ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

婦人科腫瘍学・必修知識

2006年11月23日 | 婦人科腫瘍

婦人科腫瘍専門医修練ガイドライン

外陰の腫瘍・類腫瘍

腟の腫瘍

外陰・腟の腫瘍・類腫瘍、問題と解答

子宮頚癌、組織分類

子宮頸癌、進行期分類

子宮頸癌、放射線治療

子宮頚癌、化学療法

子宮頚癌、問題と解答

子宮体癌

子宮体癌、問題と解答

子宮肉腫

子宮肉腫、問題と解答

卵管癌

卵巣の腫瘍・類腫瘍、全般・組織型

卵巣癌、進行期分類

卵巣癌の手術療法

卵巣癌、化学療法

卵管・卵巣の腫瘍・類腫瘍、問題と解答

絨毛性疾患

絨毛性疾患、問題と解答

細胞診

細胞診、問題と解答

組織診、問題と解答

コルポスコピー

腫瘍マーカー

婦人科疾患のCT診断

婦人科疾患のMRI診断

抗癌剤の分類

緩和医療

癌関連遺伝子

RECISTガイドライン

EBM、ガイドライン


婦人科腫瘍専門医修練ガイドライン

2006年11月23日 | 婦人科腫瘍

婦人科腫瘍専門医修練ガイドライン

         内 容

Ⅰ.婦人科腫瘍の診断と進行期の決定

Ⅱ.婦人科腫瘍病理組織・細胞診診断

Ⅲ.癌患者の病態生理とその管理

Ⅳ.発癌、浸潤と転移

Ⅴ.婦人科腫瘍に関する遺伝子・遺伝学

Ⅵ.臨床統計と臨床試験

Ⅶ.腫瘍免疫学

Ⅷ.化学療法

Ⅸ.治療薬剤の薬理学

Ⅹ.放射線治療

XI.各疾患における評価と治療法

XII.手術

XIII.その他


Ⅰ.婦人科腫瘍の診断と進行期の決定

2006年11月23日 | 婦人科腫瘍

一般目標
 婦人科腫瘍の診断と進行期について十分な知識を有し、適切に診断し、かつ進行期を決定することができる。

行動目標
 診断のために、問診、診察、および検査法を適切に行い、以下の項目を達成することができる。
 1. 悪性腫瘍の診断を確定する。
 2. 悪性腫瘍の拡がりの診断を行う。
 3. 治療上問題となる合併症を適切に診断する。

A. 問診で以下の情報を適確に得ることができる。
 1. 全般的な医学的情報
 2. 婦人科的な情報
 3. 悪性腫瘍に関連した情報
  癌の家族歴・既往歴、前癌病変に関する病歴など
 4. 婦人科悪性腫瘍に関連した情報

B. 診察を適切に行うことができる。
 1. 一般的理学的診察
 2. 婦人科的診察(内診、腟・直腸双合診)
 3. 婦人科悪性腫瘍評価のための診察

C. 婦人科悪性腫瘍について、その進行期を診断できる。
 1. 臨床進行期分類が適用されている疾患について、取扱い規約に従って診断できる。
 2. 臨床進行期分類が適用されている疾患について、新しい診断法も駆使して、治療前に詳細な情報を得ることができる。
 3. 手術進行期分類が適用されている疾患について、新しい診断法も駆使して、術前に詳細な情報を得ることができる。
 4. 手術進行期分類が適用されている疾患について、取扱い規約に従って診断できる。

D. 検査法を適切に選択し、正確に行うことができる。
 1. 細胞診
 細胞診の適応を理解し、検体を適確に採取することができる。
  a. 腟、子宮腟部、子宮頸管、子宮内膜から細胞診標本採取
  b. 細胞診標本判定結果の理解

 2. 内視鏡検査
 内視鏡の適応を理解し、適切に行うことができ、観察結果を解釈することができる。
  a. 子宮頸部、腟、外陰のコルポスコピー診断
  b. 子宮鏡
  c. 膀胱鏡
  d. 直腸鏡

 3. 生検検査
 生検の適応を理解し、適確な標本採取を行うことができ、組織標本の所見を解釈できる。
  a. 通常の生検
   (1) 外陰、腟の生検
   (2) 子宮腟部生検、子宮頸管内膜掻爬、円錐切除術
   (3) 子宮内膜生検、子宮内膜全面掻爬術
   (4) リンパ節生検(鼠径節、骨盤内、腹部大動脈周囲、鎖骨上窩リンパ節)
   (5) 生検可能な転移巣
  b. 穿刺生検
   (1) 骨盤内、腹腔内、皮下の病巣に対する穿刺細胞診、穿刺組織生検
   (2) 深部病巣に対する超音波ガイド下の生検

 4. 画像診断検査
 各種画像診断法について、その適応および診断の精度と限界を理解し、画像を読影できる.
  a. 超音波断層法(経腹、経腟)、カラードプラ法
  b. 単純X 線撮影(胸部、腹部)
  c. 腎盂尿路造影
  d. MRI
  e. CT
  f. 上部消化管造影、大腸造影
  g. 血管造影
  h. 各種シンチグラフィー
  i. PET

 5. 臨床検査
 検査の適応を理解し、その結果を解釈でき、診断・治療方針の決定に利用することができる。
  a. 尿検査
  b. 末梢血液検査
  c. 肝機能、腎機能検査を含む血清生化学検査
  d. 血液凝固系検査
  e. 電解質および血液ガス
  f. 肺機能検査
  g. 心機能検査
  h. 腫瘍マーカー
  i. 分子生物学的検査および遺伝子検査
  j. 血中ホルモン値およびホルモン受容体検査


Ⅱ.婦人科腫瘍病理組織・細胞診診断

2006年11月23日 | 婦人科腫瘍

一般目標
 婦人科腫瘍患者の診断、治療にあたり最も重要な項目である病変の肉眼的および細胞診断並びに病理組織診断学的評価を細胞診、生検、手術摘出標本で十分に理解することを目標とする。特に婦人科領域の良性疾患と悪性あるいは境界悪性病変を鑑別できることを目的に修練をすすめる.。更に以上の修練を通してこれらの病変の発生、進展や細胞生物学的動態についても良く理解し、その特徴や臨床的予後について認識することができるようにする。その他、剖検、凍結切片診断、免疫染色診断、分子病理学的診断についても十分な知識を有することも望まれる。

