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旅から旅へ




時々、ブログを読んでくださる方とお会いする機会がある。

わたしは楽しいことは絶対に延期しない派なので、声をかけてくださる場合は必ず対応する。これ以上の名誉ってないもの。ありがたいことである。


先日も言われたばかりなのだが、必ず言われるのが「ほんとうにしょっちゅうご旅行されてますね」。


うん、旅行大好き。

趣味は何かとたずねられたら、速攻で「旅行」と答える。

ヘミングウェイはこう言った。

“you can't get away from yourself by moving from one place to another.”
― Ernest Hemingway, The Sun Also Rises

「あちこち旅しても、自分自身から逃れられるわけではない」

彼自身旅行しまくりだったので、自虐半分に違いない。

わたしは自分自身の何から逃れようとしているのだろう...

まあいいや。



あちこち旅行していることの伝で、「準備が大変そう」とよく言われる。
たしかに洗濯物は大変だが、旅行が続く場合は旅先で洗濯物を出してしまうこともあり、準備は大変だと思ったことがない(それに旅の醍醐味は準備期間にある!)

理由の一つは旅行用の品を整頓したコーナーを持っているからだ。
そのコーナーには...

わたし自身が人のこういう話を聞くのが好きなので、話はまた長くなるが、何を備えているか書こうと思う。


......


スーツケースと同じ素材の独立したバニティー・ケースを持っていかないときのための、ナイロン製のバニティー・ケース

外したジュエリーやサングラスを入れる、サイド・テーブルに置く組み立て式皮革製トレイ

チャージャーとアダプターを専用ケースに

空港で手荷物のリキッドを入れるための透明のバッグ(なしでは生きられないコンタクトレンズの予備は常に入っている)

ジュエリー・ケース

エルメスのスカーフ(これは風呂敷になったり、クロゼットの敷物になったり、帽子に巻いたりする。旅先でオープンカーに乗るときは必需品)

部屋着

常備薬と除菌スプレー

旅行用ルームキャンドル(必須)

ジップロック(ジップロック大好き!)

靴のための布製の袋

洗濯物入れ

衣類を分類するかなり大きい布製のポーチ

スリッパとビーサン

水着とカフタン

旅行用財布(貨幣別にできるのは何かと便利)


ちなみに色目を揃えるようにしていて、グレー、ベージュ、白、黒、カーキー、金色。好きなアイテムであるタッセルをいろいろなものに付けている。

わたしの場合はこういう範囲で用意しておけば、準備も服と靴などを選ぶだけで済むし、忘れ物も避けられる。


最近、導入してよかったのはなんといってもチャージャーとアダプターの専用袋だ。
今までは夫任せにしたり、最後の最後に「ま、なしですませよう...」と無視して旅先で後悔したものだったが、専用袋とあればめんどくさがりのわたしも対応できる(というか入れっぱなし)。ネットで買って名前も入れてもらった。


ちなみにパスポートケースは使わない派です。
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anastasia




劇場シーズン、始まっています。


先日、英国ロイヤル・バレエのリハーサル「アナスタシア」を見た。


ロマノフ朝最後の皇帝ニコライ2世の四女アナスタシアが、ロシア2月革命によって17歳で処刑されるまでの話と、アナスタシア詐称者の一人アンナ・アンダーソンの話がベースになっている。


若くして非業の死を遂げた高貴な人物には、例えばマリー・アントワネットの息子のルイ17世だとか、「なりすまし」...がつきものだ。「実は私こそがあのとき死んだとされたアナスタシアです」みたいな王族詐称者が。

これは山師が財産や地位を狙ってという理由もあるだろうが、誇大妄想などの精神を病んだ人が選び取りやすい人物像であるからなのかもしれない。
精神病院にはキリストやナポレオンが大勢いる...というのは有名な話だ。

ところで、われこそが17歳で処刑されたアナスタシアだと名乗り出た女性の数はなんと1920−30年代までに30人(ウィキペディアのアンナ・アンダーソンの項より)もいたそうですよ。
まあ、ロマノフ朝最後の大公女、革命のドサクサ...人を惹きつける要素たっぷりですよね。



