朝日新聞社のサイトに、2025年2月6日の19時26分付で「『万博、非常にコスパ悪い』 開幕直前に落合陽一氏が指摘」という記事(https://digital.asahi.com/articles/AST263DWBT26PLFA00KM.html)が掲載されました。Web限定版らしく、少なくとも東京本社の朝刊には掲載されていないようなのですが、開幕まであと2か月ほどとなった、東京では盛り上がっておらず、「どこ吹く風」というしかないようにも見受けられる大阪万博について、落合氏が批判とも取れる発言をしたということなので、記事を見ておかない訳にもいかないでしょう。
落合氏は、実のところ、上記記事の表現を借りるならば(以下も基本的に同じです)「万博のテーマ事業プロデューサーの一人で『デジタルヒューマン』を体験できるパビリオンの準備を進めて」おられます。つまり、一種の当事者である訳です。氏が、関西財界セミナーの分科会、しかも万博をテーマにした分科会で「この万博は非常にコスパが悪い」、2021年に開催された「ドバイ万博の数倍お金をかけないと、同じクオリティーのものがつくれない状態になっている」、などと語られていることに、驚かれる方もおられるでしょう。
たしかに、テーマ事業プロデューサーがこのようなことを発言されるのは、或る種の内部告発でもあり、財界批判でもありますから、どうなのか、という部分はあるでしょう。しかし、まさに当事者であるからこそ語ることができますし、むしろこうした言葉こそ関西の財界に最も必要なものでしょう。
私が記事を読んで「これだ!」と思ったのは、氏が朝日新聞社の取材に対して次のように語ったという部分です。
「多段階構造じゃないと、これくらいでかいプロジェクトを受発注できない。システムが悪く、コスパも悪いが、契約上変えられない。70年万博のような潔いことをやるにはシステム上難しい」。
「(万博について)日本はこういうことをやる国ではもうなくなったんだと思う。産業が伸び、賃金が安いときにしかできない」。
「感動するレベルまでクオリティーを高めるには、受けた業者ではなくて、施工主が最後まで見なければだめです」。
詳細は上記記事をお読みください。ただ、引用させていただいた部分だけでも、日本における建設・建築の問題(病巣と言えるかもしれません)、社会システムの問題、そして何よりもタイミングの問題を、落合陽一氏は的確に指摘されていると思われます。財界の連中にどれだけ伝わるのかは不明ですが、今更、55年前の夢をもう一度、少しばかり舞台を千里から夢洲に変えて見てみようと思うほうがおかしいでしょう。1970年と2025年とでは、日本が置かれている状況に違いがありすぎます。
2005年の愛知万博も、本当のところは成功と言えるのでしょうか。
金ばかりかかって、我々国民にとって何の意味があったのかと考えてしまうことは、決して少なくありません。最近であれば、大失敗に終わった2021年東京オリンピック、やはり失敗に終わった、とまでは言えないまでも様々な問題が噴出した2024年のパリ・オリンピック、さらに、長らく長野県の財政に大きな負荷をかけ続けた1998年の長野冬季オリンピックがあげられるでしょう。
オリンピックだけではありません。日本には、リニアモーターカーの例があります。リニア新幹線の建設が、南アルプスの自然を破壊し、大井川水系などに深刻な影響を与えかねないことは、だいぶ前から指摘されていました。どこかのマスコミか何かが川勝前知事を叩いていましたが、叩くほうが馬鹿なのです。山梨県のリニア実験線の建設によって地下水が枯れたという話は、大々的に報じられなかっただけで、実は結構知られています。また、岐阜県などでも環境破壊問題が報じられています。下手に地下をいじったりしたら大事故につながることは、今月の埼玉県八潮市、2020年の調布市などで明らかでしょう。
整備新幹線も時代遅れでしょう。全国新幹線整備計画が策定されたのは、図らずも日本の高度経済成長が止まった1973年の11月13日です。そう、今から約51年前のことです。この計画は全国新幹線鉄道整備法に基づくものですが、この法律が制定されたのは1970年です。しかも、この計画に登場するのは東北新幹線、北海道新幹線、北陸新幹線、九州新幹線鹿児島ルートおよび九州新幹線長崎ルートのみです。東北新幹線と九州新幹線鹿児島ルートは全通しましたが、残りの3つは全通していません。おそらく、北陸新幹線の敦賀駅から新大阪駅までの建設は進まないままで時が過ぎていくでしょうし、九州新幹線長崎ルートは武雄温泉駅から長崎駅までの区間だけで終わってしまうことでしょう。
それなのに、四国新幹線だの東九州新幹線だのと騒いでいる地方公共団体が少ないのです。こうした地方公共団体には「時代背景を考えろ!」と言いたいところです。高速道路や新幹線にはストロー現象などがあるということくらいは知っているでしょう。「あれもこれも」というのではなく、「あれかこれか」しかないはずなのです。
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