携帯紛失

　東京に出張した金曜日の夜、久しぶりに東京で飲みました。

　このことろ風邪をひいていて、一週間ほどお酒を飲んでいなかったためか、たいして飲んでいなかったのに酔いが回りました。

　品川を１１時に出て、山手線ですわったのがいけなかった。

　目覚めたのは夜中の１時、電車に乗ったのと同じ駅、品川でした。

（やってしまった！）

　もう埼玉に帰る電車はありません。タクシーで帰ったら、いくらとられるかわからないし、そもそも家に帰ってもだれもいないし。

　実は、妻は前日から私のマイレージを使って韓国に遊びに行き、妻以外の住人である次女は、婚約者の家に行っていて不在。残されたのは犬が一匹。

　私は犬の世話を頼まれていたのです。

（しかたがないから、娘の家に泊まらせてもらおう）

　武蔵小杉に住んでいる長女と四女に電話をしようとしました。

（携帯がない！）

　ここで重大に事実に気がつきました。

　電車の中で落としたのか、飲み屋で落としたのか。酔った頭で必死に考えますが、思い出せるはずもなく、とりあえずタクシーの行列に並びました。

　すべての連絡先は、携帯のアドレスに入れてある。もう一つもっているガラケーは、会社のものなので、仕事関係の連絡先しか入れてない。

　今の時代、携帯がなくなると、手足をもがれたようなもんです。

　そういえば、パソコンがあった。かばんの中に、個人のＰＣをもっていたことを思い出しました。

　その中にあった、電話番号リストから娘の電話番号を調べ出したのは、タクシーの中でした。

　しかし…。二人とも、まったく電話に出ない。

　夜中の二時近く、タクシー代４０００円を払って、マンションにつくと、呼び鈴を連打。

　しばらくして、寝ぼけまなことの四女が、ドアを開けてくれました。

　（助かった！）

　「こんな時間にどうしたの？」

　二人とも、仕事の疲れと部活の疲れで爆睡していたとのこと。私も、客用ふとんに倒れ込みました。

　翌朝、目が覚めて最初にとりかかったのが、携帯探し。

　（見つからなかったらどうしよう）

　携帯は、半開きのカバーに入っていて、カバーのポケットにスイカと新幹線の回数券も入っていましたから、出てこなければ大損害です。

　（飲み屋はどこだっけ）

　記憶では２軒行ったはずですが、店の名前は覚えていない。

　とりあえず品川駅に電話してみました。

　携帯の特徴を事細かに話すと、

「あ、それらしいのが届いてますね」

「中に新幹線の回数券が入っている…」

「はい、あります。それから名刺もありますよ。犬鍋さんですか」

「そうです。間違いありません！」

「お父さん、よかったね」

　そばで通話を聞いていた長女も喜んでくれました。

　携帯には、韓国の友人など、さまざまな人の連絡先が入っていて、もしなくなったら、二度と連絡できないかもしれなかったので、本当によかったです。

「ちゃんとバックアップしとかなくちゃ」

と娘から忠告されました。

　昼過ぎに家に帰り着くと、前日からえさも水も与えられていなかった愛犬が、狂喜乱舞の大騒ぎ。

　家の中は、糞尿まみれで、カーペットがほじくられていて大変なありさま。原状復帰に一時間以上かかりました。