行動目標
 1. 婦人科腫瘍の摘出標本の切り出しから、最終的な病理組織報告書作成までの過程を病理専門医の指導の下で体験する。

 2. 婦人科腫瘍領域の生検、細胞診断について病理専門医、細胞診専門医の指導の下で最終的な報告書の作成までの流れを十分に習得する。

 3. 迅速診断、免疫組織化学、分子病理学的診断の実際を見学し、これらの診断技法の意義及びその実際を理解する。

 4. 修練期間中に婦人科腫瘍患者の剖検例を経験することが望ましく、CPC などを通して疾患の終末像を理解する。

A. 外陰
 1. 以下の外陰疾患について、肉眼および病理組織学的、一部では細胞診断学的所見を把握し、病理組織診断並びに細胞診診断の報告書の内容を適確に理解してその疾患の診断、治療に応用できる。
  a. 良性疾患
   (1) 増殖性病変や硬化性苔癬などの萎縮性病変
   (2) 顆粒細胞腫などの良性腫瘍
   (3) 尖形コンジローマ

  b. 上皮異形成(VIN)および上皮内癌

  c. 扁平上皮癌

  d. 腺癌

  e. Paget 病

  f. 悪性黒色腫

  g. 肉腫

  h. Bartholin 腺に発生する疾患
    嚢胞、扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌、腺様嚢胞癌

  i. その他の稀な疾患

 2. ウイルス感染と上皮の増殖、癌の発生との関係を理解し記述できる。

 3. 扁平上皮内癌と浸潤癌の差異をよく理解しており、初期浸潤の特徴を認識し記述できる。

 4. 種々の外陰腫瘍の自然史、病因、分子病理学的背景や生物学的態度をよく理解し記述できる。

 5. 外陰の部位における癌の発生頻度やその進展様式を理解し記述できる。

 6. 外陰癌と他の性器癌との関連について理解し記述できる。

B. 腟
 1. 以下の腟疾患について、肉眼および病理組織学的、一部では細胞診断学的所見を把握し、病理組織診断並びに細胞診診断の報告書の内容を適確に理解してその疾患の診断、治療に応用できる。

  a. 良性疾患
   (1) 子宮内膜症
   (2) アデノーシス
   (3) 扁平上皮乳頭腫、尖形コンジローマ
   (4) その他

  b. 扁平上皮異形成(VAIN)および上皮内癌

  c. 扁平上皮内癌

  d. 腺癌

  e. 悪性黒色腫

  f. ブドウ状肉腫・胎児性横紋筋肉腫とその転移病巣

  g. その他の稀な疾患
    内胚葉洞腫瘍, 肉腫など

  h. 転移性癌

 2. 妊娠中の母体にdiethylstilbestrol (DES) を投与した結果、その女児に起こり得る性器異常についての知識を有し記述できる。

 3. 腟癌について、その自然史、病因、分子病理学的背景、発生部位と頻度、およびその進展様式について記述できる。

C. 子宮頸部
 1. 細胞診標本について、以下の細胞所見を理解し形態学的特徴を記述できる.
  a. 正常上皮
  b. 上皮内腫瘍
  c. 扁平上皮癌
  d. 腺癌
  e. ウイルスによる変化
  f. トリコモナスおよび真菌の同定
  g. 異型腺細胞の同定

 2. 以下の子宮頸部疾患について、肉眼および病理組織学的、一部では細胞診断学的所見を把握し、病理組織診断並びに細胞診診断の報告書の内容を適確に理解してその疾患の診断、治療に応用できる。
  a. 扁平上皮化生
  b. 微小頸管腺過形成
  c. コイロサイトーシス
  d. 上皮内腫瘍(CIN):異形成、上皮内癌
  e. 微小浸潤扁平上皮癌
  f. 扁平上皮癌
  g. 腺癌
  h. その他の稀な腫瘍
  i. 転移性癌

 4. 上皮内腫瘍の発生と上皮内癌、浸潤癌に至る過程を、発生部位の移行帯の特性を理解して記述できる。

 5. 子宮頸部上皮のウイルス性変化と上皮内腫瘍との関係を認識できる。

 6. 上皮内癌の腺管侵襲と間質浸潤の生物学的並びに臨床的意義を理解し記述できる事。

 7. 微小浸潤癌の定義とその治療の原則を理解し記述できる。

 8. 子宮頸部上皮内腫瘍と癌について、コルポスコピー所見、細胞診所見、病理組織所見の関連性について記述できるともに、不一致についても説明できる。

 9. 子宮頸部腺癌と子宮内膜腺癌の病理学的鑑別について説明できる。

 10. 子宮頸癌の脈管侵襲の病理組織学的意義に関して記載できる。

 11. 子宮頸癌の自然史とそれを規定する病理学的要因について記述できる。

 12. 妊娠中の子宮頸部上皮内腫瘍および子宮頸癌について、診断、管理について理解し記述できる。

D. 子宮体部
 1. 疾患について、肉眼および病理組織学的、一部では細胞診断学的所見を把握し、病理組織診断並びに細胞診診断の報告書の内容を適確に理解してその疾患の診断、治療に応用できる。

  a. 正常、非増殖性変化
   (1) 増殖期内膜
   (2) 分泌期内膜
   (3) 萎縮性内膜
   (4) 妊娠時の内膜
   (5) Arias-Stella 変化
   (6) 腺筋症

  b. 増殖性変化
   (1) 子宮内膜ポリープ
   (2) 単純型増殖症
   (3) 複雑型増殖症
   (4) 異型増殖症

  c. 癌
   (1) 類内膜腺癌
   (2) 扁平上皮成分への分化を伴う類内膜腺癌
   (3) 漿液性腺癌
   (4) 明細胞腺癌
   (5) 粘液性癌
   (6) 扁平上皮癌

  d. 子宮内膜間質腫瘍
   (1) 子宮内膜間質結節
   (2) 低悪性度子宮内膜間質肉腫
   (3) 高悪性度子宮内膜間質肉腫

  e. 癌肉腫
   (1) 同所性
   (2) 異所性

  f. 平滑筋肉腫

  g. 転移性癌

  h. その他の悪性腫瘍

 2. 子宮内膜細胞診について以下の細胞像を認識でき記述できる。
  a. 正常、周期性変化
  b. 増殖性変化
  c. 内膜腺癌

 3. 子宮内膜増殖症と子宮内膜腺癌の関連について理解し記述できる。

 4. 以下の疾患について、自然史、生物学的態度、進展様式を理解し記述できる。
  a. 子宮内膜腺癌
  b. 子宮内膜間質肉腫
  c. 平滑筋肉腫
  d. 癌肉腫

