今年の5月、韓国で『帝国の慰安婦』の批判本が発刊されました。
『帝国の弁護人、朴裕河に問う-帝国の嘘と慰安婦の真実』(図書出版マル)がそれです。
5月の韓国出張時、ソウルの教保文庫で買ってきました。
『帝国の慰安婦』に批判的な20人の文章を集めて1冊にしたもので、日本で出た批判本、『朝鮮人「慰安婦」と植民地支配責任』(金富子編、御茶の水書房、2015年)と似たような作り方です。
在日韓国人の金富子は、こちらの本の共著者にも名を連ねています。彼女は、朴裕河教授の刑事公判でも証言すると伝えられており、なんとしてでも朴裕河教授を社会的に抹殺したい、という執念が感じられます。
著者は以下の通り。
ソン・ジョンオプ(ソンムン大国文科教授)
キム・ヨソプ(文学評論家)
マエダ・アキラ(東京造形大学法学科教授)
キル・ユンヒョン(「ハンギョレ」東京特派員)
キム・プジャ(東京外国語大学大学院教授)
カン・ヘシン(「今日のアメリカ」ニュースアンカー)
ペリ・ピショ(国際人権弁護士)
チョン・ヨンジン(米国AOKワンコリア共同代表)
ファン・ジンミ(映画評論家)
キム・スジ(歴史小説家)
チェ・ジンソプ(「言葉+」企画委員)
チャン・ウシク(「チャンCテレビ」PD)
ヤン・ジンジャ(日本軍慰安婦問題解決全国行動共同代表)
チョ・ウィヘン(シンハン大教養学部招聘教授)
コ・ウングァンスン(女性東学ドキュメンタリー作家)
ウン・ドンギ(「韓国NGO新聞」記者)
キム・ウンソン(平和の少女像を製作した彫刻家)
イ・ジェスン(建国大法科大学院教授)
キム・チャンロク(慶北大法科大学院教授)
イ・ナヨン(中央大社会学科教授)
著者の中には、韓国人だけでなく在日コリアンや日本人もいます。肩書は、大学教授、評論家、ジャーナリスト、作家、彫刻家、映画評論家、弁護士、市民運動家などさまざま。
目次を以下に訳出します。
序文 帝国の弁護人、そして嘘(編集部)
1部 学問の自由と名誉毀損
1. 帝国の弁護人-朴裕河事件と学問の自由の問題
ソン・ジョンオプ(ソンムン大国文科教授)
2. 慰安婦問題と『帝国の慰安婦』論争という現象
キム・ギュハンの「汚い女性はいない」への反論
キム・ヨソプ(文学評論家)
3. 「慰安婦」問題と学問の暴力-植民主義とヘイトスピーチ
マエダ・アキラ(東京造形大学法学科教授)
*言葉と言葉、嘘と真実-キーワードに見る『帝国の慰安婦』論争(編集部)
2部 日本の歴史修正主義と『帝国の慰安婦』
1. 日本のリベラル知識人はなぜ朴裕河を支持するのか
キル・ユンヒョン(「ハンギョレ」東京特派員)
2. 日本の新しい歴史修正主義と『帝国の慰安婦』騒動
キム・プジャ(東京外国語大学大学院教授)
3. 日本人が慰安婦の実相を知らない理由-米国グレンデール図書館少女像公聴会参観記
カン・ヘシン(「今日のアメリカ」ニュースアンカー)
*インタビュー:ペリ・ピショ国際人権弁護士-12・28韓日「慰安婦」合意、ハイジャックされた歴史的真実 聞き手:チョン・ヨンジン(米国AOKワンコリア共同代表)
3部 映画「鬼郷」と『帝国の慰安婦』観賞法
1.『帝国の慰安婦』論議を無意味にした映画、「鬼郷」
ファン・ジンミ(映画評論家)
2.『帝国の慰安婦』は「植民地近代化論慰安婦編」
キム・スジ(歴史小説家)
3. 反民族行為と親日のはざまに立つ「帝国の慰安婦」
チェ・ジンソプ(「言葉+」企画委員)
*少女像前の大学生とともにした二泊三日
チャン・ウシク(「チャンCテレビ」PD)
4部 歴史と記憶、そして「慰安婦」
1. 日本の慰安婦支援活動家が見た朴裕河騒動-朴裕河事件と学問の自由の問題
ヤン・ジンジャ(日本軍慰安婦問題解決全国行動共同代表)
2. 歴史と記憶、そして知識人の責任
チョ・ウィヘン(シンハン大教養学部招聘教授)
3. 民族、民衆受難の目で見てこそ林が見える
コ・ウングァンスン(女性東学ドキュメンタリー小説作家)
4. 日本平和運動の二つの顔-天皇制と慰安婦問題のタブー視
ウン・ドンギ(「韓国NGO新聞」記者)
5. 記憶の闘争-朴裕河の記憶、慰安婦の記憶
カン・ドッキョン(元慰安婦)
* 今や少女像は東北アジアの平和、世界平和の象徴だ
キム・ウンソン(平和の少女像の作者)
5部 法学者とフェミニストが見た『帝国の慰安婦』
1. 感情の混乱と錯綜-慰安婦に対する誤ったふるい分け
イ・ジェスン(建国大法科大学院教授)
2.「法的責任」の理解ができない「ねじれた法のドグマ」
キム・チャンロク(慶北大法科大学院教授)
3. フェミニストの観点から見た日本軍慰安婦運動の意味
イ・ナヨン(中央大社会学科教授)
*「帝国の慰安婦」図書出版などの禁止および接近禁止仮処分決定文
*『帝国の慰安婦』騒動に対する立場
*後記-『帝国の慰安婦』の向こうの歴史修正主義が問題だ
まだ全部読んでいないので、内容についてはおいおい紹介するとして(紹介する価値があればの話ですが)、この本の表紙がおもしろい。
まずはご覧ください。→リンク
慰安婦像(平和の少女像)の写真と、「嘘」という漢字が上下に並べてデザインされています。
少女像の隣の椅子が、「嘘」という漢字の口偏の部分にあたり、少女像のほうは「嘘」のつくりの部分、すなわち「虚」という部分にあたるというふうに見えます。
デザイナーとしての工夫が見られるデザインですが、平和の少女像のメッセージ、すなわち、「日本軍に強制連行された20万人の少女」が嘘であることが象徴的に表現されてしまっています。
本のサブタイトルに「帝国の嘘と慰安婦の真実」とあるように、この本の編者が「嘘」という漢字で伝えたかったのは、日本政府の嘘、あるいはそれを代弁している(と批判されている)朴裕河教授の嘘であるはずです。
カバーの折り返しには、次のような注があります。
「表紙にある「嘘」という字は、『帝国の慰安婦』日本語版にだけある〈植民地の嘘〉、〈民族の嘘〉からとった文字だ。
ところが、装丁デザイナーがこのようなデザインをしてしまったために、慰安婦像のメッセージが嘘であるという真実が、はからずも表現されてしまったのでした。
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