マクミランのこのバレエは、アナスタシアを名乗り出た女性の一人、アンナ・アンダーソンがほんものの大公女だったのかどうかではなく(科学的に完全に否定されているそうだ)、「アイデンティティを失った人間はどうなるのか」というテーマで描かれている。


わたしはこの作品を見たのは始めてだった。
リハーサルとはいえ、なにか全体的に間が悪い(マクミランの死後に彼の妻らが別のアクトを組み入れたからか)と感じたが、実際に間の悪い時代だったのだろうし、なにはともあれ、アナスタシアとアナスタシアを名乗るアンナ・アンダーソンを演じたローレン・カスバートソンの舞踏と表現力はすばらしかった。
ブラボー、ローレン!

皇帝のお気に入りバレリーナを演じたサラ・ラムもすばらしかった。もっと見たかったぞ...



古典バレエのテーマというのは、わたしの考えでは(このブログにも何度も考察を書いている)こうだ。

子供は通過儀礼を経て大人にならなければならない。共同体の存続のために。

昔話がなんどもなんども子供に説くのはただこの繰り返し、同工異曲だと思う。
理由は簡単、人間が人間として存続するために最も大切なことがらだからだ。


これらお話の「子供」は、たいてい王子様だ。
王子様は大人になるためにある種の試練、それは決断だったり、冒険だったり...つまり通過儀礼を受ける。
彼の恋愛相手の美しい女性は彼に裏切られ、彼を大人にするだけのために登場する。


一方で、現代の全幕もののバレエのテーマは、昨今は社会自体が安定し、多くの子供が大人になる前に長いモラトリアム期を過ごせるようになった...からか、「うまく大人になれずに精神を病む子供」が語られる傾向がある気がする。

ある時点から、バレエの主人公を精神病にしてしまった例としては、マチュー・ボーンの「白鳥の湖」やベルリン・バレエの「白鳥の湖」(<わたしはこのプロットがかなり好きだ)がある。

以前は、うまく大人になれず悩んでいる子供(王子様)が、美しい女性の手を借りて(死なせて)なんとか通過儀礼を受け、とうとう大人になる...というのだったのに、現代版では、子供らは誰の手助けを借りようが、どうしても大人になれず、アイデンティティを確立できずに精神を病んでしまう...のである。

テーマは古典のオリジナルも現代ものも同一で、「共同体維持にためには子供はいつか大人にならねばならない(特に王子様みたいに地位のある子供は)」だと思う(しつこい)。


アイデンティティというのは「これ、ほら」と取り出せるような形のあるものではない。
多くの自己実現セオリーや本当の自分探しに熱中している人が勘違いしていると思うが、アイデンティティは簡単にいえば関係性である。

関係性がうまく築けなかったら...
アナスタシアは生き延びていたとしても病んだ人物になったのかもしれない。
父親である皇帝には愛人としてのバレリーナがいるし、怪僧ラスプーチンの影響からは逃れられないし、家族全員処刑されるしで。
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fin de sieclen








(タイトル siecle最初のeにアクサン)

娘、近々のランチ・タイム・コンサートで弾くために、プーランクの「メランコリー」を比較的短い時間で習得することになっており、今週はこちらを猛練習中。

先週のブリュッセル滞在中には、近現代の難しさを16歳の子供が理解する手助けになるかと、「世紀末美術館」でベルギー象徴派などの作品を鑑賞した。

インスピレーションになったらいいなあ...


