今回は、茶掛けの軸です。
全体、64.3㎝x127.7㎝、本紙、61.9㎝x38.8㎝。昭和。
茶道松尾流10代、松尾宗吾(不染斎、1899-1980)の作です。
松尾流は、名古屋を拠点とする茶道の流派です。
墨絵で松が描かれています。よく見ると、なかなかよく描かれています。
讃は、古今集からの和歌です。
よろつよを
まつにそ
君を
いはひ
つる
千年の
かけに
すまんと
おも
へは
万代を 松にぞ君を 祝ひつる
千歳のかげに 住まんと思へば
この松にかけて、貴男の長寿をお祝いします。
私も、長寿の松や鶴の恩恵を受けて生きていきたいと思いますから。
歌を素直に読めば、こんな意味でしょう。
しかし、中にはうがった読み方もあるようです。
たとえば、「よろつよをまつ」―>「よろず夜を待つ」、「いはひつる」―>「井這いつる」、「ちとせのかけ」―>「千歳の蔭」。
すると、かなり艶めいた歌になりますね。
この歌の詞書に、「良岑のつねなりが四十の賀にむすめにかはりてよみ侍りける 素性法師」とあるのがその理由のようです。素性法師が、良岑のつねなりの娘に代わって、彼女の父親の四十の祝賀席で作ったことになります。しかし、素性法師と良岑のつねなりなる人物や娘との関係については不明ですから、このような解釈も出てくるのでしょう。
ま、私もうがった解釈は嫌いではありません。
しかし、今回の品は、茶席に掛けられる軸です。
すなおな解釈で、長寿を祝賀する歌とするのが妥当でしょう(^.^)
ただ、お茶席となると、そこまでくだけた歌はどうなんだろうという気はします ・・・・・和歌にもお茶にも縁のない私ではありますが(^^;
私も、和歌にもお茶にも縁の無い人間なものですから、ついつい、絵の方にだけ視線が向いてしまいます(~_~;)
この軸をどうして入手したのか覚えていません。
多分、骨董屋で他の品と一緒になりゆきで。
何せ、お茶も和歌も嗜みませんから(^{^)
(さすがに博識なる遅生さんです!)
空間の広がりを感じる描き方が魅力的な茶掛けではないでしょうか。
要するに言葉あそびです。
当時は、和歌の素養がないと男女の付き合いができなかったとか。
今の方が気楽かも知れません。