犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

韓国語の肉

2009-02-21 02:38:05 | 言葉
 韓国語で「肉」を表す言葉は二つあります。一つは「コギ」,もう一つは「サル」。

「サル」については以前,このブログで書いたことがあります(→リンク)。

カルビサル」のような言い方もありますが,概して食用の肉は「コギ」,「骨と肉」のような生物学的,解剖学的な肉は「サル」を使うようです。英語のミート(食用)とフレッシュ(組織)の使い分けに似ています。日本語ではどちらも「ニク」で,言い分けませんね。

 牛,豚,鶏はソ,テジ,タク

 肉の名前はソコギ,テジコギ,タクコギ

 ソコギはときに「スェコギ」とも言われます。ただ,ウシ/ギュウのように,ソが固有語でスェが漢字語(音読み)かというとそうではない。この点は日本語と違います。たぶん「ソエコギ」(牛の肉)が縮まったものでしょう。

 またタク(にわとり)のコギ(肉)を,セコギ(鳥+肉)と言うこともない。

 では料理名になるとどうなるか。

 鶏肉を使った料理は,タッカルビ,チムタク,プルタク,タットリタン,タッコムタン,タッカンマリ…
「タッコギ」が料理名に入ることはなく,「タク」になるようです。サムゲタンは「ゲ」の部分が「鶏」の音読み。

 次に豚肉料理。テジカルビ,サムギョプサル,ポッサム,チョッパル,カムジャタン,スンデ…

 やはり「テジコギ」が料理名に入ることはない。というか,ふつうは「テジ」も料理名に入りません。思いつくのは「テジカルビ」ぐらい。

 では牛肉はどうか。
 牛肉を使った料理は,カルビ,カルビチム,プルコギ,ユッケ,カルビタン,コムタン…

「ソコギ」や「ソ」の入った料理は見当たりません。「コギ」が入った料理は,わずかに「プルコギ」のみ。

「牛肉(ソコギ)」は料理名の中では「肉(コギ)」になる,というより,「牛肉」は料理名の中では消滅するという法則が成り立ちそうです。

「カルビ」というのは「あばら骨」。通常,あばら骨の周囲の肉の部位を指します。豚や鶏は「テジカルビ」,「タッカルビ」というのに,牛の場合はたんに「カルビ」という。

「牛消滅の法則」が働いている例です。

 韓国で「コギモグロカジャ」(肉を喰いにいこう)といわれた場合,私の語感では,それが牛肉なのか豚肉(たとえばサムギョプサル)なのか,微妙なところ。ただし,サムゲタン(やポシンタン)は思い浮かびません。

 一方,韓国では魚のことも「コギ」と呼ぶこともあります。フグ鍋を食べにいって,ミナリ(せり)ではなくフグの身を追加するとき,

コギチューカヘジュセヨ(肉の追加お願いします)」

と言ったりします。

 そもそも魚は韓国語で「ムルコギ」。直訳すると「水の肉」です。ただし,ムルコギは生き物としての魚で,食べ物としての魚はセンソン/漢字で「生鮮」。この二つを言い分けるのは,韓国語独特のものです。

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2 コメント

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Unknown (某延世大留学生)
2009-02-21 13:48:00
サムギョプサル、モクサル、チマッサル、トシッサル、ハンジョンサルと部位を表すときにどうやらサルを使うようです。
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チマッサル (犬鍋)
2009-02-22 22:15:33
馬場洞にまた行きたくなりました…。
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