江戸後期の代表的儒学者、佐藤一斎の巨大な一字書です。
全体: 73.0㎝x176.3㎝、本紙(紙本) 57.9㎝x110.6㎝。江戸後期(安政元年)。
【佐藤一斎】安永元(1772)年ー安政六(1859)年。美濃(岐阜県)岩村藩家老佐藤家に生まれる。名は坦(たん) 、号は一斎。幼少より学問に優れ、儒学をおさめて、昌平坂学問所の総長となる。門人3000人を育てたといわれ、その中には、佐久間象山(松代藩)、山田方谷(備中松山藩)、渡辺華山(田原藩)などがいる。幕末の志士にも大きな影響を与えた。
老+至=耋(^.^)
『耋(てつ) 』とは、70‐80歳くらいの老年を意味します。
佐藤一斎の主要な著作が、『言志四録』(四部作)です。42歳から82歳にかけてまとめ上げた、1133条から成る名語録です。「言志録」、「言志後録」、「言志晩録」と書き進んだあと、最後の一巻「言志耊録」を80歳の時に書き始め、2年後に完成しました。
今回の書の掛軸巻には、元旦試筆とあります。佐藤一斎が「言志耊録」にとりかかったのは、この年の5月ですから、今回の品は、まさに「言志耊録」を書き始める時の決意を記した書と言えるでしょう。
雄渾の書からは、80歳という年齢を感じさせない力強さが伝わってきます。
渡辺崋山『佐藤一斎像』(国宝)
これは、門人であった渡辺崋山が、50歳の時の佐藤一斎を描いた肖像画です。固い信念と強い意志が伝わってきますね。