クリンの広場

たまっこくりんのおもいのたけ

雪の日に読む小説・19(『星に降る雪』池澤夏樹)

2021-02-07 | 本と雑誌

「観測所」を ぶたい(舞台)とした

「雪の小説」を、

もうひとつ

『星に降る雪』(池澤夏樹)

の レビュー行きます

(今度は、現代の話です)



 ノーベルしょう(賞)で、話題になった

「電波天文台・カミオカンデ」

 

主人公は、

そこにつとめる、技師の田村です

 

田村は、

かつて 登山中に、なだれ(雪崩)で死にかけた

けいけん(経験)があり

その時亡くなった・親友を 

しのびながら、

無口に 生きてきました。


ある時

同じ・じこ(雪崩事故)の 

生き残りである

亜矢子が たずねてきて、、

 

二人は 

セックスします。

 

そのあとで・・

自分たちが 引きずっている

「雪崩事故」について、

むねのうちを 明かしあいます。。

 

 のりこえる(乗り越える)ために、、、


そういうお話。


 (あれっ・・おわったの

気づくのが おくれるほど

さりげなくおわるので、

田村と亜矢子を 通じて、

「男と女って、考え方の根本が ホント、ちがうよね

という

作者からの メッセージを 

受け取りそこねる人けっこういそうです・・


 作者のいけざわ(池澤夏樹)さんは、

しんぶん(新聞)に

よく文章を よせているので、

「売れっ子作家で、筆上手

との 印しょう(象)を 持っているのですが・・

 

(この中へん(篇)に関しては、シンプルすぎるな・・)

思いました

 

いけざわさんは、

お父さんが作家の「福永武彦」

お母さんが詩人の「原篠あき子」

だそうですが、

今回の作品は、

お母さんの「原篠あき子」の血が、色こく・出ているかんじです

 

(詩っぽくキレイに まとめてあり、がいねん(概念)で包む、あのかんじで書かれています


 な~んて、、 ぶんせき(分析)しては・みたけれど。。

 

しょせん

ニュートリノとか、

チェレンコフ光とか、、

何度・せつめいされても 

何なのか・わからない

無学なクリンには

この作品の価値を

正かく(確)に レビューすることは できないのかも しれません。。

 

 あえて、いうならば・・

小説の ぼうとう(冒頭)に 

描写された、

「日本海側独特の、灰色がかった雪

も、

 つねに、星からのメッセージを受け取ろう

している

物理学者の「感受性」に 

かかれば、

キラキラした・スターダストに すりかわるんだな

 

と いう・・

イメージだけが のこりました。

 

 

しん(親)友・チットは、というと・・

 あえていうなら、そこじゃなくて・・

物理学を専攻した人が書くと、

あっち方面

ういう描写になるんだ

という、、

驚きのほうが 大きかったよ

 

ことは波のコントロール下にある。』『二つの肉体が相互に意思を通わせて、エネルギーと快感を交換して、、』『腿を割って、受け入れの状態を探る。そうしながら、これもハイゼンベルクの背理の一例かと、、』

 

って・・

絶えず、物理学的?に、観測してるの。。

変な連中。。」


と 

びっくりしていました

 



おすすめ度:ふつう

 

 

次回、「雪の日に読む小説」特集は、角幡唯介の『極夜行』を 取り上げます 

・・ほんとは池澤夏樹から、池澤夏樹の父・福永武彦が作家を志すきっかけとなった、萩原朔太郎の雪の詩の紹介にすすみたかったのですが、萩原朔太郎をしらべていったらいろいろありすぎちゃって・・内容がすごすぎるので、サクタロウは、のちほど単独・別件で扱います

 

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雪の日に読む小説・18(『芙蓉の人』新田次郎)

2021-02-06 | 本と雑誌

雪は

恐ろしい災害や 

ひげき(悲劇)を 

もたらすものでは ありますが・・

 

その雪に 立ち向かっていき

「感動の吹雪

を おこした人たちが、います


 のなかいたる(野中到)

と、妻の千代子です。


 二人は、
明治時代に、初めて 

冬の富士山にのぼり

きしょうかんそく(気象観測)を行った、

実在の夫婦


その、

山岳史的・気しょう(象)学的

こうせき(功績)を つづった

『芙蓉の人』という伝記小説

を、

今日は 取り上げます


 作者は、新田次郎さんで、

クリンでも知っている、

有名な 山岳小説家 

(『八甲田山死の彷徨』や『劔岳<点の記>』とか、書いてる人です


 山登りけいけん(経験)・ゼロの、クリンが、

そんな「ガチな登山モノを 

読んだら、

部屋の中で そうなん(遭難)してしまう

不安に なったので、

 もっとソフトで、「夫婦愛」をテーマにしている

こちらを えらびました。


 さて、タイトルの
『芙蓉の人』

ですが、

これは、

夫を追って 冬の富士山にのぼった、

妻・千代子のことを 指します

 

