コトバヲツグムモノ

「口を噤む」のか「言葉を紡ぐ」のか…さてどちらの転がっていくのか、リスタートしてみましょう。

違う側面で触れるカウンセリング

2013-06-08 16:46:13 | コミュニケーションワーク

この5月から6月は様々な会(主に総会)に参加してる。
また様々な研修会にもご縁があり、素敵な話をいろいろ聞かせていただいている。
そんな中、ある研修会での話題。

2ヶ月連続で受けている研修なので、先月に全体進行のレジュメをいただいている。
その中に多くの時間を費やして学ぶ所になじみの文言が並んでおり、とても楽しみにしていた。

基本原則と心構え
1)「今・ここで」Now and Here の原則
2)受容・積極的関心
3)個別性
4)共感的理解
5)ワーカーの自己一致
6)秘密保持
etc.

技法
1)注目、傾聴
2)受容
3)繰り返し、再陳述
4)質問
5)支持、はげまし
6)言い換え、要約
etc.

まぁ、限られた時間での研修なので、カウンセリングの研修会で深く3原則などを学ぶほどの話は出ないだろうとは思って
いた。
もちろん、これらの語句の意味として基本的な説明はしていただけた。

しかし、当日配布された資料の技法例には以下のようなものが並んでいた

1)傾聴 - 「ええ」「うんうん」「そうですか」「それで」など、動作、表情、態度など非言語的な表現にも注意する。
相手を偏見のない態度で理解しようとすることが基本。

2)受容 - 本人に対する○○の感情を、とりあえず評価や審判的態度を抜きにして自分なりに理解しようとする態度であ
る。
例「昨日、残業で遅くなっちゃったんです、最近残業続きで疲れてしまいます」に対して
 ○「そう、大変そうだね。だけどがんばっているね。この仕事はだいぶ続いているよね。やりがいを感じているのかな?

 ×「そう、だけど来訪をかかしちゃ駄目だぞ!」

3)繰り返し - 本人が重要な意味を込めて述べていると思われる言葉を繰り返す。特に感情がこもっていると思われる言
葉は見逃さないようにする。相手は、自分の言うことをきちんと聞いてくれているいう実感を持つことが出来る(言葉よりも
感情に焦点を)
例「父親は飲んだくれて遅く帰ってくるし、たまに家にいれば母親と喧嘩してるし…、まったく…だから…、自分には、親
父の方がなんだか悪い気もするけど、だって…、でもやっぱ原因を作ってるいるのは母親なのかな、わかんないですね」
 「そう…、父親は飲んだくれで、夫婦げんかはするし、君としてはそれが辛いのかな…、それで家に居たくなくなっちゃ
う…のかな」

こんな感じで続いていく。
うーん、こういうのが正解だと教えられた仲間が、こういう型の聞き方になっていくと思うとちょっとしんどい。

まずは「1)傾聴」の説明は、初めての方にはわかりにくいだろうけど、根っこは押さえていると思う。
”相手を理解”というのがポイント。

なのに「2)受容」にて「自分なりに理解」と変わっている。
評価や審判的態度を抜くのだから、自分なりではなく”相手のありようをそのまま”理解することが大事だ。
いや、理解という言葉に無理がある。
受容とはこちらが理解することではなく、相手の「今・ここ」を受け止めることから始まる。
そこを外して”理解”などと言うから、応答例のように言葉を置き換えた上に、こちらの理解を前に出し、それが正しいか
確認するような応答になってしまう。
(×の方が論外なのは当然として)
私ならばこの言葉の受け答えは「そう、残業続きで疲れてるんやね」とだけ。
大変だとも言っていないし、がんばっているとも言ってない、ただ疲れていることを訴えているだけだから。

さらに「3)繰り返し」となると、応答例で繰り返してるのは「飲んだくれ・喧嘩」という出来事だけで、「辛い」「居た
くなくなっちゃう」なんて感情は相手の言葉には出ていない。
「特に感情がこもっていると思われる言葉は見逃さないようにする」という説明だが、文脈から勝手に「こもっていると”
思われる”」というふうに、聞き手の思い(想像)で話を進めようとする。
だから「のかな?」等という風に、想像を確定させようとする動きになっている。
これだと、「辛い」という感情になっていない相手も「辛いのかな?」と、影響を受けた感情が芽生えてしまう恐れもある

私ならば、ここはそのまま「そうか、わかんないんですね」と、相手が使った言葉を返すだけで十分。
相手がここから沈黙に入るようなら、基本はそのまま沈黙を待ち、もし言葉を添えるとしたら「お父さんが悪いと思う、で
も原因はお母さんにある気もする。そこがわからないんですね」と最後の言葉を繰り返してあげるだけで、「そうですね…
」と肯定から続けるか、「いや、やっぱり…」と否定から続けるか、あるいはまったく別の話題に変わっても、そのまま相
手の話したい気持ちに任せて付いていく。


ただ、傾聴を基本にしながらも、この面談には目的があり、そこに向けてのゆるやかな誘導が存在する。
そのあたりを促進するために、結構”探り”や”踏み込み”も活用しようとしているのだろう。
その意図はわかるが、これから学ぼうという方にはやはり傾聴の基本を押さえて欲しいし、そのあとの「傾聴だけではうま
くいかない」体験をしてから、応用的なものを見につける方がいいと思う。
最初から、こちらの思いが介入する応対ばかりしていると、どんどんコントロールが上手くなって、自分のペースで進める
「来談者中心療法」の対極にあるものを見につけてしまいかねない。
一見、その方が目的に向かって早く進む気になるのだが、相手の成長を信じて待つことからは遠ざかっていくだろう。

 


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