今回の品も少し変わった陶胎七宝です。
幅 9.3㎝、奥行 9.3㎝、高 11.0㎝(四角部, 7.6㎝)、重 461g。明治初期。
クリーム色の薩摩系陶土で、四方形の壷が成形され、表面に泥七宝が施されています。
側面が絵違いの草花紋になっています。
菊:
桔梗:
菖蒲:
不明花(^^;
地を、ハート形の植線で埋めているので、錦光山系の陶胎七宝でしょう。
特筆すべきは、器形です。ボディは、轆轤を使わずに立方箱を作り、轆轤成型した口を付けています。
内側は施釉されていますが、口の外側はには釉薬が掛かっていません。
これは、蓋の受けですね。元々は、陶磁器の蓋(おそらく泥七宝)をするようになっていたと思います。
その蓋が破損したか、失われたのでしょう。
そこで、紫檀で蓋をしつらえて、香炉にしたのだと思われます。
じゃあ、もともとは何だったのか?
これは、蓋つきの茶壷として生まれてきたのではないでしょうか。
ずっと以前に紹介した陶胎七宝花鳥図茶壷と並べてみました。
ちょっと蓋を拝借すれば、
何とか様になりました(^.^)
やはり、煎茶用の茶心壷(茶壷)でしょう。
丸筒形が一番多いですが、なかには、六角筒形、そして、まれではありますが、今回のような四方形の茶心壷があります。
その意味では、今回の品はマニアック(^.^)
四角の形が面白いですね!
陶器なのでしょうがしっかり成形されているんですね!
蓋も紫檀でオシャレに七宝紋が彫られているところを見ると、かなり大切にされていた高級品だということがわかります。
是非現物を見てみたいものです(^^)
江戸期に角徳利はありますが、こういうズングリ型は知りません。
いまなら、〇〇展の作家物にありそうなフォルムですね。
紫檀も、こんな形に透かし彫りするのは、手間ひま(金)がかかりますね。
そこまでするのは、数奇者でしょう(^.^)
以前に紹介された陶胎七宝花鳥図茶壷の蓋を拝借しても、さほど違和感を感じませんね(^_^)
多分、当初は、このような蓋が付いていたのですね。
失った蓋の代わりに、紫檀で蓋をしつらえたんですね。やはり、よほど大切に扱われてきたのですね(^-^*)
江戸期にも、このようなズングリ型の角徳利のようなものも、少しはあるようです。
私は、茶壺ではないですが、化粧水入れの瓶と思われる、「金蒔絵 市松文 六角小瓶」を所持しています(2021.5.2 紹介)。
まあ、それはともかく、角型の器を作ろうとすると、たたら作りの粘土板を張り合わすより外ありません。重みでどうしても凹みますね(私のわずかな作陶体験(^^;) 慣れた人は、半乾きの粘土板を、ドベで接着して箱を作ります。なかなか難しいです。手間と時間(=金)がかかります。今なら、〇〇展の作家物ですね。
いずれにしろ、日用品では、わりが合わないでしょう。数奇者の持ち物ですね(^.^)