今回の原発事故に見て,否応なく思い出すのがチェルノブイリ原発事故。
事故が起こった1986年,私はコリアンウォッチャーではなく,ソ連ウォッチャーでした。ある出版社に設けられた研究所で,ソ連の地域研究のまねごとをしていました。
ソ連ではその前年チェルネンコの後を受け,若手の政治局員,ゴルバチョフが書記長に就任していた。ペレストロイカ(改革)とグラスノスチ(情報公開)をスローガンに掲げていた彼を襲ったのが,チェルノブイリ原発事故でした。
この大事故を隠蔽しようとしたことが全世界から非難を浴び,ゴルバチョフはグラスノスチ路線を加速。事故は,数年後のベルリンの壁崩壊,ソ連解体への道を開いたといえなくもない。
チェルノブイリ事故の直後,日本でも原発の安全性について熱い議論が繰り広げられました。広瀬隆の『危険な話』がベストセラーになったのもそのころです。
当時言われたのが,
「チェルノブイリと日本の原発は違う。形式も違えば,安全思想も違う。日本ではチェルノブイリのようなことは絶対に起こらない」
ということ。
今回の事故が,チェルノブイリと共通点があるのか,全然ないのか,門外漢の私にはわかりません。ただわかるのは,25年前のソ連に比べ,現在の日本は,人権意識が格段に高いということです。
チェルノブイリ事故のときは,直後に大勢の軍人と労働者が,放射能についての危険性をまったく知らされないまま現場に派遣され,防護服を着けないまま,瓦礫の処理と「石棺」作りに投入されました。彼らは大量の放射能を浴び,数週間ないし数年内に,数千人が亡くなったといわれます。
それに比べ,今回の事故は,直後からテレビ中継の監視下に置かれ,世界が注視する中で事故処理が進められています。放射能の観測値は逐一発表され,枝野官房長官や東電関係者は,記者会見のたびにマスコミからつるしあげられます。情報把握の不十分さや混乱は見られるものの,現在の政府,関係者は誠実に対応していると思います。揚げ足をとるようなマスコミのつっこみは,むしろ不快感すら感じさせます。ネットで無責任な流言蜚語を飛ばすのはやめてほしいものです。
ところで会社の同僚に中国人がいるのですが,彼は地震のあった翌週以降,会社に出てこない。放射能が怖くて家を出られないというのです。彼の祖国は旧ソ連に負けず劣らない隠蔽体質。「政府の発表はすべて嘘である」が常識の国です。そして真実はネットにある。
もう日本生活が長いとはいえ,この強固な信念は抜きがたく彼の中にあるようです。だから,日本政府の発表は信じない。むしろ,海外で事情もわからないのに80キロ圏内から退避勧告だとか,東京以北は危険地帯などという無責任な発言に影響される。そしてネット上の「流言蜚語」のほうが日本国政府の発表よりも真実らしく聞こえるらしい。
ただ,日本語がよくわからない外国人の不安は,わからないでもない。新聞やテレビを見ても,専門用語混じりの説明はよくわからない。勢い,本国から発信される大げさと思える勧告に従いたくなるのでしょう。成田からは連日,日本脱出の外国人であふれています。
かつて「ソウル火の海発言」があったとき,ソウル市民はどこ吹く風だったのに,在韓日本人のは我先に日本に逃げ出し,韓国人の失笑を買ったことを思い出しました。
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「中国人が放射能に脅える皮肉」
http://www.newsweekjapan.jp/foreignpolicy/2011/03/post-241.php
コメントありがとうございます。
わが社の中国人は,やっと落ち着きを取り戻したようです。
一人帰国中の中国人がいて,本人は日本に戻りたいと思っているようですが,親戚が決死的に反対しているとのこと。
しばらく中国にとどまることになりそうです。