 5. 子宮内膜異型増殖症と腺癌の鑑別をその限界点とあわせて理解し記述できる。

 6. 良性の平滑筋腫と平滑筋肉腫の鑑別の基準や子宮内膜間質肉腫のgrading について記述できる。

 7. 内膜腺癌の筋層浸潤と腺筋症の病理組織学的差異を理解し記述できる。

 8. 子宮内膜癌患者に対するホルモン補充療法についてそのメリット、デメリットを理解し記述できる。

E. 卵管
 1. 以下の疾患について、肉眼および病理組織学的、一部では細胞診断学的所見を把握し、病理組織診断並びに細胞診診断の報告書の内容を適確に理解してその疾患の診断、治療に応用できる。
  a. 良性の類腫瘍病変
   (1) 高度の慢性卵管炎
   (2) 嚢胞性卵管炎
   (3) 上皮性変化を伴った結核性卵管炎
   (4) 結節性峡部卵管炎

  b. 良性の類内膜性病変
   (1) 子宮内膜症
   (2) 偽脱落膜変化

  c. 妊娠に関連した変化
   (1) 子宮外妊娠

  d. 腺癌、癌肉腫

  e. 転移性癌

  2. 原発性腫瘍と転移性腫瘍の鑑別について理解し記述できる。

F. 卵巣
 1. 以下の疾患について、肉眼および病理組織学的、一部では細胞診断学的所見を把握し、病理組織診断並びに細胞診診断の報告書の内容を適確に理解してその疾患の診断、治療に応用できる。
  a. 表層上皮性・間質性腫瘍
   (1) 良性腫瘍
   (2) 境界悪性腫瘍
   (3) 悪性腫瘍
  b. 性索間質性腫瘍
  c. 胚細胞性腫瘍
  d. 転移性卵巣癌
  e. 類腫瘍病変

 2. 種々の卵巣腫瘍についてその自然史、分子病理学的背景を含む細胞生物学的態度について理解し記述できる。

 3. 種々の卵巣腫瘍についてその発生頻度、両側発生の可能性について理解し記述できる。

 4. 原発性卵巣腫瘍を転移性卵巣癌と区別するための特徴を理解し記述できる。

 5. 境界悪性、悪性卵巣腫瘍において、嚢腫摘出術や片側付属器切除術に止め妊孕能を温存できる適応を理解し記述できる。

G. 絨毛性疾患
 1. 以下の疾患について、肉眼および病理組織学的、一部では細胞診断学的所見を把握し、病理組織診断並びに細胞診診断の報告書の内容を適確に理解してその疾患の診断、治療に応用できる。

  a. 正常の初期妊娠像

  b. 胞状奇胎
   (1) 全胞状奇胎
   (2) 部分胞状奇胎

  c. 侵入奇胎

  d. 胎盤部トロホブラスト腫瘍

  e. 絨毛癌

 2. 種々の絨毛性疾患についてその自然史と生物学的態度を理解し記述できる.

H. リンパ節
 1. 組織学的に以下の疾患を認識し記述できる.
  a. 転移性癌
  b. 良性の上皮成分(子宮内膜症、卵管内膜症)

 2. リンパ節穿刺細胞診による悪性上皮細胞を認識できる.

I. 大網
 大網の転移病巣について、肉眼および病理組織学的、一部では細胞診断学的所見を把握し、病理組織診断並びに細胞診診断の報告書の内容を適確に理解してその疾患の診断、治療に応用できる。

J. 腹水、腹腔洗浄細胞診
 腹水あるいは腹腔洗浄液の細胞診断学的所見、結果を理解できる。細胞診断の結果にもとづいて、その疾患の診断、治療に応用できる。


Ⅲ.癌患者の病態生理とその管理

2006年11月23日 | 婦人科腫瘍

一般目標
 婦人科癌患者を管理する上で必要な生理学と病態生理学について十分な知識を有し、活用できる。

行動目標
 以下の基礎的事項及び婦人科癌患者に起こり得る異常についてその病態を理解し、治療について記述できる。

A. 体液、電解質
 1. 水、電解質バランスと輸液
  a. 体液とその組成
   (1) 体液構成
   (2) 水・電解質の調節機構
  b. 水バランスの異常
   (1) 脱水
   (2) 水過剰
  c. 電解質バランスの異常とその補正
   (1) 血清ナトリウム値の異常
   (2) 血清カリウム値の異常
   (3) 血清カルシウム値の異常
   (4) 血清クロール値の異常
 2. 酸・塩基平衡
  a. 酸・塩基平衡の基礎(pH, pCO2 base excess)
  b. 酸塩基平衡異常の診断と治療
   (1) 呼吸性アシドーシス
   (2) 呼吸性アルカローシス
   (3) 代謝性アシドーシス
   (4) 代謝性アルカローシス

B. 栄養
 1. 成人女性の一日あたりのカロリー、蛋白質、炭水化物、脂肪およびビタミンの必要量
 2. 水分、電解質、カロリー、ビタミンの過不足量の同定と補正

C. 血液と血液成分
 1. 輸血
  a. 輸血の目的
  b. 輸血用血液および血液成分
   (1) 輸血用血液
   (2) 自家血輸血
   (3) 成分輸血
  c. 輸血の実際
   (1) 輸血の適応、方法
   (2) 輸血時の検査
  d. 輸血の副作用・合併症
   (1) 溶血性反応
   (2) 非溶血性非感染性副作用
   (3) 輸血による感染
   (4) 大量輸血による合併症
     低体温、高カリウム血症、クエン酸中毒、出血傾向
  e. 代用血漿剤

 2. 血液凝固系
  a. 出血と止血、凝固系の応答
   (1) 出血と凝固系の応答
   (2) 線維素溶解現象
   (3) 血液凝固・線溶の阻止作用
     アンチトロンビンⅢ, α2プラスミン・インヒビター
  b. 止血・凝固異常
   (1) 手術に伴って起こる血液凝固系、血小板系、線溶系の変動
   (2) DIC
   (3) 先天性出血性疾患

D. 心・循環器系
 1. 循環機能検査の意義と異常について基礎的知識をもつ.
  a. AHA、NYHAの分類
  b. 血圧とその異常
  c. 心電図とその異常
  d. 運動負荷試験
  e. 心エコー
  f. 心筋シンチグラフィー
  g. 中心静脈圧

 2. 循環管理の基礎
  a. 前負荷の管理(循環血液量の調節)
  b. 心機能の管理
  c. 後負荷の管理

 3. 循環系合併症
  a. 深部静脈血栓症の診断・治療
  b. 肺塞栓症の診断・治療(予防)
   (1) 肺換気血流シンチグラフィー
   (2) 肺動脈造影
   (3) ヘパリン、ワーファリンによる治療
   (4) 下大静脈フィルター
   (5) 理学療法:弾性包帯・ストッキング、フットポンプなど
  c. 抗癌剤の心毒性

E.呼吸機能
 1. 正常の肺機能と検査の理解
 2. 呼吸器疾患の病態と診断・治療
  a. 慢性閉塞性肺疾患
  b. 無気肺
  c. 気道閉塞・気道狭窄
  d. 拘束性換気障害
  e. 肺水腫
  f. 成人型呼吸窮迫症候群
  g. 急性肺炎・気管支肺炎
  h. 重症喘息・喘息重積状態
 3. 人工呼吸器の使用法とその適応

