先回のブログで紹介した『法花三彩樹下人物紋瓶子』です。
法花は珍しいとはいえ、写真で見る限り、それほどの品の様には思えません(^^;
白釉で堤を築いて、ぐるっと囲んだ中に色釉をさす手間は相当なものですが、色釉は薄いし、パッとした感じがしないからです(^^;
そこで、顕微装置の助けを借りて、ミクロな眼でこの品を見てみることにしました。
まず、この品に一番特徴的な窯変です。紫釉が塗られた胴の中央部分や肩部には、ムラムラとした模様が表れています。
大きな窯変模様の周囲には、小さな点が散らばっています。
この点々を拡大すると・・・・
これは結晶ですね。おそらく、マンガン。
紫釉の中に含まれるマンガンが、溶融した状態から冷えて結晶となって析出したものと考えられます。
大きな窯変部を拡大すると・・
大陸の海岸線を上空から眺めているかのようです(^.^)
顕微装置のLED照明の関係でしょうか、紫釉はダークブルーに見えます。
瓶子の肩部には、小さな丸(2‐3㎜)模様が貼花で施されています。
少し大きくすると・・
さらに拡大すると・・・
どうやってこれを作るのでしょうか?手の込んだ造形です。
さらに、周りをマンガンの結晶が取り囲んでいます。新発見の惑星か(^^:
饕餮紋はどうでしょうか。
白釉の堤が印象的です。
その特徴は、玉と見間違うような潤んだ肌合いです。無造作に築かれた白ペンキ塗りのコンクリート堤ではなく、生き物のような躍動感のある堤です。白釉の堤は、外と内を隔てることなく、内外の色釉と一体となって独特の風景を作り出しています。
貼花の丸(3‐4㎜)には、虹彩がみられます。
次は、胴の部分です。
男(高士?)の顔。
松の葉。
松の幹。
いずれも、生き生きとしています。
最後は、瓶子の底です。
非常に薄くしか緑釉が掛かっていません。所々に、白い素地がのぞいています。
しかし、全面に虹彩がみられます。
そして、拡大して見ると・・・
驚きの光景が広がります。
下の方のバブルの海は素地の白い部分、上の虹色部は緑釉。
緑釉の中に湧き上がる虹色の玉。
白い素地は、バブルの平原です。
今回の品では、ミクロの目をつかって、肉眼では想像もできなかった豊かな世界の広がりをみることができました。
色釉が完全に熔けていて、それぞれの色彩が調和し、美しい風景ができあがっています。さらに、紫釉中に析出した結晶が、変化のある景色をつくっています。また、白の美しさは格別です。法花の特徴である白釉の潤んだ肌と白い素地の上に展開される泡の海。いずれも、単なる白色を越えた美しさです。
我々の肉眼でこのような美しさを直接見ることはできませんが、これらの微細な風景が集まって出来上がったこの品に接する時、何ともいえない落ち着いた趣きを感じるのではないでしょうか。
法花は、素地によって、陶器と磁器の二種に大別できます。今回の品は純白の磁器です。各種の細工や焼成などから、高度の技術が使われていることがわかります。『法花三彩樹下人物紋瓶子』は、景徳鎮製の可能性も(^.^)
そういっていただけるとうれしいです。
つい自分勝手な表現になりがちです。わかりやすさが第一ですね。
桂蓮さんの文章も、きびきびしていて私は好きです。
骨董は極端な言い方をすれば自分だけの楽しみですから、決まった何かがあるわけではなく、自分の感覚に合う物と付き合えばいいと思っています。ですから、私の場合、他の人から見ればほとんどがガラクタ(^^;
それでも、我楽苦多の世界に遊ぶことができればば満足です(^.^)
色釉が完全に熔けていて、それぞれの色彩が調和し、美しい風景ができあがっています。さらに、紫釉中に析出した結晶が、変化のある景色をつくっています。また、白の美しさは格別です。法花の特徴である白釉の潤んだ肌と白い素地の上に展開される泡の海。いずれも、単なる白色を越えた美しさです。<<
昨日コピペした上の文章を読んで
クリアな説明力に感嘆してました。
今日また読み返し、昨日より奥深さがまたあり
ただ読み逃げができず、
文のクリアさ、明快さ、描き出せる質などが素晴らしく
感動でコメント書いています。
私は遅生様の文が好きです。
上品でありながら力強いものがあります。
骨董品は、そおですねーあまり関心ないかなー
だけど、ここのブログ記事を読んで以来、その価値を理解できるようになりました。
価値が解らない人に、価値の根拠を示せる能力、本当に生まれつき『能』だと思います。
桂蓮
やってみないとわからないものですね。
ミクロの世界、想像以上でした。
その理由は、焼成が完璧だからだと思います。どれくらい温度を上げたのかわかりませんが、どの釉薬も非常にきれいに熔けています。呉須赤絵とはえらい違いです。
私も底を釉剥ぎしたのだろうと思って見たのですが、その形跡がないのです。緑釉を全体に薄く塗って、そのまま焼いています。接地部には、丸く黒いゴミがくっついています。
「饕餮紋」の部分など、肉眼で見た景色では考えられないほどの綺麗さですね!
底面は、焼成時にひっつかないように、色釉薬を少し拭っているのでしょうか。白い磁肌も透けて見えるようですね。
なかなかな純白の磁肌ですから、景徳鎮辺りの土(磁土)を使っているのでしょうね。