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Brugge Style
パサージュの失われた時を求めて
昨夜、ロンドンへ帰るために乗るはずだったユーロスター最終便がキャンセルになり、パリにもう一泊することになった。
パリは思いがけずもう一泊できてラッキー! な場所だ。
今日は無事にパリを出発、今、ロンドンへ向かうユーロスター内でこれを書いている。
ロンドンへ着いたら取置きの品を引き取り、バービカンで内田光子さんとロンドン・シンフォニー・オーケストラの公演を見て帰宅、スーツケースを詰め、残りの家事を済ませ、飛行機に飛び乗って一年ぶりに日本に一時帰国...の予定。
先週から滞在していたパリ、書きたいことがたくさんありすぎる...
昨日はわたしの希望でパサージュ・デ・パノラマ内にあるイタリアンに連れて行ってもらった。
パサージュとは、パリの右岸に現在19ヶ所残る、18世紀から盛んに作られ始めた「目抜き通りとショッピング・モールと見せ物をセットにした複合アミューズメント・センター」である(以下「」は全て仏文学者、鹿島茂著『パリのパサージュ-過ぎ去った夢の痕跡』からの引用)。
鹿島先生の著書『パリのパサージュ-過ぎ去った夢の痕跡』を読んでからというもの、今はもう失われた夢の夢をよく見ている。
「パサージュには、バルザックやフロベールの生きた十九世紀という「時代」がそのままのかたちで真空パックのように封じ込められている」のである。
フランス革命後、一世を風靡したパサージュ・デ・パノラマPassage des Panoramaは現存する中でも一番古い部類だ。
鹿島先生は2008年出版のこの本の中で、パサージュ・パノラマの「うらぶれて荒廃」した様子をロマンティックに描いておられるが(そしていつか近いうちにまた賑わうのでは、と的確に予想されている)、最近はランチタイムもディナータイムにも予約の取りにくいレストランがあり、うらぶれて荒廃どころか大変賑わっているようである。慶賀。
それでもツルツルのピカピカに改装されているわけではなく、今にも落ちそうな低いガラス屋根と、ペンキのハゲた狭い通りに、つるりとした肌の若い人が鈴なりになって楽しそうにしているのはなんとも風情がある。
そしてランチタイムが終わるやガラガラになる通りは、やはりなんとなく物欲しげで物悲しい。
パサージュ・デ・パノラマとはモンマルトル大通りでつながっているパサージュ・ジュフロワPassage Jouffroyはすてきだ。
「パサージュ・ジュフロワの魅力とは、ベンヤミンのいう「集団の夢」が、フォルマリン漬けにされた標本のように、そのまま保存されているところにある」
「適度に寂れ、適度に古び、適度に賑わい、適度に繁盛し、適度に清潔で、適度に品格のあるパサージュで、ノスタルジーと購買欲をほどよく刺激するブティックが並んでいる」
入口には和食屋さんが...モデルを使って商品の撮影をしていた。
こちらのショパン・ホテル、一度内部を見てみたいなあ。
「この時代、すなわち、資本守護がまだ若く、健全だった時代、人々の見る集団の夢は、ユートピアのような未来への希望で光り輝いていた」
「その十九世紀の集団的な夢は、二重の意味でわたしたち二十一世紀人の心をうつ。一つは、それが希望に満ちた繁栄と栄華の夢であるということ。もう一つは、その夢がさして時を経たぬうちに、無惨にも破れたものであること」
それそれ。わたしはそういう場所が大好物なのだ。良い例は、神戸の旧外国人居留地。あるいは異人館街。
こちら、パサージュ・ヴェルドーPassage Verdeau。パサージュ・ジュフロワを通り抜けたところにある。
鹿島先生曰く「『落魄の味』を最上とするパサージュ・マニアには、たまらない魅力をたたえたパサージュである。通好みのパサージュ」。
「たんに過去の人々が生きた日常に出会うのではない。日常を生きながら、同時に集団的な未来の夢を見ていた人々の意識と出会うため、よけいに切ない気持ちになる」
わたしも時計の針が逆向きに動いているようなパサージュ内に出店してみたいなあ! 何屋さんをしようかなあ。やっぱり喫茶モエ? あなたなら何屋さんをする??
