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Brugge Style
夜間飛行
夫がキエフと首長国連邦に出張。
出発前夜からブラッセルの空港前ホテルに宿泊するというので付き合う。
深夜の都会のホテルが大好き...けど深夜の空港ホテルもええもんですな。
古びていて、行き届いてもいないホテルだが、夜の光が漏れる空港のそばというロケーションはホテルの七難を隠す。
空港の借景
ロビーにある電光掲示板の飛行機の到着/出発時間
始終出入りのある正面玄関
上階の閉鎖的なラウンジ
粛々と掃除をするスタッフ
早朝出発者のために用意されたコーヒーやペイストリーをかっさらっていくスーツ姿のビジネスマン
空港も、ホテルも、(美術館と図書館も入れようかな)日中の様子は何ということはなく、努めて「普通です」というような顔をしているが、夜半を過ぎると急に本性(?)が滲みだしてきて幻惑的になると思う。
誰も定住することのない一時通過地点であり、他の時間と他の空間で定められたちょっと不安定な点のような場所だからだろうか。無理のあるたとえだけど、大変好ましい場所だ。
半寝で夫を送り出し
夜間飛行はジョイと共に母の愛用の香水だった
などと思いながら滑走路のある辺りを眺めた。
わたしもいつか夜間飛行の似合うようになるだろうかと少女の時分には思っていた。
今はまだなんとも季節に合わないクリードの春の花なんかをつけている。
vol de nuit
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天使さん
今夜、娘の通う学校でクリスマスマーケット(バザー)があった。
ホットドッグスタンドなどの食べ物屋台、本屋さん、雑貨屋さん、子どもの手作りのキャンドルなどなど
屋外の極寒の中で1時間も立ちっぱなしで天使に扮した子どもたちによる演奏と朗読を鑑賞した。
何週間も前から練習していたのに、楽器にアンプがないため、天使さんたちの演奏は、人々の笑いさざめきと走り回る子どもたちの叫び声にかき消されてしまった。残念。
うむ、本物の天使たちの仕事とその運命のようだな。
神(=振動、光)の円心から遠く離れた物質化した世界に住むわれわれに伝道するにはアンプが必要ということか。
身体のしんから冷えた。
帰宅して食べたクリームシチューが夢のように美味かった。
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ブランドの倫理と資本主義の精神
ウェーバーのパクリのものすごいタイトルですが、見かけ倒しです。内容はないです。そうです、多くのブランドと同じです(笑)。
クルーズラインのカタログの配達が終わったと思ったら、今度はクリスマスカタログの配達が始まった。
グッチのクリスマスカタログをぱらぱらっとめくると、ヴェルサーチの世界に迷い込んだかのようだった。最近のグッチに多い金色のエンブレムみたいなやつ、ヴェルサーチの金色メドゥーサにそっくりなのだもの。
...グッチはバンブーあたりでいいのに、いつからこんなに商品展開が広がったのだったっけ?広がったのはいいけれど、ブランドが飛ばし始めたトム・フォードの時の方が洗練されてたような...気がするだけか?
あからさまになった。
生き残りをかけて時代に合ったデザインと販売戦略で日進月歩、というところか。
グッチグループのメインプレイヤーだもんねえ。
高級服飾雑貨品を扱う欧米のブランド。
ぱっと考えて、有名ブランドの大きな柱はカバン類と既製服だろう。
そのような有名ブランド、今のところ独立を保っているのはエルメスとシャネルだけというのは周知の事実で、その他はヴィトンもプラダもわたしの好きなボッティガ・ベネタも、その他いくらでも出てくるけど、どこもグループ傘下に入っている。
正確にいつ頃からかは知らないが、昨今ではブランドが有名になり、ある程度安定すると、経営のプロのビジネスマンが介入するようになったようだ。この場合、巨大傘下に入ることだ。
原材料や販売路や後継者の確保や、生産管理や資金繰り、あるいは名誉欲や金銭欲など、傘下に入る理由はさまざまなのだろう。
傘下に入るとブランドのスタンスは素人から見てもはっきり変わる。
まず、取り扱い商品の種類が倍々で増え、広告がド派手になり、都心に店舗が増えたかと思えば、ずっとあった店が消えたりする。
効率化。
すべての装置は売り上げをあげるために。
経営者は消費者には分からないと思っているのかもしれないけれど、例えば外国資本傘下に入ったベルギーのショコラティエ2店は、ある日を境にその味も店の雰囲気も明らかに変わった。同じように某ブランドのカバンはわたしの母が持っていた頃や、わたしが若かった頃とは全く質も雰囲気も違う。
どこが変わった?と聞かれても、まさに「ライセンスものちっくな大量生産/工場生産の香りがする」としか言えない「なんとなくさ」なのだが、強いて言い替えれば、モノから「身体感」がなくなった、という感じ。
回転寿司を食べているような味気ない感じ。