 彼女が、「芙蓉峰(ふようほう)」と呼ばれた

富士山に いる間に 

つけていた日記が

『芙蓉日記』なので、

そこからの 引用だけど、、

 まだ、「封建社会」のしばりが

げんぜん(厳然)と のこっていた

明治時代

「女は、でしゃばらないで家にいろ

の 

声を

はねのけて 山へ向かった

この、美しくも・力強き妻を、

「快挙の、真の立役者と みなした作者が、

きわ(際)立たせる目的で

つけた 

タイトルのようです

 



<以下、内容のアウトラインです

 千代子の夫・いたる(野中到)

は、明治28年、

冬の富士山初登頂に成功した、すごい人

 

でも、

彼は アルピニストではなく、

「富士山に気象観測所を建てたい

と 考えた

在野の気象家で、

 天気予報が当たらないのは、高い空の気象がわからないからだ 富士山頂くらい高い所で観測すれば、予報は確実性を増す

 

そのためには、

(まず、民間人の自分が観測をやってのけて、国を動かそう

と 

立ち上がりました


でも、、

 まだ・だれも、富士山のてっぺんの

冬の寒さを 知らない時代・・

 

「一日12回、二時間おきの気象観測を、たった一人で一冬つづけるなんて無謀だわ いつ寝るのよ

心配した妻・千代子

が、

夫の手伝いをするため、山へ 向かうのです

千代子は

登山トレーニングや、「気象観測の勉強」も

していったので

よき助手と なるのですが・・・

 後半が 読ませどころ

なので、

あとは 読んでください

(夫婦の二人三脚は、新聞でも大きく取り上げられ、日本中を沸き立たせたそうです 日清戦争や三国干渉さえあった時代でしたが。)

 

 

今、

冬だから、

 晴れた日は、富士山が

とおくからでも

キレイに 見えます

 

そんな 富士山に、

「美しい」以外のエピソードを 求めたい日に・・


お読みになると、

よろしいかと 存じます

 

<おすすめ度:ラストシーンが泣けたので、星4つ弱

 

 

(次回「雪の日に読む小説」は、池澤夏樹の『星に降る雪』を、取り上げます

 

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雪の日に読む小説・17(『破船』吉村昭)

2021-02-04 | 本と雑誌

海に面した・地方

ぶたい(舞台)の、

うすらさむい小説を もうひとつ・・


 『破船』です。


書いたのは、

昭和の歴史小説家、よしむらあきら(吉村昭


 あっさりした・ひっち(筆致)に 反して、

かなり

調べあげて書くのが 習かん(慣)だった

作家さんが 取り上げている

のだから、

(この話は、史実なのだろう、、)

と 

かくご(覚悟)して・読まなければ ならないのですが・・

この小説に描かれる・漁村、怖いです。。

 

<あらすじ>


 江戸時代の、
とある・まずしい、漁村・・

 

村人たちは

生活をきりつめ、

出かせぎで、食いつないでいました。

そんな 彼らには、

時々、

ものすごい 天からの恵みが、もたらされることが あります


 おふねさま(お船様)です

 

冬の・・

海が荒れる夜に、

お船さまは

米や、さとう(砂糖)、日用品を 運んで村に来てくれる・・

 

どこから来てくれるのか?

というと、

沖から 来てくれます。


 村人が、浜で焚く火

おびきよせられて、、


実は、この村

あらし(嵐)で 困っている船を 

わざと近づけては

「座礁」させ

船の つみ(積み)荷を うばっていたのです

 


 もちろん・・、乗組員は、
みな殺し。

しょうこ(証拠)は 

バラシて

みんなで、いんぺい(隠蔽)・・

 

そうやって 生き延びるのが、当たり前の村なのでした・・。

 物語は、主人公の少年が、

「お船さま呼び寄せの儀式」

を 

知るところから はじまるのですが・・

 



この本、4分の3くらい・読むと

いきなり、

どんでん返しが はじまります

 それは・・ある年、またも

到来したお船さまに、

村人たちが タカって行ったら

その船が、

なんと 

村に「疫病」を まきちらす

もがさ船(痘瘡に罹った病人を補陀落渡海させる船)」

だった

という、

大・どんでん返しです、、



(・・・え、えげつねぇ~~~~

 

(※ネタバレはここまで そのあと村がどうなったのか?は、クリン知ってるけど、教えません

 

・・・・・

 

日本って、

ほんの何世代か前までは、

こういう土俗的な集落が、けっこう・あったんだろうなあ・・

と、

現代人の いでんし(遺伝子)に

ゆさぶりを かけてくるような

小説。。



でもって

「新型コロナウィルス」に、むしばまれる

今の時代にも 

教訓を与える

お話なのでした。。

 





おすすめ度:いまならでは 

 

 

(次回、「雪の日に読む小説特集」は『芙蓉の人』(新田次郎)を取り上げます 実話にもとづく夫婦の山岳小説です

 

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雪の日に読む小説・16(『ゼロの焦点』松本清張)

