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Brugge Style
raphael
ワシントン・ナショナル・ギャラリー蔵
ロンドンのナショナル・ギャラリーでは、特別展『ラファエロ』”Raphael”が開催されている。
わたしの感想は大きく二つ。
一つ目は、ラファエロの描く、限りなく綺麗で優しく愛らしい聖母子像が、古今東西あまりにも有名なため、実は彼が「ルネサンス的な万能人」であったことが霞みがちである。
その面にあらためてスポットを当てているのがいいと思った。
ワシントン・ナショナル・ギャラリー蔵
ラファエロは37年の人生の中、25歳の時に、宮廷画家にあたる教皇庁の芸術家の地位に起用された。
加えて教皇庁の勅書起草者にも任命されている。
勅書を起草するには、ラテン語が堪能であることに加え、カトリックの教義学や、政治、法律などの専門用語にも明るい必要がある。
11歳で父親を亡くしてペルジーノの工房に徒弟奉公に入ったラファエロは、いつどこで適当な教育を受けたのか、研究者の間でもいまだに謎なのだそうである。
それだけでなく、あのサン・ピエトロ大聖堂の造営主任、建築家として八面六臂の活躍をし(バチカン宮殿内のラファエロの間のフレスコを描いただけじゃないのだ)、また貴族の邸宅の注文を受けたりもした。
さらに「古代遺物監督官」(文化財保存や発掘調査と保存など)という仕事もしていたそう。
しかも! 彼が結婚しなかったのは、枢機卿に推される口約束があったからだとかいう説も...
絵画
勅書起草
建築
文化財研究・保護
枢機卿に推されたかも...
親方ペルジーノに倣って、早くから工房に分業制を取り入れ多くの人を使って仕事をしてはいたが、ルネサンス期の万能人という名に恥じない全方向的な才能、どこまで天才だったのか、という感じである。
また、彼が支配階級と常に懇意で贔屓にされたのは、社交的で知的で穏やかな性格だったからだとか、その押し出しの良さは王侯のようであったとか...
一般的に、彼が亡くなった1520年をもってルネサンスの終わりとするのだから、ここまで神様に愛されたなら夭折もするわな、という感じすらする。合掌。
ヴェッキオ宮殿の「500人大広間」に『アンギアーリの戦い』を描き始めたレオナルドと、
『カッシーナの戦い』を描き始めたミケランジャロ(両方とも未完)
を意識してラファエロが描いたと考えられている『ペルージャ包囲』。
二つ目は、ラファエロの成功の秘密のひとつとして、ミケランジャロやレオナルドらの革新のキモを素早く取り入れ、真似だけで終わらせず自分のスタイルとして昇華させた器用な面がある。それを素描や習作をまじえてたくさん紹介していたところがよかった。
こちらの素描をご覧ください、どこからどう見ても、誰でも知っている、あの巨匠によるあの作品のメモである。
(1504−5年ごろ描かれたもので、1503年にはレオナルドがリザ・ジョコンドを描いているという証言あり)
おそらくラファエロは、実際にレオナルドが製作中なのを見、後から思い出しながら描いたのであろう。
想像しただけでゾクゾクする。
「こののち、ラファエッロはこの「上半身」で「手を前で合わせる」「坐像」で、やや斜め前を向く「4分の3正面観」を肖像画の基本とする。完成作が極端に少ないレオナルドに代わって、ラファエッロは夥しい数の肖像画をこの定型にそって描き、彼自身がその後「美の規範(カノン)」とみなされていくのにともなって、それが西洋美術の肖像画の定型ともなっていった。すべては、フィレンツェで観たであろう、<ラ・ジョコンダ>が始まりだったのである。」西岡文彦著『謎解き モナ・リザ 見方の極意 名画の理由』
