ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

脳性麻痺に対する無過失補償は2000万~3000万円、保険料分に一時金3万増額

2006年11月30日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

来年度にも創設されるという「無過失補償制度」では保険料を誰が負担するのか?ということが問題になってきましたが、結局、健康保険組合から妊産婦に支払われる出産育児一時金を3万円増額して38万円とし、分娩料を増額しやすくした上で、医療機関が保険料を支払うという方式になるようです。

出産育児一時金は全額受け取っても、病院への分娩費用の支払いは滞る人が中にはいらっしゃいますので、できれば、(医療機関ではなく)健康保険組合が保険料を運営機構に直接支払う方式にしていただきたいです。

****** 共同通信、2006年11月29日

無過失補償は2000万-3000万円 保険料分に一時金3万増額 分娩事故で自民検討会

 分娩(ぶんべん)事故で脳性まひの赤ちゃんが生まれた場合、医師に過失がなくても補償金を支払う「無過失補償制度」について、自民党の「医療紛争処理のあり方検討会」(大村秀章(おおむら・ひであき)座長)は29日午前会合を開き、運営組織を設置した上で民間の損害保険会社を利用する制度案をまとめた。補償金は未定だが「1件当たり2000万-3000万円になるだろう」(大村座長)との見通し。

 運営組織は、事故が給付対象かどうか審査したり、事故原因の究明などを担当する。現在医療事故の分析をしている「日本医療機能評価機構」内に新設される見込み。厚生労働省は今後、保険会社などと具体的な詰めを急ぎ、2007年度中の開始を目指す。

 医療機関の保険料負担に伴い分娩費の上昇が予想されるため、健康保険から妊産婦に支給される出産育児一時金(こども1人当たり35万円)を3万円程度増額。国は「医療事故は民間の話で、公的資金の投入はなじまない」(厚労省幹部)との立場から直接的な財政支出を控えるが、健康保険組合への補助金などを通じ、間接的に支援する考え。

 分娩事故の訴訟は年々増加。訴訟リスクが産科医不足につながっているとして、日本医師会などが制度の早期導入を求めていた。

(共同通信、2006年11月29日)

****** 読売新聞、2006年11月29日

出産時事故の脳性まひ、補償数千万…来年度にも開始

 政府・自民党は28日、通常の妊娠・出産で障害児となった場合、医師の過失がなくても被害者に速やかに補償する「無過失補償制度」の原案を固めた。

 医療機関などから集めた保険料を基に、脳性まひとなったケースを対象に1件数千万円の補償を行う。来年度にも運用を開始する。

 補償制度は、医師の過失の認定が難しく、長期の医療裁判になりやすい出産時の事故について、早期の解決と被害者救済を実現するのが目的だ。補償により訴訟件数が減れば、産科医不足対策にもつながると期待されている。

 補償額は、脳性まひの発生率を基に決定する見通しで、2000万~4000万円程度を想定している。沖縄県内の調査では1000人中2人前後の発生率だった。今後、厚生労働省の全国的な発生率の調査などを踏まえ、補償額を決める。

 脳性まひは、先天性のものと、出産時に脳が一時的に酸欠になった場合があるとされ、原因の特定が困難で、訴訟に発展しやすい。

 新制度では、国と日本医師会が創設する「運営組織」が、医療機関などから保険料を集め、一括して民間保険会社と契約するほか、補償の判断や原因の分析を行う。政府は、医療機関の出産費値上げを回避するため、出産育児一時金(35万円)を値上げし、運営組織に直接払うことも検討する。

(読売新聞、2006年11月29日)

****** 参考

無過失補償制度案の概要(共同通信)

「無過失補償」へ機構新設 1件数千万、国が財政支援 (共同通信)

出産時事故:患者に「無過失補償」導入へ 民間保険を活用 (毎日新聞)