私は、東急、東京メトロ、都営地下鉄をよく利用します。本務校への通勤ではJR線を使うことがなく、他の用事の場合でもJR線を利用する機会は少ないのです。
そのため、JR東日本の運賃体系に、今更ながら気づかされた点があります。それは、利用路線、利用区間によっては、SuicaやPASMOなどのICカードを利用しないほうがよいということです。
今月15日、仕事の関係で六番町へ行く必要があり、高坂駅から東上線の急行に乗り、和光市で有楽町線に乗り換えることとしていました。ところが、人身事故のために電車が停まってしまいました。
しばらく鶴ヶ島駅に停車し、川越市駅まで動いたかと思ったら、再び運転見合わせとなりました。これでは間に合わないので、川越駅まで歩き、川越線・埼京線に乗ることとしました。20分に1本しかないのは仕方がないところとして、1時間ほどかけて新宿駅に出て、そこから中央線快速電車に乗り換え、四ッ谷で降りました。PASMOを使ったため、842円でした。
ところが、六番町での仕事を終え、うちに帰って調べてみたら、ICカードを利用しなければ840円でした。たったの2円とはいえ、高くなっていたのです。東急、東京メトロ、都営地下鉄ではこんなことがないので、少しばかり驚きました。
営業路線の数、距離などを考えればやむをえないことではありますが、JR東日本(など、JRグループ)の運賃体系は複雑です。まず、利用する路線・区間が山手線内、電車特定区間、幹線、地方交通線のいずれであるかに注意しなければなりません。この4種類が存在するのです。初乗り(営業キロが1〜3キロメートル)であれば、次のようになります(カッコ内の数字はICカードを利用した場合の運賃。以下同じ)。
山手線内:140円(133円)
電車特定区間:140円(133円)
幹線:140円(144円)
地方交通線:140円(144円)
御覧のように、山手線内および電車特定区間であれば、ICカードを利用するほうが安いのですが、幹線および地方交通線ではICカードを利用しないほうが安くなります。
次に、利用区間が上記の4種類のうちの2種類以上に跨がる場合に注意しなければなりません。たとえば、川越駅から四ッ谷駅へ行く場合、川越〜大宮が川越線、大宮〜新宿が埼京線(正式には大宮〜赤羽が東北本線、赤羽〜池袋が赤羽線、池袋〜新宿が山手線)、新宿〜四ッ谷が中央本線です。これを運賃体系に当てはめると、川越線は幹線、埼京線は電車特定区間、山手線および中央本線の新宿〜四ッ谷(さらに記すならば新宿〜東京まで)は山手線内となります。このような場合には幹線の運賃体系が適用されます。
そのために、ICカードを利用するほうが、僅かながら運賃が高くなるのです(ちなみに、川越線が電車特定区間に入っていれば、川越から四ッ谷まで800円(799円)であるはずです)。
電車特定区間は、概ね、東海道本線の東京〜大船、東北本線の東京〜大宮、中央本線の東京〜高尾、総武本線の東京〜千葉、京葉線の東京〜千葉みなと、常磐線の日暮里〜取手という範囲です(これに横須賀線の全線、青梅線の全線、五日市線の全線が加わります)。そのため、たとえば東京から東海道本線に乗って藤沢で降りた場合、あるいは京葉線に乗って終点の蘇我で降りた場合、1駅だけとはいえ電車特定区間のみで収まらないので、幹線運賃が適用されることとなります(さらなる特例があるのかもしれませんが、あったとしてもここでは無視します)。
さらに、JR東日本の運賃体系をみると、山手線内および電車特定区間には、ICカードを利用しないほうが運賃が安くなる区間はありません(利用する場合と利用しない場合とで差がないという区間はあります。たとえば、電車特定区間のうち、31〜35キロメートルの場合、ICカードを利用してもしなくとも550円です)。これに対し、幹線および地方交通線の場合は、ICカードを利用するほうが安くなる区間もあり、高くなる区間もあり、同じ金額になる区間もあります。
幹線の場合、4〜6キロメートルであれば190円(185円)、7〜10キロメートルであれば200円(195円)などとなりますが、16〜20キロメートルであれば320円(324円)です。さらに距離を伸ばせば、ICカードを利用する方が安くなる区間が続くのですが、46〜50キロメートル、51〜60キロメートル、および61〜70キロメートルの区間ではICカードを利用しないほうが安くなります。
「せこい話」と思われるかもしれませんが「塵も積もれば山となる」という訳です。さらに研究していくと、面白いことが色々とわかってくるのでしょう。