F. 腎機能と腎不全
 1. 正常腎機能
  a. 腎機能の生理学
  b. 腎機能検査

 2. 腎機能異常の病態と診断・治療
  a. 感染症
  b. 腎不全
  c. 薬剤の腎毒性
   (1) 抗癌剤
   (2) 抗生物質

 3. 膀胱の変化
  a. 抗癌剤による変化
  b. 放射線治療による変化
  c. 腫瘍性変化
  d. 手術に伴う変化

G.消化器系
 1. 消化管の生理学

 2. 婦人科癌の治療に伴う消化管の変化と病態の診断・治療
  a. 婦人科癌の浸潤・転移による通過障害
  b. 放射線治療による変化、腸炎、腸閉塞
  c. 抗癌剤による変化、腸炎、消化器症状
  d. 広範な切除に伴う合併症

 3. 消化管合併症の診断・治療
  a. 腸閉塞
  b. 盲管症候群
  c. 短腸症候群(short bowel syndrome)
  d. 腸瘻

 4. 肝臓
  a. 肝臓の生理学
  b. 肝疾患の診断・治療
   (1) ウイルス性肝炎
   (2) 婦人科腫瘍の転移
   (3) 肝硬変、肝不全
   (4) 薬剤性肝障害
    ① 抗癌剤
    ② 抗生物質
    ③ その他

H. 精神・神経系
 1. 癌に関連する中枢神経系異常とその治療
  a. organic brain syndrome(器質性脳症候群)
  b. 癌の進展に伴う脊索、神経根圧迫
  c. 抗癌剤または放射線による脳、脊索の障害

 2. 末梢神経障害の原因とその治療
  a. 手術
  b. 抗癌剤
  c. 放射線
  d. 癌の浸潤

 3. 癌疼痛の原因と管理
  a. 癌疼痛の原因
  b. 治療
   (1) NSAID
   (2) 麻薬
   (3) 麻酔

 4. サイコオンコロジー
  a. 婦人科癌患者の心理と行動的反応
  b. カウンセリングの基礎

I. ショック
 1. 癌患者におけるショックの成因と治療
  a. 失血性ショック
  b. 心原性ショック
  c. 敗血症性ショック


Ⅳ.発癌、浸潤と転移

2006年11月23日 | 婦人科腫瘍

一般目標
 発癌過程における環境因子、遺伝的素因、ウイルスの影響を理解する。浸潤、転移の基本的な概念・理論を理解する。

行動目標
A. 以下の事項について理解すると共に記述できる.
 1. 環境因子と発癌
  a. 女性ホルモンおよびSERM(selective estrogen receptor modulator)の影響
   (1) 胎児期のDES 暴露と腟癌、子宮頸癌の発生
   (2) ホルモン補充療法と子宮内膜癌
   (3) SERM(特にタモキシフェン)と子宮内膜癌

  b. 放射線被曝
   (1) 放射線治療後の照射部位に新たな悪性腫瘍(癌や肉腫)の発生する危険性
   (2) CT、DIP/IVP、胸腹部単純X 線など診断的放射線被曝による発癌の危険性

  c. 抗癌剤の影響
   (1) 抗癌剤による2次発癌の危険性
   (2) 母体に対する化学療法による胎児への危険性

  d. ヒトパピローマウイルス(HPV)感染と発癌
   (1) HPV の分子生物学(構造、発癌遺伝子、疫学)
   (2) HPV 感染による女性生殖器の変化
   (3) HPV ワクチン

  e. 環境発癌物質(タルク、アスベスト、喫煙など)と婦人科悪性腫瘍の関連

 2. 好発癌家系と原因遺伝子

 3. 癌の細胞生物学
  a. 細胞構造
  b. 代謝系
  c. 細胞周期(G1, S, G2, M, G0)

 4. 婦人科癌の進展様式

 5. 多段階発癌
  a. Initiation、promotion、progression
  b. 血管新生
  c. 浸潤・転移に関連する因子
   (1) 成長因子VEGF FGF, EGF, HGF, PDGF
   (2) インテグリン、カドヘリン/カテニン
   (3) Metalloproteinase
   (4) カテプシン


Ⅴ.婦人科腫瘍に関する遺伝子・遺伝学

2006年11月23日 | 婦人科腫瘍

一般目標
 癌遺伝子、癌抑制遺伝子、DNA 修復遺伝子、テロメレース関連遺伝子、アポトーシス関連遺伝子などの癌関連遺伝子、好発癌家系について基礎的な知識を習得する。

行動目標
A. 以下の基礎的事項について理解するとともに記述できる。
 1. 癌関連遺伝子の正常の機能と癌化における役割
  a. 癌原遺伝子(myc, ras, c-erbB-2 等)

  b. 癌抑制遺伝子(p53, RB, WT1, VHL, BRCA1/2 等)

  c. DNA 修復遺伝子(hMSH1, hMSH2, hMSH6 等)

  d. テロメアとテロメレース関連遺伝子hTERT、hTR 等)

  e. アポトーシスとアポトーシス関連遺伝子

 2. 癌原遺伝子の活性化の機序

  a. 点突然変異

  b. 挿入

  c. 欠失

  d. 増幅 

  e. 転座

 3. 癌抑制遺伝子の不活化の機序
  a. Knudson の2 ヒット説

  b. 散発性腫瘍と家族性腫瘍の臨床遺伝学的特徴
    発症年齢、両側性、多重癌

  c. p53 遺伝子の正常機能と癌化における役割

 4. 癌における染色体変化

 5. 婦人科腫瘍における遺伝子変化
  a. 子宮内膜癌
  b. 卵巣癌
  c. 子宮頸癌

 6. 婦人科癌好発家系の臨床遺伝学・カウンセリングの基礎知識
  a. 卵巣癌家系

  b. 家族性乳癌・卵巣癌症候群

  c. 遺伝性非腺腫性大腸癌


Ⅵ.臨床統計と臨床試験

2006年11月23日 | 婦人科腫瘍

一般目標
 臨床研究についてその立案や説明を行う上で必要な疫学、統計的手法を十分理解する。

行動目標
A. 以下の疫学に関する基本的事項を記述或いは説明できる。
 1. 疫学的事項
  a. 疾病頻度、疾病罹患率
  b. 疾病率の標準化

 2. 病因について
  a. 病因を判定する基準
  b. 定量的判定法(相対危険率、オッズ比)

 3. 疾病、危険因子のスクリーニング
  a. スクリーニング法を確立するための基準
  b. スクリーニングの定量的評価法
    感度、特異度、receiver-operator characteristic curve (ROC 曲線)

 4. 研究方法
  a. 実験的ランダム化比較臨床試験等
  b. 観察的前方視的コホート研究、後方視的コホート研究、ケースコントロール研究

 5. 研究において考慮すべき事項
  a. 検出力
  b. 対象の選択
  c. コントロールの選択
  d. 無作為抽出法
  e. 倫理的配慮
  f. バイアスの回避
  g. 混乱因子の回避

B. 以下の統計に関する基本的事項を理解し説明できる.
 1. 記述統計
  a. 標本統計量の計算
  b. 分散の計測

 2. 統計学的推測の信頼度

 3. 推論(仮説検証)
  a. 信頼区間
  b. ノンパラメトリック法
  c. パラメトリック法
   (1) 二群の差の検定(z 検定、t 検定)
   (2) 多群の差の検定(分散分析法等)
   (3) 比率の検定(カイ二乗検定等)
  d. 多変量解析(重回帰分析, 比例ハザードモデル、ロジスティックモデル)

