2011年12月28日付で「学校選択制の効果はどの程度なのか?」と題して投稿しました。そこで、学校選択制の問題などについて記しました。
今日(4月1日)付の朝日新聞朝刊39面14版に「学校選択制 廃止へ 杉並区、23区で初めて」という記事が掲載されています。それによると、杉並区教育委員会が、学校選択制を2016年度に廃止する方針を固めたとのことです。
東京の特別区では、杉並区、品川区をはじめ、16区で学校選択制が導入されています。杉並区は、最初に廃止を決めたことになります。
廃止の理由ですが、やはり、一部の学校に人気が集中するという問題があります。しかも、必ずしも教育と関係のない部分で学校が選ばれるという傾向もあるようです。これでは選択制の意味がないでしょう。
杉並区では、いつのことか記事に書かれていませんが、PTA役員、学校長を対象にアンケートを行いました。その結果、3分の2が学校選択制の廃止または見直しが必要と回答したようです。
このブログでも何度か記しておりますように、学校選択制は公立学校に競争原理を入れ、活性化を目指すという制度です。従って、競争原理がある限り、希望校や人気校が一部に偏るのは当然のことです。そうでなければ競争になりません。
しかし、競争が成立するためには一定の条件が必要です。第一に、教育の方針や内容に関する情報が正確に、児童、生徒、保護者などに示されることです。適切な情報提供、情報公開がなければ、最初から競争は歪められてしまいます。朝刊の記事にも「事実に基づかないうわさで希望者が激減したりする」ことがあるという趣旨が書かれていました。
第二に、地理的条件、人口条件があります。これまでは記していなかったのですが、よく考えてみれば、学校選択制が成立しうるのは、或る程度の地理的条件と人口条件を満たさなければならないことがわかります。もっとも、厳密にどの程度の要件を満たす必要があるかということはわかりませんが、たとえば人口が1000人程度の村では無理であることは自明です。また、面積が広大に過ぎれば無理です。つまり、都市でなければ、導入するなどということはできない相談なのです。小学校および中学校は原則として市町村立であることを念頭に置いていただければ、どの程度の規模であれば学校選択制が可能か、考えることは可能です。
また、政令指定都市の場合、人口だけで言えば選択制を導入することは可能なのですが、地理的条件という別の問題があります。大阪市では地理的条件を無視しているようですが、公立学校と私立学校とでは話が違ってきます。横浜市を例に取ると、たとえば、金沢区の小学生が青葉区の小学校へ通うというのは、通学時間からしても無理でしょう。