「身体感」...どこかで誰か生身の人間がその人の時間を使って作っている、というはっきりした手応えのようなもの。ブランドものの記号性を実体化する、地に足着いた専門家の仕事。
それがブランドのブランドたるゆえんなのに、大量生産ものからは「身体感」が消えていると思う
(断っておくけれど、わたしは「人間味」や「手作り」万歳派ではない)。
その点、同じブランドでも既製服はまだアルティザンの香りがする。素人でも服をひっくり返してみたら一目瞭然だ。
このことから、わたしは、ブランドはその収益の大部分をカバン類であげていると見ている。...まあ、そんなことに気がついてもしょうがないけど。
...流行の分析をし、流行をしかけ、広告に超有名女優を起用し、消費者にはコストを抑えた大量生産ものをできるだけ多く売る(余談。某ブランドのバッグにはフランス製とかイタリア製と記載してあるが、実は完成までのほとんどの行程が某国で制作されている)、などという「バタバタ忙しい」こととは超越したところ、つまりいささか時代遅れであるが、時代の波に洗われても古びないようなところに超有名ブランドの立ち位置があったのではないのか...と、消費者としては思うのである。でもまあ売れなきゃ元も子もないのか。そういうことか。
かなり単純化した図式だが、デザイナーと職人が自分の技術と才能を世間に示すような形で(外化とか対象化)モノが作られていた時代から、流行のサイクルができるだけ早いものをできるだけ利益が上がるように生産し販売するという時代への移行は完了したようだ。
もちろん後期資本主義社会においてこのベクトルの向きは資本主義的には完璧に正しいわけだが、今後はどうなるのだろう。
経済ドン詰まりのこの時代、ブランドものを作る大会社は昔の頑固一徹スタンスにちょっとだけ回帰してもいいんじゃないか、と思ったりする。
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北のヴェニス
ベルギーのアルマーニ
ベルギーのエルメス
北のヴェニス
北海のコートダジュール
小パリ
世界の小澤(あるいは黒澤)
他にもありそうだが、いったいこれらの形容は誉め言葉なのだろうか?
おそらく言い出した人は誉め言葉のつもりだったのだろう。揶揄ではないと思われる。
比較的知られていない分かりにくいものを説明する時に、誰でもよく知っているイメージの良いものの名前を使って分かりやすく表現しているつもり(でも夜郎自大にしか聞こえない)、と考えるとやっぱり宣伝文句ですよね?
が、ナタンもデルボーも「ベルギーのアルマーニ」とか「ベルギーのエルメス」などとは自分では絶対こう言わないだろうし、余人をもって代え難い一流のものであればあるほどうれしくないはずだ。
世界の...って言えば言うほど小さい(笑)。
あのゴダールも尊敬してやまない小津監督
あのゴッホも影響を受けた日本の浮世絵
などと言うのと同じで非常に失礼ではあるまいか。
外国から評価されたから、すでに名高いものと並列されたから、じゃ自信を持ってもいいんですね?という態度でなくてもいいのに、と思う。
まあ、そこが日本やベルギーのよさを醸し出すちょっと卑屈なところのかもしれないけれど。
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いつの間にか
現在、ある講座を受けている。
受講者は全員日本人で、8割が男性。学生にかえったようで楽しい。
クラスが終了して建物の外に出ると「あ、そうやここは外国で、わたしはもう学生とちゃうんや」と引き戻される。
わたしが了解する時間/空間には整合性はなく、かなりその場その場次第であるということが分かる。
で、本題...
先日、休憩時間に雑談中、ある方が
「出張で飛行機に乗っていたら..」というお話を始められ、はっとした。
と言うのは、講義中は、4月にクラス替えがあったばかりの中学生のような初々しいわれわれが、実はすでに立派な大人であるということを(忘れていた訳ではないが)思い出したからだ。
受講者の方々は、実社会では責任あるお仕事をなさっていて、しかも今後増々ご出世なさるような大人ばかりだ。でも講義中はそのお顔に少年少女のころの面影が伺え(なんせわれわれは超受け身で、先生の質問に対して一所懸命答えようとしているのだから)、倒錯した(だって子どもの頃に本当に机を並べた訳ではない)なつかしさを感じてしまうのだ。
だからこの方が「出張で飛行機に乗っていたら..」とおっしゃった時、くりくりした中学生の男の子がまるで「お仕事シュミレーション」か「おままごと」の中でビジネスマン役をやっているような気がしたのと同時に、「われわれはいつの間にか大人である」という現実がそこに一直線に交差し、妙に楽しくおかしい気持ちになったのだ。
わけわかんないですね...
でも、わたしにとっては新鮮でしかもなつかしい瞬間だったんです。
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