C. 研究を計画するにあたり、いつどのように統計学者に相談するかを理解する。

D. データの蓄積及び分析に関してコンピュータの使用、重要性、限界を理解する。


Ⅶ.腫瘍免疫学

2006年11月23日 | 婦人科腫瘍

一般目標
 免疫システムの基本的な要素について知る。

行動目標
A. 定義
以下の事項について定義を理解する.
 1. 抗原および抗体
 2. 以下の細胞とその由来、機能
   マクロファージ、B 細胞、NK 細胞
 3. 抗体の5つのクラスとその機能
 4. T 細胞とその分類、その由来、機能
 5. 医療的に利用される可能性のあるサイトカイン
   TNF, インターロイキン類、インターフェロン類、等
 6. 補体とその由来、機能

B. 免疫反応
以下の事項について理解し説明できる.
 1. 抗原に曝露された後の抗体産生の機序
 2. 異物抗原に曝露された後の殺細胞的リンパ球の働きと機序
 3. 主なサイトカインの効果とその発現の機序(単独の役割とサイトカインネットワークの中での役割)
 4. 即時性過敏症反応と遅発性過敏症反応
 5. 液性免疫反応と細胞性免疫反応の違い
 6. 細胞性免疫反応の機序
 7. 免疫抑制、免疫賦活、免疫寛容の状態の例
 8. 低栄養状態が免疫に及ぼす影響とそれをモニターする方法

C. 腫瘍免疫
免疫系が腫瘍発生の過程で関与している証拠とされる資料について知ると共に、以下の事項を理解し、説明できる。
 1. 以下の抗原の違い
  a. 癌特異移植抗原(TSTA)
  b. 腫瘍関連抗原(TAA)
  c. ヒト白血球抗原(HLA)

 2. 腫瘍に対する免疫監視機構および拒否反応の欠落に関する理論

 3. 免疫不全、免疫抑制状態における癌の発生

 4. 化学発癌物質により発生した癌の特異抗原

 5. ウイルスにより誘発された癌の抗原性

 6. ウイルスにより癌が誘発される免疫学的証拠

 7. 婦人科癌における腫瘍関連抗原の証拠

 8. 婦人科癌における腫瘍マーカーの有用性
   CEA, AFP, hCG, CA125, CA19-9, SCC 等

D. 免疫療法
以下の事項について理解し説明できる
 1. 3 つの免疫療法(特異的能動的免疫療法、非特異的能動的免疫療法、受動的免疫療法)

 2. サイトカインの医療応用

 3. 単クローン性抗体の製造の機序と癌の診断、治療への応用


Ⅷ.化学療法

2006年11月23日 | 婦人科腫瘍

一般目標
 臨床的に使用される抗癌剤の薬理を十分に理解する。効果と安全性を考慮し、ガイドラインに従って適切に治療を行うことができる。

行動目標
A. 以下の事項について理解すると共に説明できる.
 1. 腫瘍生物学
  a. 癌細胞増殖の機構、細胞周期
  b. 薬物効果の原理
   (1) 対数的殺細胞理論
   (2) 細胞周期特異性
   (3) Dose intensity
   (4) 薬物耐性

 2. 抗癌剤の分類
  a. アルキル化剤
  b. 代謝拮抗剤
  c. 植物アルカロイド
  d. ホルモン
  e. その他抗体、酵素等

 3. 薬剤の特徴的な作用機序
  a. 特異的作用機序
  b. 細胞周期と作用の関係

 4. 薬剤の薬理と以下の事項
  a. 投与方法と吸収
    経口、静脈注射、動脈内注入、筋肉注射、髄腔内投与、腹腔内投与
  b. 薬剤の分布
  c. 体内での代謝と活性の変化
  d. 排泄
  e. 他の薬剤との相互作用
  f. 放射線治療や温熱療法との相互作用
  g. 薬剤耐性の機序と耐性を予防する方法

 5. 薬剤併用療法
  a. 薬剤併用療法の原則
  b. 単剤の薬理と併用療法を立案する際の原則および理論的な併用療法案の作成
  c. 骨髄移植、末梢血幹細胞移植を伴う高用量化学療法や腹腔内化学療法等の特殊な化学療法の原則

 6. 臨床的評価法の一般的ガイドライン
  a. 固形がんの効果判定基準(RECIST)ガイドライン
   (1) 標的病変の評価
     完全奏効(complete response)、部分奏効(partial response)、安定(stable disease)、進行(progressive disease)
   (2) 非標的病変の評価
     完全奏効(complete response)、不完全奏効(incomplete response/stable disease)、進行(progressive disease)
  b. 化学療法による毒性の評価
    National Cancer Institute-Common Toxicity Criteria(共通毒性規準)による毒性評価

C. 臨床試験の第Ⅰ相、Ⅱ相、Ⅲ相の概念

B. 婦人科腫瘍に対する化学療法
上記の一般的事項を理解した上で、適応のある症例に対して化学療法を選択し、これを安全に施行できる。
 1. 婦人科悪性腫瘍に対して、その原発巣、組織像、進行期により確立された化学療法について、その治療効果・治療成績を熟知し、実際に使用できる。
  a. 単剤
  b. 併用化学療法

 2. 薬剤の用量、投与時期、投与周期およびdose intensity の理論的根拠を理解し、安全性を十分考慮した化学療法を行うことができる。

 3. 化学療法における毒性、合併症を理解し、対応できる。
  a. 細胞増殖の活発な細胞に対する一般的効果
     骨髄、消化管上皮、毛嚢
  b. 各薬剤および併用療法に特異的な有害事象
  c. 副作用の管理
   (1) 支持療法
     栄養的、鉄分補給、予防的抗生剤投与、コロニー刺激因子製剤投与
   (2) 特異的治療法
     成分輸血、特異的拮抗剤投与
  d. 抗癌剤の血管外濾出の管理

 4. 各疾患において手術或いは放射線治療との併用の有用性について理解すると共に治療に応用できる。


Ⅸ.治療薬剤の薬理学

2006年11月23日 | 婦人科腫瘍

一般目標
 よく使用される薬剤について、以下の薬理学的特徴を理解し、適切に使用できる. 薬剤の吸収、分布、代謝と変化、排泄、薬物効果の時間的変化を理解する。

行動目標
A. 栄養
以下の薬理学を理解する
 1. 中心静脈栄養(TPN)
  a. 適応
  b. 投与ルート
  c. 投与される点滴の成分
  d. ビタミンおよびミネラル類補充
  e. 以下の状態における中心静脈栄養の合併症と穿刺部の合併症
   (1) 腎機能障害
   (2) 肝機能障害
 2. 経管栄養
  a. 適応
  b. 投与物の成分
  c. 合併症

