第96回全国高校サッカー選手権大会の決勝戦・流通経済大学附属柏(千葉)VS前橋育英(群馬)は、成人の日の8日、埼玉スタジアム2002で行われました。夏冬2冠に王手を懸けた流経大柏は、準決勝まで未だに失点ゼロ。決勝でも無失点に抑え、市立船橋以来の無失点優勝となるか?対する前橋育英は2年連続決勝進出。今大会7得点を挙げている飯島陸選手を中心に、4試合15得点。攻めの前橋育英VS堅守の流経大柏の一戦は、試合終了までハラハラドキドキの試合展開となりました。
両チームのスタメン
[流通経済大柏高]
GK 1 薄井覇斗(3年)
DF 2 近藤立都(3年)
DF 5 関川郁万(2年)
DF 6 瀬戸山俊(3年)
DF 12 佐藤蓮(3年)
DF 20 三本木達哉(3年)
MF 4 宮本優太(3年)
MF 10 菊地泰智(3年)
MF 24 宮本泰晟 (3年)
FW 11 安城和哉(3年)
FW 14 熊澤和希(2年)
[前橋育英高]
GK 12 湯沢拓也(3年)
DF 2 後藤田亘輝(3年)
DF 3 角田涼太朗(3年)
DF 5 松田陸(3年)
DF 15 渡邊泰基(3年)
MF 7 塩澤隼人(3年)
MF 8 五十嵐理人(3年)
MF 9 田部井悠(3年)
MF 14 田部井涼(3年)
FW 10 飯島陸(3年)
FW 22 榎本樹(2年)
まず前半5分、前橋育英は縦パスから飯島がシュートを打つが、流経大DF瀬戸山がブロック。流経大柏は11分、左サイドで菊地が相手をかわしてクロス→ニアサイドの安城の頭上を越えると、ファーサイドを駆け上がった宮本が足を伸ばすも合わせられず。19分、流経大柏はゴールほぼ正面の位置からのFKでトリックプレーを見せ、右サイド・宮本がクロス→菊地のヘディングは失敗。セカンドボールも拾ったが、育英DFがクリア。22分には三本木が右足ミドルシュートを放つもクロスバーの上。
前橋育英は26分、ヘディングでボールをつなぐと、ペナルティエリア内でボールを拾った飯島がPA左の位置からシュート。しかし、流経大・三本木が対応する。27分、右CKを渡邊がボールを落とすと、PA外にいた飯島が左足を振り抜いたが、強烈なシュートはクロスバーを越えた。前半アディショナルタイム、流経大柏のカウンターを前橋DF角田が阻止すると、前線に流れたボールに反応した飯島がDFラインの裏に抜け出してシュート。ゴールに吸い込まれるかと思ったら、ポスト左に弾かれて先制ならず。結局前半は0-0で終了。
後半も一進一退の攻防。流経大柏は後半5分に熊沢に代えて、準決勝でスーパーゴールを決めたMF加藤蓮を投入すると、後半11分にはMF石川貴登もピッチに入る。後半15分、左サイド・近藤のクロス→ニアサイドで宮本がヘディングシュート。しかし、前橋GK湯沢がジャンピングセーブ。
前橋育英も後半18分、五十嵐が左サイドにパスを出すと、渡邊がドリブルで相手DFをかわすもシュート打てず。19分には五十嵐が田部井涼とのワンツーから左足シュートを放ったが、クロスバーに当たってゴールならず。後半20分には左サイドからチャンスを作り、榎本縦パス→田部井のグラウンダー折り返し→代わったばかりのFW宮崎鴻のシュートはDFに阻まれる。21分には左サイドのクロスに宮崎が頭で合わせたが、GKにキャッチされる。
後半23分、流経大柏はGKのロングキックから、石川がシュートを狙ったが、前橋GK湯沢が防ぐ。こぼれ球を池田が詰め寄るが、キーパー抑える。後半29分には左サイドのクロスに途中出場のFW池田啓利がダイビングヘッドを試みるが、前橋DF渡邊もダイビングヘッドでクリア。
後半34分、前橋育英は敵陣で塩澤の右足シュートが相手DFに当たり、ゴール方向に飛んだボールを流経大GK薄井が間一髪パンチでクリア。続く右からのCKをDF松田がヘディングで合わせたが、ゴール前で相手DFに阻まれる。こぼれ球を塩澤がファーサイドからボレーシュートを狙うもDFに当たり、さらには角田の左足シュートも決められない!流経大柏DF陣が体を張った守りで、ゴールを割らせません!
このまま両チーム無得点のまま90分が終わるかと思われた後半アディショナルタイム、ついに試合が動きます。左サイドで田部井涼→榎本の落とし→前線でボールを受けた飯島がPA右でGKをかわしてシュートを放つもDF直撃。しかし、こぼれ球を拾った榎本の右足シュートがゴール右隅に突き刺さった!前橋育英がついに流経大柏のゴールをこじ開け、試合の均衡を破る!追い込まれた流経大柏は、前線にボールを放り込むも味方に繋がらず試合終了。前橋育英が流経大柏を破り、選手権初優勝!
全国4093校の頂点を決める戦いは、前橋育英の分厚い攻撃を流経大柏が耐え凌ぐ展開が続きました。特に後半35分のCKのシーンでは、普通ならゴールマウスに入っていたであろうシュートが3本もありましたが、その度に流経大DF陣が防いだので、思わず「なぜだー!」って叫んじゃいましたよ。それでも、終了間際に榎本選手がゴールを決め、前橋育英が1-0で流経大柏を下しました。緊迫からの劇的な幕切れ、決勝戦にふさわしい熱い戦いでした。最後まで戦い切った両チームの選手に拍手を送りたいです。高校サッカーって本当にいいもんですね~。
前橋育英は21回目の出場で悲願の初優勝。関東勢の優勝は90回大会の市立船橋以来です。3年前は星稜に敗れ、前回は青森山田に0-5の大敗。3度目の決勝で、それまでの屈辱を晴らしました。大会得点王の飯島選手は、流経大柏の三本松選手のマークに苦しむ場面もありましたが、惜しいシュートが何本もありました。卒業後はプロではなく、大学進学を予定とのこと。2年後の東京五輪の日本代表に選ばれるといいですね。優勝を決定づける値千金のゴールを挙げた榎本選手は、準決勝戦のあと「決勝ではゴールを決めたい」と話していましたが、見事に宣言通りとなりました。まだ2年生ですから、来年も全国の舞台で活躍が期待されることでしょう。
インターハイとの2冠を逃した流経大柏は、後半44分まで前橋育英を0点に抑えていたけど、アディショナルタイムに今大会初失点…。敗れはしましたが、DF陣の集中力の高さには感心しました。
第96回全国高校サッカー選手権大会は、前橋育英高校の初優勝で閉幕。今大会は富山第一、星稜、東福岡、青森山田と歴代の優勝校が早々と敗退した一方、明秀日立や日本文理といった新鋭校、ベスト4入りした上田西高校の躍進ぶりが光りました。来年の大会も、高校生たちの輝く姿と熱い戦いを期待したいと思います。