古い箱根寄木細工の大盆です。
60.3㎝ x 38.3㎝、高 5.1㎝。江戸後期。
これまで紹介した寄木細工は現代の作ですが、今回の品は、200年程前、江戸時代後期の品物です。
見込みに、各種の寄木細工が施されています。
側面には、内外とも、桜の花びらが螺鈿で表されています。
底と側面は黒漆塗りです。
大別して、2種類の寄木細工が施されています。
色、木目、材質が異なる木を、大きな四角や三角に切り取って、盆の表全体に貼り込んでいます。そこへ、細かな寄木細工のパーツがいくつか散らばって配されています。
右上の大きな五角形、最長辺の長さは10.4cmです。縁取りの黒線も、黒い木でできています。
三角形のブーメランのような寄木パーツの大きさは、4.5cmほどです。
よく見ると、この寄木は、木を削って嵌めこんであります。象嵌なのです。
大の寄木も、小の寄木も、さらにそれらを組み合わせた盆全体も、江戸時代とは思えない斬新なデザインですね。
シーボルトの収集品の中に、よく似た品がありました。
彼は、文政6年(1823)、最初の来日時、江戸へ参府し、その途中たちよった箱根で寄木細工に魅せられ、蒐集を始めたそうです。
実は、今回の品を入手した時、全体がボロボロで、とても見られるものではありませんでした。塗りがはげ落ちているだけでなく、あちこち大きく凹んでいたのです。お値段もそれなりだし、ボツ品にするかどうか、迷いました。
が、思い切って修復することにしました。幸いにも、寄木細工の部分には大きなダメージがありませんでした。修復というと聞こえはいいですが、地道な作業の繰り返し。凹んだところを中心に透明漆(底や側面は黒漆)を塗り、乾いたらペーパーで磨いて平らにする、また、塗って乾かし、磨く・・・・この作業を10回以上繰り返して、全体を平らにしていくのです。凹部を一度で埋めることはできません。その外、色合わせ(実際は色誤魔化し)など、やることはいっぱいありました。盆縁の内外には螺鈿で桜の花びらがあしらわれていますが、縁の上面の細い部分にも、同じ螺鈿細工がしてありました。しかし、ほとんどの花びらは剥がれていたので、思い切って残りの螺鈿も取り去り、縁の上面全体を金漆で塗りました。
こうして、何とか人様に見ていただける姿になりました(^.^)
かかった時間は、4か月(^^;
シーボルトの図録で、類似の品を見つけたのは、その後です。ボツ品にしなくてよかった(^.^)
でも、この品には難点があります。表面が滑らかすぎるのです。大きくしっかりしているので、たくさんの皿や茶碗がのせられます・・・・が、運んでいる途中で、盆を少し傾けると、器たちがジェットコースターのように滑るのです。水平を保ちつつ、しずしずと運ばねばなりません。
寄木細工盆でジェットコースターとは、シーボルト様でも気がつくまい(^^;
故玩館には、シーボルト様にも勝るとも劣らない慧眼で集められた品々で満ち溢れているわけですね(^-^*)
それにしても、よくぞここまで再現させましたね(^-^*)
国の宝となるものを消滅させないで保存したのですものね。これぞコレクター魂ですね!
すごい手技ですね。
シーボルトをも魅了したとは素晴らしいですね。
デザインは斬新で今でも通用しますね。
私の知っていた寄木の姿からは想像も出来ない作品でした(^_-)-☆
20年前くらいのことで、今ではとても無理す。
おそらくシーボルトも変人だったのでしょう。
違いは、有名人か市井のビンボーコレクターかですね(^^;
日本でも、江戸後期から明治にかけて、寄木細工と組み合わせた木象嵌の調度品が作られました。多くは残っていません。デザインがモダンですから、輸出向けだったのかも知れませんね。
お盆さん、キラキラ、喜んでますね。
この品の側面と上面には、螺鈿で桜の花びらがあしらわれています(上面のは剥がれて無し)。こういう装飾は、長崎螺鈿によく見られます。推定ですが、箱根細工に手を加えて、長崎で輸出向けに螺鈿加工をした物かもしれません。