B. 創傷治癒の薬理学
以下の因子の創傷治癒に対する役割や影響についての知識がある
 1. ビタミン類
 2. 微量元素
 3. 増殖因子
 4. 化学療法
 5. 放射線治療

C. 造血剤
腫瘍に関連した貧血、或いは治療に関連した貧血について、造血剤の使用、効果、および副作用について理解する。

D. 抗菌剤
以下の知識を有する.
 1. 予防的抗生物質療法の原則
 2. 主な抗生物質の作用機序
 3. 主な抗生物質の副作用
 4. 適切な薬剤や併用療法の選択

E. 鎮痛剤と催眠鎮静剤
以下の一般的知識を有する.
 1. 肝疾患、腎疾患を有する患者に対する適切な薬剤の選択
 2. 過量投与の識別と対応
 3. 高度の疼痛の鎮痛
 4. 慢性的な疼痛の鎮痛(WHO 方式)
 5. 鎮痛における補助的方法
 6. 鎮痛剤の経静脈投与から経口投与への変換

F. 麻酔薬
以下の一般的知識を有する.
 1. 吸入麻酔薬
   代謝、腎障害、肝障害、副作用、心循環器系に対する作用
 2. 局所麻酔薬
      麻酔法、副作用、麻酔薬の代謝、腎障害、肝障害、過敏反応、心循環器系および神経系に対する効果

G. 抗凝固剤
以下の知識を有する.
 1. 短時間作用薬(ヘパリン)と長時間作用薬(ワーファリン)の作用機序
 2. ヘパリン治療とワーファリン治療の適応と合併症
 3. 予防的低用量ヘパリン療法の適応と合併症

H. 心循環器系薬剤
以下の薬剤の適応と使用法についての知識を有する.
 1. 心機能低下、不整脈時の心作動薬
 2. 心不全および高血圧時の利尿剤
 3. 敗血症や高血圧時の血管作動薬
 4. 心循環器系疾患に対するカルシウムチャンネル拮抗剤

I. その他
以下について、その適応と使用法についての一般的知識を有する.
 1. ヒスタミン受容体拮抗薬
 2. 抗うつ薬
 3. 抗痙攣薬
 4. インシュリンおよび経口糖尿病薬
 5. 制吐剤
 6. ステロイド
 7. 胃腸管系作用薬


Ⅹ.放射線治療

2006年11月23日 | 婦人科腫瘍

一般目標
 放射線治療の原理や実際の方法に精通する。また、その知識は放射線治療医と共同で外部照射や密封小線源治療計画の立案や治療の実践ができる程深くなくてはならない。

行動目標
A. 放射線治療の基本的要素
以下の事項を理解する.
 1. 放射線と物質との相互作用
  (Compton 散乱、電子対創生, 光電吸収)
 2. 生体組織の放射線感受性と抵抗性
 3. 放射線の照射時間、照射線量、分割法の関係(TDF: time, dose, fractionation)
 4. 容積線量
 5. 外部照射の原理と機器
 6. 密封小線源治療の原理と機器
  a. 腔内照射
  b. 組織内照射
  c. 腹腔内組織照射
 7. 放射性同位元素
   半減期、放射線の種類とそのエネルギー、および使用法
 8. 粒子線
   電子線、中性子線、陽子線、重粒子線

B. 放射線生物学
以下の事項を理解している.
 1. 放射線の直接的効果および間接的効果
 2. 細胞生存曲線および致死的障害の概念
 3. 種々の放射線における生物学的効果比(RBE: relative biological effect)および線エネルギー付与(LET: linear energy transfer )
 4. 細胞の放射線感受性の変化
  a. 酸素増感効果
  b. 細胞周期の変化
  c. 放射線増感剤
 5. 放射線被爆後の回復と組織の修復
 6. 放射線効果からの防御
 7. 臓器別の相対的放射線感受性(正常組織の許容線量)
 8. 名目標準線量(NSD: nominal standard dose )の定義と使用

C. 放射線測定と線量計測法
以下の概念と使用法について理解している.
 1. 線源―皮膚間距離(SSD: source skin distance)
 2. 線源―軸間距離(SAD: source axis distance)
 3. 後方散乱、吸収、減衰
 4. 以下の機器用の定線量曲線の計算
  a. 外部照射機器(orthovoltagae and high energy)
  b. 腔内照射器具
  c. 組織内照射
 5. 種々の線源からの深部線量の計測
 6. 各種放射線の深部線量百分率曲線
 7. X 線照射の半陰影(penumbra)
 8. 照射野のサイズ(多照射野、スプリット照射野)
 9. 楔状フィルター使用による照射
 10. 治療計画のシミュレーション
 11. 子宮頸癌治療におけるA 点、B 点およびミリグラム時間(mgH)

D. 放射線治療の合併症(早発性および遅発性)
各臓器における合併症とその予防および治療について理解し、実践できる。
 1. 消化管
 2. 泌尿器系
 3. 皮膚
 4. 骨
 5. 骨髄
 6. 腎臓
 7. 肝臓
 8. 中枢神経系
 9. 放射線壊死
 10. 放射線発癌


XI.各疾患における評価と治療法

2006年11月23日 | 婦人科腫瘍

一般目標
 一般医学および婦人科腫瘍学に関する十分な知識と情報を有し、これに基づいて、腫瘍患者の治療前評価、治療、および管理を適切に行うことができる.。必要に応じて、他領域の専門医と適切に相談し、その協力を得ることができる。

行動目標
 すべての婦人科腫瘍の治療前評価、治療、および管理について、必要な方法論を述べることができる。

A. 治療前評価
 1. 末梢血液検査
 2. 凝固系検査
 3. 肝機能検査
 4. 腎機能検査
 5. 肺機能検査
 6. 心機能検査

B. 治療前準備
以下の治療前準備を適切に行うことができる。
 1. 呼吸機能および循環機能の適正化
 2. 体液、電解質、栄養状態の適正化
 3. 感染症に対する適切な抗生剤投与
 4. 深部静脈血栓症、肺塞栓症に対する適切な薬剤投与および下大静脈フィルター設置

C. 患者および家族に診断と治療法を説明し、十分な理解を得た上で同意を得ることができる。
 1. エビデンスに基づいた標準的治療を説明できる。
 2. 臨床試験、とくにランダム化比較試験の説明ができる。

D. 各疾患における治療前評価、治療、および管理
婦人科悪性腫瘍の各疾患について、その治療前評価、治療、および管理方法について説明できる。

 1. 外陰
 以下の疾患について、その治療前評価、治療、および管理方法を説明できる.
また各項に掲げた問題点について、エビデンスに基づいて討論することができる。
 a. 外陰上皮内腫瘍

 b. 初期浸潤扁平上皮癌

 c. 浸潤扁平上皮癌
  (1) 外陰切除の方法と範囲、および再建術に関して
  (2) 鼠径リンパ節郭清の方法と範囲に関して

 d. 浸潤腺癌(Bartholin 腺由来腺癌等)

 e. 悪性黒色腫

 f. Paget 病
  (1) 切除範囲の決定に関して
  (2) 下床腺癌の存在とその治療に関して

 2.
 以下の疾患について、その治療前評価、治療、および管理方法を説明できる.
また各項に掲げた問題点について、エビデンスに基づいて討論することができる。
  a. 腟上皮内腫瘍
  b. 扁平上皮癌
   (1) 占拠部位による転移形式と治療法の差異に関して
   (2) 手術療法と放射線療法の選択に関して
  c. 腺癌
  d. 他臓器癌の腟転移

