犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

収束と終息

2020-04-25 23:42:43 | 韓国の漢字語
 私の事務所には、昨年、インドネシアから現地の社員を研修生として受け入れていましたが、日本における新型コロナ感染症の感染拡大で、3月末に帰国させました。

 その後、インドネシアでも感染が拡がり、今では、感染者9000人、死者700人を越えたということです。ただ、シンガポールの研究者は、次のような見通しを発表しました。

NNA ASIA 4月29日(リンク
コロナの国内流行収束、6月初旬との予測
インドネシアにおける新型コロナウイルス感染症の流行は6月初旬にはほぼ
収束し、8月下旬には終息するとの予測をシンガポールの研究者が発表した。(後略)

 ここに二つのシュウソクという言葉が使われています。一つは収束、もう一つは終息です。

 同じ言葉に二つの漢字表記法があるのではなく、別の言葉(同音異義語)のようです。

 辞書を引いてみると…

まず、『三省堂国語辞典』第7版

終息:すっかりおわること。「戦争が終息した・ブームが終息する」
収束:しめくくりをつけること。おさまりがつくこと。「混乱が収束する・事態の収束をめざす」


もう一つ、同じ三省堂の『新明解国語辞典』第7版

終息:〔やんでほしいと思っていた混乱状態などが〕すっかり終わること。「戦火が終息した」
収束:それまでまとまらなかったものの間に次第に関連付けや歩み寄りが見られ、最後に一本化が実現する(ようにする)こと。「ストライキがようやく収束に向かった」


 新型コロナに引き寄せていえば、感染者がいなくなり、「すっかり終わる」のが終息、「毎日急増していた感染者や死亡者が減り始め、落ち着きを見せる」のが収束、となりそうです。

 韓国の新聞を調べてみました。

 韓国語では終息と収束は、音(読み方)が異なり、終息はジョンシク、収束はスソクです。

 韓国の新聞の日本語版を検索すると、どちらの言葉もヒットします。

 しかし、同じ記事の韓国語版を見てみると、終息のほうは日本語と同じジョンシク(終息)ですが、収束のほう前の言葉は、「鎮静化する」とか、「緩化する」とか、「チャンチャンヘチダ(落ち着くという意味の固有語)」など、「収束」以外の言葉が使われていることがわかりました。日本語版の記事は、翻訳者が意訳で「収束」という訳語を当てたのだと思います。

 もともと、韓国語では収束という漢字語は使われておらず、辞書にもありません。「スソク」という音(読み方)を持つ漢字語は「手続」で、日本語の「手続き」に当たり、使用頻度が高い。その言葉とぶつかるため、「収束(スソク)」という言葉が使われないのだと思われます。
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