パサージュ・ヴェルドー内の有名古本屋、「ファルファーユ」。
「古書コレクターからは一目も二目も置かれた本屋」なのだそう。
夢の欠片が落ちている場所には古書屋や古写真屋がなくては。
失われた時を求めてといえばこの方。
このマドレーヌを見たら買わずにはいられまい。
鹿島先生の『「失われた時を求めて」の完読を求めて』でも読みながらかじろう。
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普請中、というより手術中
2019年の4月に突如として燃え上がったノートルダム大聖堂は、われわれにこの地上に永遠のものは何もないことを知らしめた。
この世の終わりか、と。
魂の抜け殻のような...
たしかに前回見た時(今年の夏)よりは工事は進んでいるようではある。
「やりなおしは可能である」というのも、きっと大切なメッセージなのだろう。
こちらでクリスマスが祝えるようになるのはいつだろうか。
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おやすみ11月のパリ
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節電ライトでツリーを飾る
まだ12月にもなっていない、しかも師でもないのに走り回っている今日この頃。
クリスマスの飾り付けはこの週末を逃したくない...集中して作業しました! 英国は電気代爆上がり中につき、節電ライトで。
夫が陽気な音楽をかけ、物置から全部出してきて、ツリーにはライトを巻き付けるところまでやってくれ、わたしは飾りつけをする担当。
毎年、飾りを少しずつ買い足してきたのだが、そういえば去年も今年も買っていない。
12月は留守にすることが多いため、数年前に生のもみの木を買うのもやめた。
シャンパンを飲みながら作業するのも(断酒中ゆえ)やめました。
毎年、ダイニング、二階の踊り場、玄関ホールの3か所に背の高いのを飾る。
娘の部屋の50センチくらいの小さいものや、キッチンの陶器製のも...リース、クリスマス・ヴィレッジ、クレシュ(降誕場面)も。
この週末は英国各地でクリスマスの点火式があり、ウィンター・ワンダーランド(冬の移動遊園地)がオープンした模様。
ロンドンのコヴェント・ガーデンの大ツリーもきれいだった。
日々、寒くなってきた。
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ディオールの素晴らしき世界展@ハロッズ
ハロッズで開催しているThe Fabulous World of Dior『ディオールの素晴らしき世界展』へ。
クリスチャン・ディオール御大の世界を、クリスマスの季節らしくジンジャービスケットで形作り展示する、という趣向。
大変裕福なブルジョア家庭で育ち、1946年にメゾンを立ち上げ、57年に逝去するまでの驚くほどの戦後の短期間に、「エレガント、幸福、平和」な女性の服飾を作った。
その影には美しく、趣味のよい母親、彼女が造園した庭や彼女が装飾したパリの邸宅、幸福な子供時代の思い出があり、彼のデザインに大きな影響を与えたとか。
グループごとにガイドがつく10分ほどの見学で、わたしが想像していた展覧会とは趣が全然違ったため拍子抜けしたが、かわいらしかった。
パリ8区モンテーニュ大通りのグローバル本部を模ったジンジャービスケットの邸宅で始まる展示。ちなみにこのお菓子の家の大きさは1.7メートルくらいかなあ。
建物の中ではシーチング生地を使って仮縫いをしたり、帽子をデザインするディオールの姿が...
これこれ、彼が生まれ(1905年)育ったノルマンディー地方のマンシュ県・グランヴィルの家の寝室で、いつかデザインする「バー・スーツ」いわゆる「ニュー・ルック」の夢を見るディオール。
吹き出しがたまらなく愛らしい。
この邸宅内では香水を調合する彼の姿が...
二階テラスの花のドレスには、香水に使った全部の花を飾ったそう。
子供時代の幸福な思い出。家族と過ごすクリスマス。
この家は現存し、ディオール博物館になっているそうで、ファッションがわたしと同じくらい、いやそれ以上に大好きな友達と一緒に見に行ってみたいな!
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