 3. 子宮頸部
 以下の疾患について、その治療前評価、治療、および管理方法を説明できる。また各項に掲げた問題点について、エビデンスに基づいて討論することができる。
  a. 子宮頸部上皮内腫瘍
   (1) 種々の保存的治療方法に関して
   (2) HPVタイプによる自然史の差異に関して
   b. 頸癌Ia 期
   (1) 扁平上皮癌Ia 期の診断方法に関して
   (2) 扁平上皮癌Ia1 期の標準的手術および妊孕性温存手術に関して
   (3) 脈管侵襲を伴う扁平上皮癌Ia1 期の治療に関して
   (3) 扁平上皮癌Ia2 期の転移リスクと標準的手術に関して
   (4) 腺癌Ia 期に対する標準的手術に関して

   c. 頸癌Ib~IIb 期
   (1) Ib1 期癌に対する治療法の選択に関して
   (2) Ib2~IIb 期癌に対する治療法の選択に関して
   (3) 術後追加治療法とその適応に関して
   (4) 化学療法同時併用放射線療法に関して
   (5) ネオアジュバント化学療法とその適応に関して

   d. 頸癌III~IV 期
   (1) IIIa 期癌に対する治療法の選択に関して
   (2) IIIb 期癌に対する治療法の選択に関して
   (3) IVa 期癌に対する治療法の選択に関して
   (4) IVb 期癌に対する治療法の選択に関して
   (5) chemoradiation に関して
   (6) ネオアジュバント化学療法とその適応に関して
   (7) 骨盤除臓術とその適応に関して
   (8) 寛解導入化学療法とその効果に関して

 e. 再発癌の治療
   (1) 放射線療法の適応に関して
   (2) 放射線治療後のcentral recurrence に対する手術療法に関して
   (3) 骨盤除臓術とその適応に関して
   (4) 化学療法の選択に関して

 4. 子宮体部(上皮性腫瘍)
 以下の疾患について、その治療前評価、治療、および管理方法を説明できる. また各項に掲げた問題点について、エビデンスに基づいて討論することができる。
  a. 子宮内膜増殖症
   (1) 組織分類による管理法の選択に関して
   (2) ホルモン療法とその効果に関して

  b. 体癌I 期
   (1) 妊孕性を温存した治療法の可能性に関して
   (2) 標準的な手術療法に関して
   (3) 摘出標本による再発リスク評価と術後追加治療に関して

  c. 体癌II~IV 期
   (1) 手術術式の選択に関して
   (2) 摘出標本による再発リスク評価と術後追加治療に関して
   (3) 遠隔転移例に対する集学的治療に関して

  d. 再発癌の治療
   (1) 手術療法の選択に関して
   (2) 放射線療法の適応に関して
   (3) 化学療法の効果に関して

 5. 子宮体部(間質性腫瘍)
 以下の疾患について、その治療前評価、治療、および管理方法を説明できる。 また各項に掲げた問題点について、エビデンスに基づいて討論することができる。
  a. 癌肉腫
   (1) 標準的な手術療法に関して
   (2) 放射線療法の効果に関して
   (3) 化学療法の効果に関して

  b. 平滑筋肉腫
   (1) 術前診断法に関して
   (2) 術後治療法とその効果に関して

  c. 内膜間質肉腫
   (1) 低悪性度内膜間質肉腫の腫瘍進展形式とその治療に関して
   (2) 低悪性度間質肉腫に対するホルモン療法に関して
   (3) 高悪性度内膜間質肉腫に対する化学療法に関して

 6. 卵管および腹膜
 以下の疾患について、その治療前評価、治療、および管理方法を説明できる。 また各項に掲げた問題点について、エビデンスに基づいて討論することができる。
  a. 卵管癌
   (1) 術前診断法に関して
   (2) 標準的な手術療法に関して
   (3) 化学療法の効果に関して

  b. 腹膜原発腺癌
   (1) 術前診断法に関して
   (2) 標準的な手術療法に関して
   (3) 化学療法の効果に関して

 7. 卵巣
 以下の疾患について、その治療前評価、治療、および管理方法を説明できる。 また各項に掲げた問題点について、エビデンスに基づいて討論することができる。
  a. 上皮性境界悪性卵巣腫瘍
   (1) 標準的な手術療法に関して
   (2) 妊孕性温存手術に関して
   (3) 腹腔内に進展した境界悪性腫瘍の治療に関して
   (4) 腹膜偽粘液腫の管理に関して

  b. 上皮性卵巣癌I 期
   (1) 標準的な手術療法に関して
   (2) 妊孕性温存手術の適応に関して
   (3) 術後化学療法の適応に関して

  c. 卵巣癌II~IV 期
   (1) cytoreductive surgery とその意義に関して
   (2) interval debulking surgery とその意義に関して
   (3) second-look operation とその意義に関して
   (4) 化学療法レジメンの選択に関して
   (5) second-line 化学療法の選択に関して

   d. 再発卵巣癌
   (1) 化学療法の選択方法に関して
   (2) 手術療法および放射線療法の適応に関して

   e. 胚細胞性腫瘍
   (1) 各腫瘍の術前鑑別診断に関して
   (2) 手術における妊孕性温存の考慮に関して
   (3) 術後化学療法およびその適応に関して
   (4) 未分化胚細胞腫における腫瘍進展形式に関して
   (5) 未熟奇形腫の組織学的grade 評価に関して

   f. 性索間質性腫瘍
   (1) 顆粒膜細胞腫の管理法に関して
   (2) セルトリ・間質細胞腫の管理法に関して

   g. 転移性卵巣癌
   (1) 術前診断法に関して
   (2) 原発部位による卵巣腫瘍形態の差異に関して
   (3) 合理的な手術療法に関して

 8. 絨毛性疾患
 以下の疾患について、その治療前評価、治療、および管理方法を説明できる。 また各項に掲げた問題点について、エビデンスに基づいて討論することができる。

 a. 胞状奇胎
  (1) hCG 値の推移による奇胎娩出後の管理に関して
  (2) 侵入奇胎の臨床的診断に関して
  (3) 侵入奇胎に対する化学療法に関して

 b. 絨毛癌
  (1) 絨毛癌の臨床的診断に関して
  (2) 臨床的絨毛癌に対する化学療法に関して
  (3) 肺転移、脳転移、肝転移に対する集学的治療に関して
  (4) 再発絨毛癌、難治性絨毛癌に対する化学療法に関して