それが晩年(と言っても彼の場合は40前なのだ)『バルダッサーレ・カスティリオーネの肖像』と結実する。
普段はルーヴルにある、わたしがラファエロ作品の中でも特に好きな一枚だ。
「画家を志しフィレンツェに上った若きラファエロは、その目で見た『モナ・リザ』の画境を、生涯にわたって求め続けている。
が、多くの女性肖像画で『モナ・リザ』を模倣しつつも、その画境に到達することは不可能と、断念したかに見えた晩年のこの中年の男性像において、『モナ・リザ』の比類なき画境に、唯一、迫り得る絵画を書き出しているのである。
『モナ・リザ』とは似ても似つかぬ髭面の男性像ながら、ラファエロのダ・ヴィンチへの憧れを結晶させて、これほど胸を打つ作品はない。」
「その表情には、喜悦と哀愁、老いと若さ、男性的な成熟と女性的な清廉が共存し、『モナ・リザ』にも似た「はかりがたき」肖像画となっている。」(同上)
カスティリオーネはその著書『廷臣論』の中で「普遍人」を目指し、ラファエロは絵画の中で「普遍人」を目指した。
わたしがこの絵を好む理由は、この絵を眺めるたびに、なぜだか『徒然草』の最終段、第二百四十三段「八歳になった時、父に質問して...」を思い出すからだ。
立派になった男性の中に、子供の頃の彼自身が透けて見えるような気がする。あるいは、今はもう亡き父親の年齢を、自分がいつの間にか超えてしまったことに対する驚きや諦観、諧謔まで感じる。
すばらしい絵だ。
こちらはラファエロの自画像。展覧会にも来ていたが、撮影禁止だったので、こちらはお正月にフィレンツェで撮影したものである。
参考:『ルネサンス 三巨匠の物語 万能・巨人・天才の軌跡』 池上英洋著
『謎解き モナ・リザ 見方の極意 名画の理由』 西岡文彦著
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ライラック・フェアリー
バレエ『眠れる森の美女』で、圧倒的な善であり、世界の秩序を保つ、狂言回し的な役割のリラの妖精。
(個人的には、リラの精は、悪玉カラボスと同一人物で、自然のサイクルの持つ「生と死」の2つの顔のうちのひとつを表すと考えている)
今年もキッチンの側の西の庭に満開、えもいえぬ香りを放っている。
全部切って大きな花瓶に豪快に活けたいが、気の毒で無理!
お天気最高。
ライラックが終わると、イングランド南部地方では5月、藤、薔薇、芍薬と王者のような花が次々と咲く。
そしてその花は嵐も連れてくる...
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frederick ashtonの魅力
ロイヤル・バレエのFrederick Ashton3本立てを2日連続で。
フレデリック・アシュトン作品には、とても好きなものと特にそうでもないものがあるが、この3本はどれもとても好きだ。
Scènes de balletとRhapsodyは、数学的な美しさ、古代ギリシャ的な普遍的な美しさの探求がたまらない。
幾何学的なフォーメーションの美しさや、音楽のリズムのカウントの難しさと相まって、また計算づくの衣装が癖になる。繰り返し何回も見たくなる。
Scènes de balletは、Insightのリハーサルを見学していたので、普段よりもさらに楽しめた。
こちらでも見られます。美しいのでぜひぜひ!!
