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店は世につれ、世は店につれ



新しいRockFort のオーナー・シェフによる料理。
スイカのマリネと牛肉のタルタルの組み合わせ。
季節を料理でも先取りする日本人からすると「まだ夏仕様?」だが
お互いが引き立て合い、非常に美味なり。


ちょうど1年ほど前のことだ。

ブルージュに13年間住んでいたときの馴染みのレストランのひとつ Rock Fortが、惜しまれつつ事業売却するというので、英国からかけつけ、二夜連続で最後の食事をさせてもらった。

地元の人に大変な人気店だったので、最後はお祭りのような賑わいだった。



前菜の前に複数のアミューズが出る店が好き。
魚専門店だけあって、新RockFort は魚の骨がシンボル。


そのときに元のオーナーから、新装開店する買収者はブルージュの外港Zeebrugge でシーフードのレストランをしている若いカップルとは聞いていた。


先月、その隣のレストラン(Zet'joe) に行ったものの、そういえばRock Fort がどうなっているかチェックするのをすっかり忘れていた。

ちょうど一年が経過、新しいレストランも波に乗り始めたのではないかと、夕食へ。


店内はオープン・キッチンを含め、ほとんど内装は変わっていない。

若いマダムの気持ちのいいサーヴィスと、非常に繊細な料理...
この料理は誰かの料理を思い出させる。
そうだ、以前、ロンドンのCralidge's に入っていた、Fera の料理。大ファンだったのになあ!

彼女から、「ブルージュにお住まいですか?」と聞かれ、夫が前のRock Fort の創業からの馴染みの客だったということを話すと、とても喜んでくれた。これからは私たちをよろしくお願いします、と。




食事中、夫と話をした。

1998年にわたしはブルージュへ来、馴染みになった店の中で、今まで残っている店がどのくらいあるかという話。
オーナーは同じで場所だけ移転した店、オーナーだけが変わった店、完全になくなってしまった店、そして今も同じ場所で頑張っている店...


ブルージュの街自体はそれこそ15世紀ごろの街並みをよく残している。
特に通りの名前はその時から全く変わっていない。
しかし、当然、店はどんどん移り変わる。




近所の肉屋、有機野菜の店、幼かった娘を特別に可愛がってくれた本屋やパン屋や魚屋、記念日には必ず行ったレストラン、娘が好きだったおもちゃ屋、趣味の良い子供靴屋、セレクトショップ、ほとんど毎日通ったバア...

ブルージュに住んでいると旧市街の中で日常はすべては事足りる。
しかも、外食文化が盛んで、観光客がものすごく多いブルージュだが、人気店はローカルのほうが圧倒的に多い。
わたしはブルージュのこの外食文化を愛した。


そしてわたしたちも英国へ引っ越し、この街から消えた。

何年後か、何十年後かには、わたしたちもこの世から消える。

それでもブルージュは15世紀の街並みを残したまま、「ここには昔なにがあったか」誰も覚えていない新しい店を抱き続けるのだろう、と。
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2024夏 ブルージュのレストラン




今月行ったレストランの中から紹介します...

やはりこのトピックに関してのご質問が一番多いので。


Zet'Joe
ミシュラン三ツ星のメゾンとして名を馳せたDe Karmelieteのシェフが、「体力的に三ツ星を維持するのは困難」と、規模を縮小して再出発した店である。

壁のアートも、カトラリー類も、カルメリート時代のものを使っている。
メートル・ドットも同じ方である。わたしのイタリア語とかスペイン語程度の日本語を話す。

一番上の写真は前菜、ラングスティン(手長海老)、茄子、フォワグラ、えのき...
この上に熱々のスープを少々注ぐ。




前菜の前に何品もアミューズが出てくるのが好き。

こちらはフランダースやオランダでよく食べるニシンの酢漬けとビーツ。絶妙。

おしゃべりに夢中で、他には写真がないが、店内も素敵です。




こちらはブルージュの旧市街から車で18分ほど、ZedelgamのLoppemにあるBar Bulot。

名前はバーだが、レストランである。

すぐ上の写真は、自前の農場産のステーキ、二人前。

おもしろいのはこのステーキに「(日本語で)Be-ru-gi ベルギー」という名前がついているところ。

決して揶揄しているわけではなく、エキゾティック感や、特別感...に訴えているのだと思う。

そういえば、昔ブルージュには日本語の発音で「チョコレート」というショコラティエがあった。




ほら、メニューに"Be ru gi"(日本語でBelgiumのことをベルギーと言います)と、書いてある。
そんなにおもしろいか(笑)? 

特に、和牛というわけでもないし...
ただ、とても美味しいソースには、香り高い山椒が使われている。

ウェイター氏に「わたくしは日本人なので完璧な発音でオーダーいたします。ベルギー! お願いします」といつも言っている(サムい中年である)。




農家の納屋を改造して内部はモダンに。

外のテラス席もとてもよい。

Kasteel van Loppem(ロペム城)というゴシック・リヴァイヴァルのお城と森が近くにあり、森歩き、とてもおすすめ!! カフェもある。





最後に、大人数の場合に行く、もっとカジュアルなOnslow。

こちらは今ブルージュで流行りのシェアが前提のレストランで、おそらく、地元の人の間では一番人気だと言っても過言ではないと思う。
何度も行っているのに、いつも会話が忙しく、写真が一枚もない...

