ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

佐藤滋・古市将人『租税抵抗の財政学 信頼と合意に基づく社会へ』

2014年11月16日 00時59分40秒 | 本と雑誌

 昨日(11月15日)、青葉台へ行きました。主な目的はフィリアホールで行われた森麻季さんのコンサートですが、ブックファーストに寄ってみたところ、佐藤滋・古市将人『租税抵抗の財政学 信頼と合意に基づく社会へ』(岩波書店)を見つけ、題名に興味が湧いたので、買ってみました。〈現代経済の展望〉というシリーズの第3回という本で、先月に刊行されたばかりです。

 まだ途中までしか読んでいないのですが、「なるほど」と思える箇所がいくつかありました。たとえば、47頁で「日本の社会保障制度は、人々の連帯を生み出すどころか、それがあることによってかえって分断を進めていってしまう」と指摘されていますし、48頁では「戦後に成立した皆保険制度は、これをただ被用者以外の者にも外延的に拡大させていったにすぎず、保険料や給付率などさまざまな格差を伴ったものであった」とも述べられています。社会保障制度の本来の意味から乖離したところに、日本の制度が存在する、ということでしょうか。

 それ以上に印象づけられたのは、57頁にある「受益者負担論の基礎には、受益者と非受益者とを区分し、対立させたうえで、『公平』の観点からサービスの価格を受益者から徴収するところにある」という論述です。ここで問題となるのは「公平」の意味でしょう。1960年代の動きに関する箇所にあるので、具体的な意味などについては書かれていませんが、抽象的な概念であることからくる多義性のために、論者によって正反対の内容を持ちうるはずです。

 社会保障制度が貧困を促進する、などということがあってはならないはずです。そもそも語義矛盾であるからです。しかし、それが実際のものとなっているところに、日本の問題がある、というところでしょう。さらに読み進めていきたいと考えています。

 全く関係のないことですが、森麻季さんのコンサートで日本の歌を聴いて、単に声が、というだけでなく、日本語が美しいと感じました。とくに「からたちの花」で強く思ったことです。今、J-POPなどで、どれだけ日本語を美しく発音できる歌手がいるでしょうか。

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