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Brugge Style
愛と勇気と缶ビールの家
Kホテルの最上階のスイートからの眺め。
わが家が見えるのだ。
白い階段状のファサードと、裏手庭に面した壁が。
鳥の目で「わが家」見たら、幸せそうな自分の姿が見えた。
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ネクタイははずして
ブルージュのレストラン sans cravate を女性シンガーの歌う意味深でセクシーなタイトルに訳したいのだが、難しいですね...
引っ越し作業の始まった今、近所のKホテルに宿泊している。
このホテルができてから毎日のようにバアに通ったので、マネージャーの1人が大出血サービスで良い部屋を用意してくれたのだ。
食事はブルージュでよく行ったレストランを回遊。
サンクラバット。
ロックフォール。
レフター。
夕暮れのワインバア。
そして義理の両親の家。
夫の幼なじみの家。
空間が歪んだように目立ってきた愛家を見るのは心が痛む。
書類が散る。額縁が消えたあとの残る壁や、段ボールの匂いのする踊り場。丁寧に梱包された得体の知れない大きな物体。世界の終わりはこれに似ているのかもしれない。
また、保険をかけるために自分の持ち物を数え上げて値段を記入して行く作業というのは滅茶苦茶気が滅入るものですな。
隣の温厚なビズラ君(ハンガリアンポインター)が引っ越し屋さんの行動に対して吠えたてた。うん、きみはいい番犬になるぞ。
わが家の右隣は意外に大きなアパート(古い家屋を3軒くらいコネクトした建物で、外観はそんなに大きいとは思えない)だ。
昨日、ワインを抱えて道を歩いていたら、自転車に乗った女性がそのアパートの住人だと自己紹介し、「あなたたち、お引っ越しするんでしょう?お嬢ちゃんのピアノ、窓枠に座って楽しませてもらいました。もう聞けなくなるのが残念。お嬢ちゃんには才能を大切に育ててね、と伝えて下さい。うちの息子もあれくらい練習してくれたらいいんだけど。」
会う人会う人、知らない人が「お嬢ちゃんのピアノ」について言うので、日曜日は近所の人を招いて娘が一曲弾くことにした。
英国の新居も同じような寛容な環境だといいなあ。
以下メモ。
引っ越し作業
一日目
寝室2(子ども部屋)
寝室3
バスルーム2
書斎
ガレージ
二日目
主寝室1
寝室4
リビングルーム
ダイニングルーム
屋根裏
三日目
主寝室バスルーム1
キッチン
庭
搬出
ものすごい早さでプロが次々とパッキングしていく様子は爽快。
ぼやぼやしているうちにひとつ残さずゴミや1セント玉まで丁寧にパッキングされて行く。
昨日今日と25度まで気温が上がり、ドライヤーで髪をかわかしている最中ゆでタコみたいになるので、夏っぽいドレスや靴を箱から引っ張り出してもらった。先週までブーツとタイツとウールのドレスで生活していたせいだ。
また、レゴの完成品やプレイモビールのお城など、そのままの形で輸送するというから驚き。
わたしは一日目に私的な衣類と化粧品だけパッキングしてあとは放免。
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1999
引っ越し荷物の中からウェディングドレスが出てきた。
娘に見せてくれとずっとせがまれていたので、陰干しにした。光の中でとろんとした裾がゆれるのをしばらく眺めた。
これでまた今後12年ぐらいは取り出して眺めることもないだろう。
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始まりの鐘、終わりの鐘
引っ越し作業が始まろうとしている。
家の前には一昨々日から駐車禁止の札が立てられていたにもかかわらず3台の車が止まっていて、作業はそれらの車撤去のための警察登場から始まった。
昨夜はリビングルームにマットレスを持ちだして高い天井を鑑賞しながら熟睡した。
近所のKホテルに部屋をとってあるけれど、今夜もここで寝よう。
さあわたしも手伝わなくては。
BGMは梱包済み荷物から引っ張り出したビル・エヴァンスのライブで。
普段通りに鐘楼や教会の鐘が鳴り、まるで始まり(あるいは終わり)を告げるかのようだ。
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終わりの始まり
昨日日曜日、ブルージュの2件先のお宅でお茶を頂いてから、娘を英国の学校の寄宿舎へ預けに行った(寄宿舎には一日単位で入れてくれるので便利)。
明日からブルージュでは1週間かけて引っ越し作業が始まるので、その間だけ寄宿生活をするのである。
何週か前に練習で一泊させたのがよかったのか、秋晴れのもと意気揚々と舎に入って行った。
彼女の英国生活はすでに始まっているのだ。
母親のわたしが後ろ向きではいけないなあ、と思う。
で、われわれ両親はその足でブルージュへ帰宅。
ブルージュを出たのは14時、戻ったのは23時だった。
日曜日とは言え、ロンドン周辺の渋滞がひどく、思ったよりも時間がかかってしまった...走行距離往復500キロ以上。
ドライバーシートに座りっぱなしだった夫が腰が痛いと言い出した。引っ越し目前にまったく。
この一ヶ月間の活動でも納得するような家は見つからず、最初から押さえてあった郊外の4ベッドルームの中流を絵に描いたような家に10月初旬入居することになった。
何もかもが今の家の半分以下のサイズ。階段の幅も、階段の長さも、天井の高さも(これがとにかく一番こたえる)、バスルームのサイズ、個々のベッドルームのサイズ、リビングのサイズ、暖炉の大きさも...物をすべて放り出して逃げ出したくなる。
「美しい家」か「庵」かの両極端にしか価値を見いだせないのは精神上の大きな問題なのかもしれない。
今でもまだ見ぬ美しい家の夢を見る。
夫は「なに、満足度の低い家にしばらく入居した方が、家探しのモティベーションが下がらなくていいんですよ。」と言った。
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