「人間は嘘をつく唯一の動物である」
誰が言った言葉か思い出せませんが(もしかしたらそんなことを言った人はいないかもしれませんが)、正しいように思われます。
嘘を辞書で引くと、
1)事実でないことをわざと言うこと
2)正しくないこと
(三省堂国語辞典7版)
とか、
1)有利な立場に立ったり話を面白くしたりするために、事実に反する(事実かどうか分からない)ことをあたかも事実であるかのように言うこと。
2)以前は事実であると信じられていたことが間違いであると判断された事柄
(新明解7版)
などとなっています。
どちらの辞書も、最初に「意図的に事実でないことを言うこと」、二番目に「誤り」という意味を乗せています。
動物が嘘をつくかといえば、昆虫には広く「擬態」というものが見られます。『昆虫はすごい』(丸山宗利著、2014年、光文社新書)という本には、ほんとにすごい擬態の例がたくさん紹介されています。
またカメレオンは、周囲の色に合わせて瞬時に体色を変えたりします。
しかしこれは「意思をもって嘘をついている」というより、もともとそういう体に生まれたり、自動的に体の色が変わっちゃうわけで、人間の嘘とは違うような気がします。
ゴキブリが死んだふりをしたり、鳥が巣の中の卵やヒナを守るため、自分が傷を負って飛べないふりをする「擬傷行動」をとったりするのもやはり本能にもとづく行為でしょう。
意図的な嘘をつくには、その前提として、「本当のこと」についての認識があり、あえてそれと違うことを言うわけですから、高度に抽象的な思考が必要です。また、嘘は基本的に言語で表されるわけで、言語をもつ人間のみに可能な行為のように思います。
動物行動学者のコンラート・ローレンツは、犬が嘘をつく例として、「帰ってきた飼い主に対して、誤って吠えついてしまった犬が、主人の顔を認めた後に、隣家の犬に吠えかかった例」を挙げているそうですが、これは人間の感情移入じゃないでしょうか。
元慰安婦証言に嘘が多いとよく言われます。彼女たちの「嘘」には2種類あると思います。
一つは、遠い昔の記憶で語ったことが、資料に照らすと矛盾しているような場合。先程の辞書の定義の二番目ですね。これは結果的に「事実でないことを言った」わけですから、「嘘」になりますが、本人は自分の記憶に忠実に語っているわけで、意図的に嘘をついたわけではない。人の記憶はあてにならないものですから(→リンク)。
もう一つは、明らかに意図的な嘘です。
政府から経済的な援助を受けるためには「被害者登録」をしなければならず、そのためには「被害」について語らなければならない。実際にはなかったことを言ったり、実際よりも誇張するというような場合もあるでしょう。「お金はまったくもらっていなかった」とか、「毎日何十人も相手にした」というふうに。
こうしたことも、ヒトだからこそできるのでしょう。
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バスターとか隠し玉とか。
ボークは最近は厳しくとられますが。
「擬傷行動」を読んで思い浮かべたのは、サッカーの試合でよくある「シミュレーション」。もちろん、「本能的」ではなく、嘘の部類です。
しかし、タイミングがずれると嘘がばれてペナルティになってしまいますので、常習者は「反射的」に行っているのでしょう。