 9. 妊娠に合併した各種の悪性腫瘍
 以下の疾患について、その治療前評価、治療、および管理方法を説明できる。 また各項に掲げた問題点について、エビデンスに基づいて討論することができる。
  a. 婦人科腫瘍
   (1) 子宮頸部上皮内腫瘍の管理に関して
   (2) 子宮頸部浸潤癌の治療に関して
   (3) 卵巣腫瘍の鑑別診断と手術適応に関して

  b. 乳癌

  c. 消化器癌

  d. その他の臓器の悪性腫瘍


XII.手術

2006年11月23日 | 婦人科腫瘍

一般目標
 婦人科悪性腫瘍の各疾患に対する診断的および治療的手術療法を適切に行うことができる。

行動目標
以下の項目に関する知識を有し、各術式の経験を積む。

A. 解剖学および生理学
以下の項目に関する解剖学的・生理学的知識を有し、適切に説明することができる。
 1. 腹腔内および骨盤内臓器の動脈および静脈路
 2. 腹腔内および骨盤内臓器のリンパ系路
 3. 骨盤内および骨盤内臓器の神経路
 4. 骨盤内の諸靭帯と空隙
 5. 骨盤底支持装置
 6. 外陰の動脈および静脈路
 7. 外陰のリンパ系路
 8. 外陰の神経路

B. 術前準備
以下の術前準備を適切に行うことができる。
 1. 呼吸機能および循環機能の適正化
 2. 体液、電解質、栄養状態の適正化
 3. 適切な自己血の貯血
 4. 感染症に対する適切な抗生剤投与
 5. 深部静脈血栓症、肺塞栓症に対する適切な薬剤投与および下大静脈フィルター設置
 6. 消化管手術が予測される場合の術前処置
 7. 尿路手術が予測される場合の尿管カテーテル挿入

C. 患者および家族に手術術式を説明し、十分な理解を得た上で同意を得る。
 1. 手術の術式とその合理性を説明できる。
 2. 輸血の可能性とリスクを説明できる。
 3. 術中および術後の合併症とそのリスクを説明できる。

D. 婦人科手術
以下の手術の適応を理解し、手術を安全・確実に遂行し、術後管理ができる.
 1. 腹式手術
  a. 付属器摘出術
  b. 腟上部切断術
  c. 単純子宮全摘出術
  d. 準広汎子宮全摘出術
  e. 広汎子宮全摘出術
  f. リンパ節郭清(経腹的、経腹膜外的)
   (1) 骨盤内
   (2) 腹部大動脈周囲
  g. 大網切除術
  h. 悪性付属器腫瘍に対するcytoreductive surgery
  i. 骨盤除臓術
   (1) 前方
   (2) 後方
   (3) 全
 2. 腟式
  a. 円錐切除術
   (1) cold knife 法
   (2) leep surgery またはレーザー手術
  b. 単純子宮全摘出術
  c. 腟切除術
   (1) 部分切除
   (2) 全切除
 3. 外陰摘出術
  a. 外陰部分切除術
     b. 単純外陰摘出術
  c. 広汎外陰摘出術
  d. 鼠径リンパ節郭清術

E. 消化管手術
以下の手術の適応を理解し、外科医の協力の下で、手術を安全・確実に遂行し、術後管理ができる。
 1. 胃瘻造設術
 2. 小腸切除および吻合術
 3. 小腸瘻造設術
 4. 虫垂切除術
 5. 結腸切除および吻合術
 6. 人工肛門造設術
 7. 直腸切除およびHartman pouch 造設術
 8. 直腸低位前方切除術
 9. その他脾摘術、肝部分切除術、腸管バイパス手術、腸瘻修復術等

F. 泌尿器手術
以下の手術の適応を理解し、泌尿器科医の協力の下で、手術を安全・確実に遂行し、術後管理ができる。
 1. 膀胱部分切除術
 2. 膀胱全摘出術
 3. 膀胱腟瘻閉鎖術
 4. 膀胱尿管新吻合術
 5. 膀胱皮膚瘻造設術(永久的、一時的)
 6. 尿管吻合術
 6. 尿管皮膚瘻造設術
 7. 回腸・大腸導管造設術
 8. 尿道切除術

G. 再建術
婦人科腫瘍の手術に伴う正常組織の欠損を修復する再建手術法の適応を理解し、必要に応じて施行を考慮することができる。
 1. 外陰等の皮膚再建術、造腟術
  a. 分層皮膚移植法(split-thickness skin graft)
  b. 皮弁法
  c. 筋皮弁法
 2. 骨盤底の被覆
  a. 大網の使用
  b. 筋肉弁の移動法

H. 腹腔内、後腹膜腔膿瘍の切開とドレナージ
この合併症に対して、内科的、外科的な管理ができる。

I. 術中合併症の管理
以下の合併症の診断と管理を適切に行うことができる.
 1. 大血管損傷
 2. 尿路損傷
 3. 腸管損傷
 4. 神経損傷
 5. 凝固障害
 6. 輸血後反応
 7. 肺塞栓症
 8. 心停止

J. 術後合併症
以下の合併症の診断と管理を適切に行うことができる。
 1. 術後出血
 2. 無気肺
 3. 肺塞栓症
 4. 高血圧
 5. 不整脈
 6. 心筋梗塞
 7. うっ血性心不全
 8. 腎不全
 9. 電解質異常
 10. 急性胃炎・胃潰瘍
 10. 腸閉塞
 11. 精神異常
 15. 創傷合併症(感染、創離開)
 16. 感染症
 17. リンパ嚢胞
 18. 膀胱腟瘻
 19. 尿管腟瘻
 20. 直腸腟瘻


XIII.その他

2006年11月23日 | 婦人科腫瘍

一般目標
 婦人科悪性腫瘍の管理に関連する分野における知識と技術を有する。

行動目標

A. 以下の事項についての知識を有し、実践できる。
 1. 胸腔、腹腔ドレーンの留置
 2. 一時的あるいは永続的中心静脈ルートの確保
 3. 気管内挿管

B. 以下の事項を熟知し、説明できる.
 1. 医学に関する法律
 2. インフォームドコンセント
 3. 臨床試験
 4. 施設内倫理委員会、IRB 承認の手続きと過程
 5. 施設内癌登録

C. 以下の事項についてその原理を理解し、管理に応用できる.
 1. 医師の医療行為における患者、家族との関係に関する医学的倫理

 2. 緩和医療(家庭、施設に於ける)
  a. 内科的対応
    疼痛、腸管閉塞等に対する
  b. 外科的対応
    疼痛、腸管閉塞等に対する
  c. 放射線治療的対応
    神経痛、骨痛、骨折の予防

 3. ホスピス管理

 4. 死、およびその過程での対応

 5. 代替療法について