2021-02-03 | 本と雑誌

戦争により 生き方をねじ曲げられ

重く、苦しい過去を

背負った人を

かなしく描いた・ミステリーが、ここにも、あります


 『ゼロの焦点』です

昭和を代表する

「社会派小説の旗手」、

まつもとせいちょう(松本清張)の 長へん(編)・・

 しかもご本人が、「自分の作品の中で一番好き

と 言い切った、代表作

です。

 

それは

どんなお話か というと、、、

<あらすじ>

 主人公の禎子(ていこ)は

新婚の夫に 蒸発され

わけがわからず、大ショック

夫が行方不明となった、金沢に 

やってきます。 


 しかし・・いっしょにさがしてくれていた、

夫の兄や同僚が

何者かに 毒殺され

(この事件には根深い何かがあると 気づきます


 禎子は 恐れながらも、

手がかりとなりそうな、二枚の写真をたより

必死に かけまわり

ついに

犯人をつきとめる

けど、、、

 そこには・・ 平成・令和の身勝手な犯行とは

かけ離れた、

誰も責めきれない、昭和ならではの犯行理由

存在したのでした。。

 クリンたち、この『ゼロの焦点』を、2009年封切りの映画で

見ました

 その映画は、広末涼子、中谷美紀、木村多江の三人が

「全女優魂」を 注ぎ込んだ

怪作で、

しびれました・・

(第33回日本アカデミー賞作品賞ほか計11部門で優秀賞を受賞

 わびしい・雪景色

寒く、凍てつく・漁村

暗く、荒れ狂う 

冬の海

 

クライマックスシーンに 出てくるのは、

「人間の深淵」を 

のぞきこんだかのような

冬の のと(能登)の、

だんがいぜっぺき(断崖絶壁)・・


 ぜひ、ごらんになってみてください

とっても、雪まみれになれる、映画ですの


 (本じゃなくて、映画の宣伝に

なっちゃった・・)

 


おすすめ度:映画よりおもしろくなかったけど・・、原作をリスペクトして、星4つ弱

 

 

(次回「雪の日に読む小説」は、吉村昭の『破船』を とりあげます

 
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雪の日に読む小説・15(『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』辺見じゅん)

2021-02-01 | 本と雑誌

 樺太まで行ったついでに、「シベリアを舞台とした傑作」

を 

取り上げます

ラーゲリ(収容所)から来た遺書』(辺見じゅん)

です。


お気づきの通り

シベリア抑留」が テーマの小説です。ゴォォ…(大宅賞受賞作)


 第二次世界大戦後、ソ連のホリョ(捕虜)になって

シベリアに 連れていかれた人・・

 

それは、60万人もいた

と ききますが、

彼らが、向こうでどんな目にあっていたのか 

を 

教えてくれるのが、この本・・


 内容的には、ズバリ・ひさん(悲惨)で

ちょう(超)寒い・・

何しろ、

9月から 雪がちらつきはじめる

「シベリア」が ぶたい(舞台)

おまけに「毛布一枚でがまんしろ」という、

収容所の年月

描かれているのです・・

 強制連行、強制収容

強制労働

スターリン式矯正教育

空腹と絶望

黒パン一個をめぐる・いさかい

同胞の裏切り

そして、死、、

 



お話は、

「抑留」から かいほう(解放)された日本人が

帰国の途につくところから

始まりますが、

そんなにかんたんに 帰れるわけがない 

引きもどされる人も いたりして、、

 (なんたる、この世の地獄か・・)

と、

かなしくなること・必定です。。

 しかし この作品が「戦争ノンフィクション」

に とどまらないのは、

辛いからといって・読者に読むのをやめさせない

作者(辺見じゅんさん)の、

「構成力」

と、

ラーゲリの日本人に見える、「知的欲望の光」のため・・



 小説の主人公は、
もともと・学問のある人

で、

収容所でも「精神」を 殺さないため

仲間に、

勉強会や句会を 呼びかけます

 

もちろん

ソ連のかんし(監視)を くぐり抜けての 集会ですし

体は ヘトヘトに つかれてて

1分でも ねていたい・・

 

それでも

なつかしい・日本語を 思い出したくて、

みんな、ここに来ます。


 句会に来れば、
昔の「階級」も

今の現実も 

しばし・どけて、

気持ちを 大切にすることができる、、

 

収容者の心は うるおったのでした。


 そんな、アムール句会の人びとは、

果たして

「ダモイ(帰国)」できたのか


そこが キモなので、

それは、

読んで たしかめてください


 クリンは、彼らの俳句を いくつか・
ご紹介して、

この話を 終えます。

 

独房の秋を得たるは 蠅の友

小さきをば子供と思ふ 軒氷柱(のきつらら)

生くことは 悦びといふ木の芽見て

普請場に 燕大きく来りけり


おすすめ度:いっぱい

 

 

(次回「雪の日に読む小説」は、松本清張の『ゼロの焦点』を とりあげます

 

 

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