フレデリック・アシュトンはストラヴィンスキーのこの音楽を聴いて、すぐに着想したそうである。彼の好んだ『眠れる森の美女』のローズ・アダージオへのオマージュが組み込まれていたり...プリンシパルの美しい動きに目が覚める。
Rhapsodyは、エリザベス女王の母である王太后の80歳の誕生日に献呈された作品で、かのバリシニコフが踊るために振り付けられた。
ラフマニノフの奏でるラプソディの音ひとつひとつを拾い上げて可視化したらこういう動きになるのか...という驚き(当然、超絶難しい踊り)と、コミカルさのバランスが快感にさえなる。
Cesar CorralesやMarcelino Sambéの良さがよくわかる踊りで、高度な技をさらっとやってのけるところが、コミカルなポイントを冴え冴えと引き立てていた。
A Month in the Countryは、はツルゲーネフの同戯曲を主材にしている。
ショパンの『アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ』を効果的に使い、魔法使いも妖精も出てこない、筋だけならば「平凡なよくある」ハナシだが、40分の間に田舎の居間の中で起こる人間模様の凝縮といったら。さすがツルゲーネフ、さすがアシュトン。
Marianela NuñezとMatthew Ballの間のケミストリーがすごかったです。
Natalia Osipovaも演技が自然ですばらしかった。「うつろいゆく時」とか「指の間からこぼれ落ちる束の間」、そういううものの表現がすばらしい。
マニエリスム色のない美しさ、もう一回見に行きたいな...
Scènes de ballet
Fumi Kaneko, Reece Clarke
A Month in the Country
Natalia Osipova, William Bracewell
Rhapsody
Francesca Hayward, Cesar Corrales
...
Scènes de ballet
Sarah Lamb, Vadim Muntagirov
A Month in the Country
Marianela Nuñez, Matthew Ball
Rhapsody
Francesca Hayward, Marcelino Sambé
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コヴェント・ガーデンで眠れば
2日連続でロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスでバレエを鑑賞するのは、わたしにとっては全く珍しいことではないが、夫が出張でマドリッドへ行ってしまったため、わたしはロンドンに泊まることにした。
ロイヤル・オペラ・ハウスの正面玄関真向かいに去年オープンしたホテルに宿泊。
ホテルの玄関を出て道路向こうはオペラハウスという、オペラハウスで夢を見たあと、覚めないためにあるホテル。
心も身体ともに高揚して、頭の中では音楽が鳴り続け、自分の歩調がバレエの動きになったかのように感じつつ(笑)、充実したまま眠りにつく。
まさにオーストリアのホテル・ザッハー(国立歌劇場前)や、インペリアル(楽友会館前)のようなロケーション。
わたしにとっての天国。
天国とは人の数だけあるのだろう。
ただ、レストランも客室もかわいらしいのはかわいらしいし、フォトジェニックだし、ロンドン風なおしゃれではあるが、ザッハーやインペリアルに比べたらかなり格は落ちる。
食事もロンドンの一般的なレベル。もうこれはしょうがないと思うしかない。
バーもかわいい。
ロビーのエリアもかわいい。
2日連続で見たのはフレデリック・アシュトンの3本立て。
Scènes de ballet
A Month in the Country
Rhapsody
3作品とも、音楽を含めて振り付けもセットも大好きだ。
ストラヴィンスキー、ショパン、ラフマニノフ。
ラフマニノフの Rhapsody on a Theme of Paganini が繰り出す音の一つ一つを身体の動きで可視化したらこうなるのね...
バレエの感想はまた明日改めて書こう(自分のための覚え書き)。
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檸檬色のイースター
2022年の復活祭。
今年は復活祭に多用される色、レモン色をテーマにしてみた。
レモンは復活の象徴である卵に形が似ているし...
夕食前はバタバタになるので、料理を始めるずっと前、午前中にセッティングをする。
去年、庭のプランターに植えた食用パンジーが好きに種を飛ばし、今年は石畳の割れ目のあちこちに可愛らしい花を勝手きままに咲かせているのを、少しだけもらった。
レモンケーキも焼いた。
レモンケーキの型は、欧州ではなかなか見つからなかったのだが、先日、調理用品専門店で廃盤につき割引! に巡り合い、飛びついたもの。
レモンケーキのコーティングはレモン風味のホワイトチョコレートに挑戦...
しかし、チョコレートって酸(レモン汁)で化学反応を起こし、一瞬で固まるんですね!
グラスオー(粉砂糖をレモン汁で溶いたもの)のようにガラス状にはできなかったものの、味は非常によい。と、手前味噌。
レモンの香りと味、色も形も大好き。
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