴力を告発した。「怪物」にたとえられた「En先生」を指して、「若い女性を見さえすれば触る」、「人妻の編集者を弄ぶ」などのどぎつい表現で、「En先生」の性暴力をはばかりなく暴露した。
その後チェ氏はJTBCのニュースルームに出演し、「文学作品である詩は現実とは別もの」と言いつつも、「彼は常習犯だ。一回や二回ではなく、何度も、あまりにも多くのわいせつ行為とセクハラを私たちが目撃したし、私自身も被害を受けた」と述べた。「En先生」がノーベル文学賞の候補に挙げられているという作品の中の設定で、先月6日、詩人高銀の実名が公開された。
高銀氏の猥褻疑惑は文学界だけでなく一般社会にも波紋を呼んだが、当事者である高銀氏は公式には反応せず沈黙した。これに対しチェ氏は「En先生」の過去の行為を、さらに具体的に暴露した。
先月27日、チェ・ヨンミ氏は東亜日報に「1992年の冬から1994年春の間のある晩、当時の民族文学作家会の文人たちがよく出入りしていた鍾路のタプコル公園の近くの飲み屋に元老詩人のEnが入って来て、椅子の上に横になり、自分の性器をいじる醜態をさらした」、「公開の場で、他人の前で、自分の「いちもつ」を弄ぶことが、彼の芸術家魂とどんな関係にあるのか…、私は聞きたい」と述べ、高銀氏のわいせつ行為を強く批判した。
チェ氏は、「私の口がけがれると思い、自分が目撃した怪物先生の最悪の醜態を公開しないようにしたが、反省はおろか、いまだに怪物を庇護する文学人士を見て、この文を書いている」と語った。
この文に対しては、反論も提起された。当時タプコル公園の近くの文人たちの行きつけの飲み屋の前の女将が自らのフェイスブックに、「チェ・ヨンミの文はありえない架空小説」、「削除を望む」と書いた。彼女は、「彼(高銀)はいつも僧侶出身という誇りをもち、数多くの奇行的な行動とセクハラ発言は口にしたけれども、醜態的な猥褻奇行をしたという記憶はない」、自分が言ったとされる「阿諛先生め」という言葉を言ったことはない、と反論した。
さらに「高銀氏は詩人であり、口上手の才談家だ」、「当時は、セクハラという概念もなく路上で放尿もしたし、横断歩道の横に、車道にと跳ね回って、マナーなど無関係に、男らしく煙草の煙の中で、湿った夜の生活を送ったりもしていた未熟な文化的な時代の流れに対し、今の物差しで体罰を加えるのはひどいのではないか」と主張した。
一方、高銀氏は今月の2日に英国のガーディアンに「私は最近の疑獄で私の名前が挙げられていることが遺憾であり、私はかつて私の活動が招いたかもしれない、意図しない(被害者たちの)苦痛に対し、悔いている」、「けれども私は、何人かが提起した常習的非行に対する非難については断固否認する」と公式声明を出した。
高氏はまた、「私が今、この瞬間に言えることは、一人の人間として、そして詩人として持っている名誉とともに、私の創作が続けられるだろうと信じる」と述べた。
どちらの言い分が正しいのか、私にはわかりません。高銀の作品も、一度も読んだことがありません。ただ、この騒動によって、高銀のノーベル賞受賞が更に遠ざかったことは確かです。
これに関連して、おもしろい記事がありました。
朝鮮日報2月23日
Me Too:正義・人権を振りかざす韓国左派系団体の二重規範
「彼のありとあらゆる非道徳的な醜聞を覆い隠し、韓国文学界の代表として、韓国文学の象徴として擁立・偶像化してきた人々は今、何をしているのか。その目で見て、その耳で聞きながら知らないふりをする人々は皆、共犯であり、主犯でもある」
韓国文壇の「巨匠」をはばかることなく叱りつけた若い詩人は正しかった。その恐ろしい「沈黙のカルテル」は文化・芸術界だけでなく民主と正義、人権を叫ぶ複数の市民団体にも及んでいた。同じ性犯罪であるのにもかかわらず、彼らは右派か左派かなどのイデオロギー論理を徹底的に当てはめている。