マルクト広場からは少し離れていて住宅街の中にある。
この辺りの運河も美しいのでぜひ徒歩で。
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14世紀の納屋で見る、昼間の星空




ブルージュの旧市街から約10キロほど北海の方向にある Lissewegeという村には、14世紀ごろに建てられた巨大な納屋がある。
ブルージュの人は誰でも知っていて、サイクリングの途中に飲み食いに立ち寄ったりするところだ。

今回、久しぶりに英国へ帰宅途中に寄ってみた。
軽く食べてから、ユーロトンネルへ向かうつもりが、そうだ、ベルギーのバアには軽食というものがないのだった...バアは飲むだけの場所である。


こちら、Abdijschuur Ter Doest (テル・ドーストの修道院の納屋)という。

納屋といっても、かなり大きな建物で、学校の講堂くらいのサイズ感。

12世紀に、ベネディクト会がここに領地を与えられて修道院を建て、のちにシトー会に引き継がれた。
納屋が建てられたのは14世紀末、今では唯一の修道院の名残である。




この納屋は外側こそ煉瓦づくりだが、内部の梁は木造...美しい。

屋根の穴から光が漏れて、星のよう、パドヴァのジョットのスクロヴェーニ礼拝堂の天井のようではないか(褒めずぎ)。




ベルギーはオランダとお隣の低地で、特にフランダースはこのようにどこまで行ってもはるかに真っ平である。悲しくなるくらい真っ平。

だから、ブルージュにお越しになった際は、お天気が良ければ自転車をレンタルして、近隣の村を走り回るのがおすすめ。
自転車でオランダ国境越えだってできちゃうよ!!
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rock fort 最終章


わたしの好物、手長海老、海藻バター。
絶妙に半生。


2001年にレストラン・ロックフォール Rock Fortが開店するまで、ブルージュにはこういうタイプの飲食店はなかった...

それまでブルージュでは、コースで食べる店か、飲むだけのバア(食べ物は角切りにしたチーズやナッツなどのみ)、という棲み分けが主流だった。

飲むのも食べるのも同価、というスタイルは、最近は「タパス」スタイルという触れ込みで、ブルージュのどこにでもある様式になって久しいが、2001年のブルージュでは新しかった。
日本人には新しくもなんともないけれど。

レストランにバアのエリアがあるのも特徴で、このバアはのちにBar Salonとして店内で独立した。


ステーキタルタルは英国ではなかなか食べられないので(英国人は生から半生の肉魚に抵抗をお持ちである)


男性二人のオーナーチームがキッチンとホールを取り仕切り、オープンキッチンで、おしゃれ。もちろん抜群に美味しい。
地元民に絶大な人気を誇り、わたしたち家族も開店当時から通った店だった。

この成功したビジネスを今週閉じるという。
22年の歴史を。
店を買い取りたい人(takeover。業務丸ごと買取り。これはブルージュでは個人商店が多いからかしょっちゅう起こる)があるとのことで。
そのお知らせがメールで来たのが8月終わりで、すぐに予約を二回入れた。


内装は所々変わっているが、バアのタイルの壁は変わらず。今回来れなかった娘に写真を送ったら、「タイル!」と


娘を放課後、音楽学校へ送り、わたしたち夫婦は二人揃ってここへ来て、娘のレッスンが終わるのを待って迎えに行き、三人揃ってからそれでは、とディナーを注文したものだった。
大海老の天ぷらとダム・ブランシュ(ヴァニラアイスクリームにチョコレートソースと生クリームをかけて食べるデザート)が大好物だった娘も大人になり、連れてこれるものなら連れてきたかった...

夫と二人、1998年にわたしがブルージュに住むようになってから、よく通った馴染みの店のうち、消えてしまったあの店、この店を数えてしみじみとした。
まだ残っている店を数える方が早い...

「またレストランビジネスを始めるなら、ぜひ連絡して」とオーナーたちに言い残して店を出た。

彼はウインクしていた。

ブルージュの夕食どき
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the notary




部屋数が少なく、常に予約で埋まっており、わたし自身はまだ泊まったことがないものの、カフェやお庭、レストランは確認済み、とーっても素敵なのでおすすめとして書いておきます。

ブルージュの新しいホテルThe Notary。全室スイート仕立てなのだとか。

最初は夏の初めに義理の母のおすすめで行ってみた。
わたしの、とてもセンスがいいおしゃれな友達からもおすみつきである。

一部はカラフルで、物や装飾も多いのに不思議と統一感があり、居心地がいい...

日本の、例えば春に宿泊した東京のオークラとか、あるいはアマン東京、えらく話が大きくはなるが、皇居で皇族方が集っておられるお部屋の写真など、装飾を削ぎ落とした究極の優美さも大好きだが、こういうのもいい...




今まで書いてきたブルージュの情報が古くなってきたので(なんと古くはすでに20年近くも前のものだ!)、ホテルやレストランのおすすめをまた時々書いていきたいと思う。
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