冷麺は旨い。
けど、高い。
一般の昼食が3500ウォンだった10年前に、すでに5000ウォンでした。最近の相場は6000ウォンを越えている。そのうえミッパンチャン(ただで提供されるおかず)がほとんどない。カクトゥギぐらいしか出ない。だから私はめったに食べない。
……。
そうだ。
食べ物の話じゃなかった。漢字語ですね。
「冷」という漢字の韓国音は「レン랭」です。ところが冷麺では「ネン냉」と読む。これを頭音法則といいます。韓国語の音韻では語頭にR/L音が立たない。これはアルタイ語に共通する特徴です。日本語も古来の大和言葉はR/L音で始まる言葉がない(これをもって韓国語、日本語もアルタイ語ではないかという説もあります)。
そのため、R/L音で始まる漢字が語頭に来ると、冷のようにN音になったり(論ロン→ノン、来レ→ネ)、無音化したり(理リ→イ、林リム→イム)します。
ところが最近、「レンミョン(랭면)」という看板を掲げる冷麺屋さんがでてきました。脱北者(北朝鮮から亡命した人)のお店ですね。北朝鮮では、国家の国語政策のなかで、頭音法則廃止を打ち出し、実際に国民に強制しています。したがって、冷麺は書くときも「랭면」、発音も「raeng-myeon」。国家が言語学的法則まで恣にしてしまうのだから、大したものです、北朝鮮という国は。南式に発音する者は収容所送りという恐い噂まであります。
もともと冷麺は北部地方が本場です。冷麺屋さんに「平壌冷麺」とか「咸興冷麺」など、北朝鮮の地名を冠していることからもわかります。脱北者さんたちは、ネンミョンをレンミョンと書くことで、
俺たちは北から来たんだぞ、
本場なんだぞ、
名ばかりのネンミョンとは違うんだぞ、
と言ってるんだと思います。
ところで、このところ韓国で開かれるスポーツ大会には北の美女応援団が大挙して送られてくるのが恒例化していますが、彼女たち、国に戻ってからうっかり「南朝鮮で食べたネンミョンは美味しかった」などと、誤って「R/L」音でなく「N」で言ってしまったからでしょうか。政治収容所に送られる人が増えているそうです。
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/02/17/20060217000015.html
頭音法則のこと、すごくよくわかりました。
勉強になります~
北で랭면を食べた人の感想によると、全く噛み切れないということでしたから、きっと南냉면のはおいしかったでしょうね。(笑)