著名な詩人の高銀氏(84)、舞台演出家の呉泰錫(オ・テソク)氏(77)、同・李潤沢(イ・ユンテク)氏(65)、俳優チョ・ミンギ氏(52)など、文化・芸術界の性暴力に対する「Me Too運動」が広がっているのにもかかわらず、沈黙を守ったり、しぶしぶその場しのぎのコメントを出したりしている。高銀氏は左派系文学団体「韓国作家会議」の常任顧問であり、李潤沢氏はいわゆる「文化界ブラックリスト第1号」として保守政権から弾圧を受けたとされる代表的な芸術家だ。チョ・ミンギ氏は「ろうそくデモ参加芸能人」のリストに名を連ね、同デモ支持者の歓声を浴びた俳優だ。
韓国作家会議は、高銀氏の強制わいせつ・性的暴行問題が発覚してから2週間以上たった22日にようやく「3月10日に懲戒委員会を開く予定だ」とコメントを発表した。「懲戒」という言葉を使っているものの、当事者が同会議を脱退すればそれで終わりという有名無実の対策だ。同会議は非難の声が寄せられているのにもかかわらず、高銀氏を擁護してきたとされる。
文芸界の一部の人々はソーシャル・メディアなどを通じて、高銀氏に対する疑惑を詩で告発した女性詩人チェ・ヨンミ氏を個人攻撃し、「逆風」を巻き起こそうという動きも見られた。だが、「高銀氏自身が謝罪せよ」という世論が強まると、苦肉の策をひねり出したというわけだ。
高銀氏と同年代の男性文芸関係者は「もし右派側の文芸関係者が強制わいせつなどをしていたら、とっくに消えていただろう」と苦言を呈した。右派系の人物の強制わいせつ問題が発覚すると、すぐさま糾弾声明を発表してきた左派系女性団体も俎上(そじょう)に載せられた。「韓国女性団体連合」は21日夜に遅ればせながら李潤沢氏の性的暴行を糾弾する声明を発表した。先月29日に女性検事であるソ・ジヒョン検事の告白で検察内部のセクハラ(性的嫌がらせ)問題が明らかになった時は、翌30日に声明を発表しており、対照的な対応と言える。同連合は高銀氏、呉泰錫氏、チョ・ミンギ氏については言及していない。
同連合のこうした動きに、「女性団体は女性のための団体なのか、それとも(政治的)イデオロギーのための団体なのか」、「(保守系野党・自由韓国党の)洪準杓(ホン・ジュンピョ)代表の妄言や『豚の発情剤事件』が取りざたされた時は『即刻辞任しろ』と一斉攻撃したのに、高銀氏や李潤沢氏についてはなぜ沈黙しているのか」などの書き込みがインターネット上に相次いで寄せられている。
梨花女子大学名誉教授のある女性学者は「韓国の女性運動の慢性的な問題点は、女性という党派性よりもイデオロギーによる党派性の方が強いことだ。自分たちが支持する現政権が『Me Too運動』で脅かされることを望んでいないからだ」と指摘した。
性暴力告発に対する二重規範(ダブルスタンダード)的な姿勢は法曹・教育関連市民団体でも同じだ。「民主社会のための弁護士の会」はソ・ジヒョン検事の暴露を積極的に支持しているが、内部の問題については口を閉ざしている。
同会所属の女性弁護士が以前セクハラを受けた時、「先輩だった李在汀(イ・ジェジョン)議員=与党・共に民主党=に『賢明な選択をするように』と説得された」と暴露したが、同会は何もコメントしていない。
ソウル芸術大学、清州大学の教授として在職していた呉泰錫氏、チョ・ミンギ氏の強制わいせつ問題が波紋を呼ぶと、「民主化のための全国教授協議会」も「コメントを発表するかどうか決めていない」と述べた。
同協議会は、カン・ミョンウン青巌大学前総長による女性教授セクハラ事件で、被害に遭った教授たちを復職させ、公正な捜査をするよう促す集会を今月12日に開いている。
文化1部=金潤徳部長
要するに、高銀氏は左派・進歩派の作家なので、左派団体が批判の舌鋒を鈍らせている、ダブルスタンダードだ、というのですね。右派の朝鮮日報らしい論調です。
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