もちろんそんな下心はなくとも、世紀末美術館は素敵だ。
クノップフの有名な「愛撫」を見るだけでも。

クノップフは特に好みというわけではないのだが、こういったものの捉え方や表現の仕方(特にブルージュのメランコリー)があるということは敬愛する。



ところで、たぶんこういう、さりげないつもりでいかにも押し付けがましいわたしの性格が、娘がわたしに微妙な反感を持つところなのだと思う。普段は全く表面化しないけど。昨日丸一日をピアノの先生宅で過ごした帰りに、先生も母親もコントロール・フリークだと評されたの。あ、そう言われるのは全然初めてじゃないです。

ロイヤル・アカデミーでもアンソール展が始まるので、こちらにも連れて行くつもりだ。
どなたかもっとよい導き方(導くなど思い上がっている風なのがよくないのか)をご教示願えませんか。
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mayo, made in belgium








今回もベルギーで大量にして帰った食料品の買い出しの中で

初めて買って大ヒットだったのが

こちらのマヨネーズ。

ベルギー人の味覚にも、ベルギー生活が長かった日本人の味覚にも相当訴えた。


マヨネーズはベルギー人にとっての醤油のようなもので
連中は何にでもかけるし、おそらくなしでは1日たりとも生き延びられないのだと思う。


ブルージュのWollestraaにある特産品土産物屋2beにも売っているようなので

日本へ帰られてからベルギーの味がなつかしくなったら
ポテトフライやサラダや肉、とにかくこちらをかけてみてはいかが。
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勉強代は高くつく。天使にも人間にも。







ブリュッセルの話続きます。


ブリュッセル王立美術館蔵「叛逆天使の墜落」ブリューゲル(父)1562年の作品。一部。

ブリューゲル(父)、大大大っ好き。

神に最も愛された大天使ルシファー、神よりも自分の方が優れているのではないかという慢心から、あるいは神の関心が人間に移り「大天使は今後は人間に仕えるよう」強制された嫉妬心からか、叛逆を企てる。

この場面は、ルシファー率いる「叛逆天使」軍団を、中央の大天使ミカエル率いる善軍が撃ち、叛逆天使らは醜い姿に変わりながらどこまでも堕ちてゆくところ。

ちなみにルシファーは「地獄」にあって、地獄とはすなわち「愛するものの不在」(つまり神の不在の意)だと言った。なんという悲哀。


......



久しぶりに会う友人と上機嫌でランチをした後のこと。
雨上がりの太陽で緑が濃く(秋に緑が濃いというのも相当変だが)、聖堂と、その方向にすっと伸びる道路がこれまた雨に濡れて黒く輝いて見え、思い出し笑いなどをしてウキウキだったからか、

うっかりスピードを出しすぎて違反で捕まるの巻。

反社会的行為、猛反省中ですよ、ほんとにもう...懺悔。


ブリュッセル市内の道や交通事情を、英国に引っ越して5年経った今でも覚えているということがちょっと得意で調子に乗ってしまったのだ。

が、そうそう、ここはどう見ても70キロ制限速度タイプの道なのに、なぜか50キロで悪名高い、死屍累累、反則金稼ぎスポットだったよ...

大天使ミカエル軍は、違反を減らすためにではなく、違反を増やすために取り締まりをしている。

分かりやすい標識を設置するよりも、茂みに隠れてカメラを構えるために選ばれたトラップ・スポットで。


現金を持っていないと告げたら、かっこいい白バイ2台(<ブルージュの方では”白鳥”とあだ名されている警察の花)に先導されて銀行へ現金をおろしに行かされた。
まるでVIP。
道ゆく人の好奇の目がわたくしの車に注がれる。絶対に王族だと思われているよ...

しかしなんなんですな、白バイってそんな用事でも赤信号も反対車線もバンバン通行止めにするんですね!
わたしが銀行にいる間、お菓子とジュース買いに行ってたけどねえ...


この罰金、ポンド暴落で財布の紐をかたくしたばかりの身にはかなり堪えた。

先日も書いたが、ロッシの靴が、ロンドンで買ったほうが50ポンドも安かった! と分かってショックを受けた矢先だったの...

身にこたえないと罰金の意味はありませんがね。
醜い姿に変えられ、どこまでも落ちたルシファーもさすがに反省したでしょうな。


大天使ミカエル、わたしに領収書を差し出しながら「どうもありがとうございます。良い一日をね!」ちゃうっちゅーねん。

善軍天使はおまわりさんはみな恭しく、とがめられているのは誰かと勘違いするほどだった。

今日から英国でもまた注意して安全運転に努めよう。

みなさまもどうぞお気をつけて安全運転で。
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